ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Kane Brown ケイン・ブラウン - Mixtape, Vol. 1 [EP] ~華やかなコラボの中で見せるカントリーの気骨

2020-08-22 | Kane Brown ケイン・ブラウン レビューまとめ

 

前作「Experiment」が2018年リリースなので、そろそろサード・

アルバムを期待したいケイン・ブラウンが、このタイミングで7曲

入りEPをリリースしました。目下、カントリー・チャートを上昇

中のミディアム"Cool Again"と、R&Bシンガー、ジョン・レジェン

ドとデュエットした名唱バラード"Last Time I Say Sorry"という2曲の

既発曲が含まれています。さらに、ラップ系のスワエ・リーとカ

リードの二人とコラボの、ほんわかしたレゲエ"Be Like That"

も、ポップ・チャートに向けてシングル・カットされてます。

 

ビデオはネリーも登場するリミックス・バージョンです

 

ケインは「Experiment」収録の"Lost in the Middle of Nowhere"で

ベッキー・Gとデュエットし、これがラテン・チャートでヒット

してから、他ジャンルのアーティストと立て続けにコラボしてる

印象があるのですが、それはやはりマシュメロとの"One Thing

Right"がカントリーも含めて複数のジャンルでそこそこ当たった

インパクトによるのでしょう。以降、本EPに収録のジョン・レジ

ェンドやスワエ・リーとカリードらのR&B系アーティストに続い

ています。カリードとは昨年の"Saturday Nights"のリミックスに

続き2度目。本EPには未収録ですが、"Cool Again"のリミックスに

は、後半、ネリーがラップで登場しますね。

 

 

ということで、カントリーからの目線ではどこへ行ってしまうの?

という感じだったのですが、このEPに収録の、まだシングル・カ

ットしてない3曲に、しっかりとカントリー・マインドが感じられ

安心しました。まず、アコギでしっとり始まるバラード"Worship

You"の切々と訴える深み有る歌声。やはり歌い手として別格の歌

唱力でバラードを歌わせたら絶品です。結構シンプルな曲なのです

が、声に浸ってしまうのです。

 

 

さらに続く”BFE"では一転、トラディショナルなホンキー・トンク・

ジャプをかましてくれます。のっけからフィドルがむせび泣き、

ダルスティールもしっかり鳴るど真ん中のリアル・カント

で、ブラッド・ペイズリーホット・カントリー・ナイツ(!)

か、というくらいのトラディショナリストぶりを発揮してくれま

す。最近の若手カントリー・アーティストでなかなかここま

ントリーする度胸のある人はいないですちなみに”BFE"は、歌詞

でテーマにしている田舎の辺境の地の意味で、「ButtFuckin' Egypt」

の略らしいです。。。この後の"Didn't Know What Love Was"もコ

ラスのメロが和める、リズムがユニークなミディアム曲です。

 

 

"Worldwide Beautiful"は、現在の白黒で分断するアメリカに対す

ケインのメッセージ・ソング。゛僕のどのショーに来てく

る人たちを見ても、みな違うし、そして皆平等だ/一つの愛、

つの神、一つの家族/もし黒と白しか見てないなら、他のいろ

な色を見失ってしまうよ/もし君の心が動かないのなら、どう

れば君の心を変える事ができるのか教えて欲しい/僕らはお互い、

一人ひとりそんなに違わない/僕は周りを見渡して、世界中の美

を見るんだ゛との歌詞が歌われます。ホット・カントリー・ナイツ

もアメリカ人を対象に同じようなメッセージを投げかけてました

ね。「Experiment」事で書いたように、ケインはチェロキー族

の血も入った黒人の父と、人の母のハーフですから、現在の

状況にはいたたまれない思があるのでしょう。インスタに、「こ

の曲が僕らを一つにする事を望んでいる」とコメントしているよ

です。ラストはゴスペル・クワイアで盛り上がり、メッセージを

強調します。

 

 

そろそろCMAアワードのノミネートが発表される時期ですが、

ケインは一度もノミネートされた事がありません。彼の独

で高レベルなタレントのお陰でポップやR&Bアーティストと

コラボできるのであり、ケインはその方面からのファンに”BFE"

のような正統カントリー・ソングを聴かせる、という強力な

カントリー布教活動が出来る人なのです。よっぽど思入れが

ないと、今時トワンギーなホンキー・トンクはやらないです。

そんなケインのカントリーに対する愛情と多大な貢献度を十分

に評価し、カントリー界からも賞賛すべきと思います。



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