今年、ケイシー・マスグレイヴスがグラミー賞でオール・ジャン
ルのアルバム賞を獲得し、カントリー・ファンには大変うれしい
出来事としてまだ記憶に新しいですが、今から8年前の2011年
2月、このレディ・アンテベラム(レディ・A)も、"Need You
Now"でオール・ジャンルのレコード賞とソング賞のダブル受賞
しました。そのおかげで、サード・アルバムからの”Just A Kiss"
が、日本のドラマのエンディング・テーマに抜擢されたり、ビデオ
の日本版(ブルーレイも!)が発売されたり、わが国でも結構
クローズアップされましたね。テイラー・スウィフトから間髪入れ
ずにクロスオーバー・スターが続き、カントリーに大変勢いが有っ
た時期でした。
その後、グループの2トップ・ボーカルであるチャールズ・ケリー
とヒラリー・スコットがそれぞれソロ・アルバムを出すなどしなが
ら、余裕を持ちつつもグループとしての活動はコンスタントに継続
してきてます。前作の2017年の「Heart Break」では、マレン・
モリスのプロデューサーとして話題の人となっていたBusbeeを起
用。"You Look Good"では華やかなシンセやファンク・ビートを
フィーチャしたりで、トレンドに寄り添った精力的なサウンドづく
りをしていました。
対して、この2019年の新作、デビュー当時から彼らを聴き続けて
来た人間としては、とても心地よく聞けるアルバムと感じました。
オープニングにリード・シングルのバラード"What if I Never
Get over You"を配し、穏やかに幕を開けます。そして続くミディ
アム~スローの"Pictures"から”Crazy Love”のメロディが、どこ
か懐かしく、くつろぎを与えてくれるのです。その他、"What I'm
Leaving For"や”Alright”など、ヒラリー・スコットの柔らかな歌
声による、このような雰囲気のナンバーが、アルバム中多くを占め
ています。
その中で、初期のレディ・Aを彷彿とさせるロッキン・カントリー
”You Can Do You""Boots"も収録されて、アルバムにエナジーを
注ぎ込んでいます。アルバムのハイライトの一つと言えるのが、チ
ャールズ・ケリーのエモーショナルな歌声が堪能できる"Be Patient
With My Love"。静かな語り口で始まり、次第にドラマティックに
歌い上げられる壮大なバラードです。"現代のテディ・ペンターグラ
ス"の真骨頂。メジャー・カントリーにR&B的なブルージー唱法を
持ち込んだのが、このチャールズだったと言えるでしょう。
スタジオ・ライブ。後半の盛り上がり部分はオミットされてます
本作、プロデューサーは、2000年代キース・アーバンの全盛期を
支えたダン・ハフが起用されています。当時は時代を席巻した人と
言えました。この起用からも、エレクトリックなダンス調がトレン
ドの現代において、あの時代のような人の手のぬくもりを感じるポ
ップ・カントリー・サウンドをあえて提示しようとしたのでしょう。
"Need You Now"や”Love Don't Live Here"のような際立った曲は
ないかもしれないけれども、大切にしたいと思えるアルバムと思い
ます。
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