既にメインストリーム・カントリーで20年近くのキャリアを誇る
トップ・アーティスト、ジョシュ・ターナーが、ポップ・カント
リー隆盛の現代において、実に有難いアルバムをリリースしてく
れました。いくつかのクラシック曲を交え、近年のトラディショ
ナル・カントリー・スタイルの名曲カバー集です。前作のゴス
ペル集「I Serve a Savior」に続くイベント・アルバムです。デビ
ュー以来、カントリーらしいスタイルを頑なに守り続けて来た彼
のこだわりに溢れた選曲~それは超有名曲と、ジョシュ個人の思
い入れを窺わせる曲のミックス~が興味深いです。
さらに、一部の曲では原曲を世に送り出した豪華レジェンドがゲ
ストで参加している事もトピックです。またジョシュの意図に共
感して参加した若手アーティストの顔ぶれにも注目してほしいで
すね。ジョシュがThe Country Dailyに思いを語っています。゛僕が
音楽に関して常に愛し続けて来た事の一つは、それが試練の時を
耐え忍ぶ方法だという事だ。このプロジェクトに含まれる、ヴァ
ーン・ゴスディン、キース・ホイットリー、ジョン・アンダーソ
ンやその他の、僕が称え続けて来たアーティスト達が全ての新た
な世代のファンに紹介される事を望んでいるよ゛
以下、ジョシュの意志を継がせてもらって、収録曲のオリジネイ
ターなどの簡単な情報を記載します。今の時代から見たトラディ
ショナルなカントリーとはどんなもの?、という問いへの適切な
サンプラーになっていると思います。
1、I’m No Stranger To The Rain
原曲:Keith Whitley(1988年)
70年代からブルーグラスで活躍し、J.D.Crowe & The New South
在籍時には来日もしました。80年代中頃からカントリーでヒット
を飛ばすも、飲酒の影響で89年に逝去。ソロとしての活動は短い
ですが、今も信奉者が多いレジェンド。昔から大好きな名曲で
す。
2、I’ve Got It Made (デュエット: ジョン・アンダーソン)
原曲:John Anderson(1983年)
80年代に一時全盛期があり90年代にも人気が復活し、レジェント
となりました。やわらかなくぐもったような声が独特な人です。
3.Why Me (デュエット:クリス・クリストファーソン )
原曲:Kris Kristofferson(1972年)
ジャニス・ジョプリンがカバーした"Me and Bobby McGee"やサ
ミ・スミスの"Help Me Make It Through the Night"で注目され、
リタ・クーリッジと夫婦だった事もあります。アウトロー・カン
トリーの時代に先立ち、カントリーが本当にお堅かった時代に、
長髪で自由な振る舞いのカントリー・アーティストとして時代を
先取りしました。ハイウェイメンのメンバー。
4.Country State Of Mind (デュエット:クリス・ジャンソン)
原曲:Hank Williams Jr.(1986年)
ハンク・ウィリアムスの息子、ジュニアの名曲。今年、カントリ
ー・ミュージックの殿堂入りを果たしました。クリス・ジャン
ソンは貴重な若手のトラディショナリストで、最近もエアプレイ・
チャートでNo1ヒットを連発。中堅どころのアーティストですが、
グランド・オール・オープリーのレギュラー・メンバー。タイト
ル曲でのデュエットは大抜擢ですね。
5.I Can Tell By The Way You Dance
原曲: Vern Gosdin(1984年)
60年代のゴスディン・ブラザーズ時代(映画「イージーライダー」
で"Someone to Turn to"が使われた)から70年代以降のソロ活動
まで30年以上活躍しました。マール・ハガードやジョージ・ジョ
ーンズと並び称されるほど、歌手からは信奉を集めています。
6.Alone And Forsaken (コーラス:アリソン・ムーアー)
原曲:Hank Williams(1955年、死後リリース)
説明不要のカントリー・ミュージック、いやアメリカン・ミュー
ジックの父。1953年の逝去後にリリースされた曲。渋めの選曲で
すね。ゲストのアリソンは1998年にMACからデビューし、このメ
ジャー・レーベルでは2枚のアルバムをリリース。その後も現在ま
でインディー系で着実にアルバムをリリースして来ました。最近
たまたま、デビュー作「Alabama Song」をよく聴いていたので、
この抜擢は嬉しいです。ハスキーな声が素晴らしいアーティスト
です。
7.Forever And Ever, Amen (スペシャル・ゲスト:ランディ・トラビス)
原曲:Randy Travis(1987年)
80年代前半のかなりポップで洗練された時代から、一気にネオ・
トラディショナル時代へとトレンドを転換させたきっかけとなっ
た名曲の一つ。ランディは体調のせいか、かつてのように歌う事
が難しいようで、最後の゛Amen゛で囁くような声を聴かせてく
れるのみです。
8.Midnight In Montgomery
原曲:Alan Jackson(1991年)
説明不要のアラン・ジャクソンです。セカンド・アルバム「Don't
Rock the Jukebox」収録。ハンク・ウィリアムスのお墓をテーマに
した曲で、こちらもどちらかというと渋めの選曲です。
9.Good Ol’ Boys
原曲:Waylon Jennings(1980年)
アウトロー・カントリーの代表的アーティスト。あの”ウィー・ア
ー・ザ・ワールド”に最初は参加していたが、途中退席したらしい
です。当時はそのくらい存在感のあった人でした。この曲はCBS局
放送のコメディ「The Dukes of Hazzard」のテーマ曲として有名。
10.You Don’t Seem To Miss Me (コーラス:ランナウェイ・ジュン)
原曲:Patty Loveless(1997年)
これは嬉しい、パティ・ラブレスのトラディショナルなミディア
ム。「Long Stretch of Lonesome」収録のリード・シングルで、ジ
ョージ・ジョーンズと豪華デュエットしていました。個人的に一
番好きなシンガーで、ミランダ・ランバートより好きです♡・・・こ
こでは男女パートを入れ替えて歌われています。ランナウェイ・ジ
ュンは2019年に"Buy My Own Drinks"がかなりヒットし、結構トラ
ディショナル志向の女性3人組です。
11.Desperately (コーラス:マディ&タエ)
原曲:George Strait(2003年)Bruce Robison(1998年)
やはり、スト様、ジョージ・ストレイトは外せませんね。
「Honkytonkville」収録。ブルース・ロビソンの曲です。そして、
我らが(?)マディ&タエが参加してます。彼女達がトラディシ
ョナリストだという認識はなかったのですが、どの曲でも一定の
品位を保っているのは、カントリー・ミュージックに対する確固
たる美学が有るからなのでしょう。
12.The Caretaker
原曲:Johnny Cash(1959年)
言わずと知れたジョニー・キャッシュ。低音のバリトン・ボイスでジ
ョニーの生き写しのように歌ってくれます。誰にも顧みられないお墓
の世話人を歌ったもので、原曲の゛Who's going to cry/When old John
dies?゛を゛Who's going to cry/When old Josh dies?゛と変えて歌って
います。カントリー・ミュージックの基本スタイルを守ろらんとする
思いを込めているのかもしれません。
※年代はアルバム・リリース基準で記載しました
★ジョシュについては、全盛期の頃のアルバム、「Your Man」
「Everything Is Fine」「Haywire」の記事もアップしています★
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