8月の発売と同時に、ビルボードのポップチャートで1位を獲得した、シュガーランドのライブCD/DVDセットです。このセット形態は、マルティナ・マクブライドの「Live In Concert」にならったものですが、なぜかライブDVDの少ないカントリー・フィールドに刺激を与えてくれるかもしれません。内容は、このユニットの今の勢いを改めて感じる、クオリティの高いパフォーマンスが満載。それだけでなく、彼らがライブで必ず数曲演奏するというお気に入り曲~その選曲が、カントリーとしては実にユニークで、彼ら独特なもの~のカバーが(特にCDの方に)収録されている事も注目です。
DVDの方は、2008年の10月25日、ケンタッキー州はレキシントンの Rupp Arena でのコンサートをほぼコンプリートに収録したもの。リージョンフリーです。彼らの数多くのヒット曲が、ライブを想定して書かれていた事がよく分かると共に、何をおいてもリード・ボーカルであるジェニファー・ネトルズの、シンガーとしての高い実力と、エンターテイナーとしての類まれなタレントを圧倒的なパワーで見せつけくれる映像です。バックアップするバンドのサウンドは、派手さは無いものの手堅くまとまっており、パフォーマンスのクオリティに一役買っています。
オープニングは、ステージ上でバンドメンバーが一人一人パラソルを手に取り、所定の位置に付く映像からスタート。そして会場全体が暗くなると開いたパラソル(このパラソルはコンサートの要所要所で使われ、演出のポイントになっています)が白く光り、チョッと幻想的な絵になったところで、"Love"のイントロが始まり、ジェニファーがゆっくりと歌い始めるのです。彼女独特のガニマタでリズムを取るところが個性的。2回目のコーラスでいよいよバンドがスパーク、ライブを想定したアレンジの上手さを感じさせてくれる瞬間です。このU2のような重厚なミディアムで会場を余熱し、続くロッキン・チューン"Settin'"で一気にノセる構成も粋ですね。ステージは、中央に半円の大きなスクリーンを置き、両脇にバンドメンバーを配するというシンプルな構成で、このスクリーンが曲目に合せて効果的に使われます。"Baby Girl”では、二人の子供時代の写真が写され、スーパーウーマン、ジェニファーにも子供時代があったのだと、妙に納得。
シングルカットされた"Joey"の前には、心和むピアノが奏でられ、ステージ上のメンバーと観客達が皆でシャボン玉を飛ばすという洒落た演出がされます。撮影の為に、皆に配ったんでしょうね・・・・そしてジェニファーが、例の白いパラソルを持って、穏やかにREM(同じジョージア州出身のニュー・ウェイブ~オルタナティブ・ロック・バンド)の"Nightswimming"を歌い始めるのです。このモダンなバラードを前に置く事で、"Joey"のイントロが実にドラマティックに響くんですね。REMナンバーは、DVDの終盤で、もう1曲、こちらは代表曲である"The One I Love"を、ジェニファーのアコースティック・ギターとクリスティーン・ブッシュのマンドリンのみによる、しっとりしたスロー・バラードにアレンジしてカバーしています。このヒネリ具合が、シュガーランドの真骨頂です。ここでは、ジェニファーと交互にブッシュもリードボーカルを取っています
ジェニファーの職人芸的ボーカルが楽しめるのが、"Steve Earle"。冒頭MCで「これはとっても楽しい曲よ。私からスティーブ・アールへのプロポーズなの」と、両手を合せてひざまずくポーズをとり、会場を沸かせます。いつもはステージ上を跳ね回る彼女ですが、この曲だけは中央にとどまり、ユニークなアップテンポの歌詞を歌います。ラストのブレイクでの、超早口のしゃべくり芸もバッチリ決まってますね。一方、必殺のバラード"Stay"では一転、ブッシュの弾き語りだけによる伴奏で、ソウルフルに、そして真摯に力強く歌い上げてくれます。感情移入する様は尋常ではない。会場も大合唱です。
スタジオレコーディングでは、シンプルなトラディショナル曲だった"Genevieve"。このライブではなかなかのハイライトになってます。薄暗い映像で、二人の向き合う足元がクローズアップされます。一体二人はどこにいるのか?そして、ギターとマンドリンで刻まれるリズムに合せて、ステップを始めるのですが、その都度スモークが巻き上がる様子が幻想的。しばらくしてカメラが離れると、2人がステージの右脇にいた事がわかります。ステージ中央には、ここでもパラソルを持ったメンバーが一人また一人と集まり始め、そのバラソルを自分の前に置きながら、半円状に並んでいきます。そしてジェニファーとブッシュがその両端にスタンバイするや否や、コーラスがスタートするのです。
同様にイントロでユニークな演出がほどこされているのが、"Everyday America"。アーバンなクラブ風のベースラインとダンスビートが会場に鳴り響きます。真っ暗なアリーナでは緑色のペンライトが揺らめき、ステージ上でもスタッフ達が押し寄せ、皆踊っています。スポットライトを持ち、あちこちを照らしまわるブッシュ。そして、ベースラインが消えると、あの印象的なカリビアン・ギターのイントロが奏でられ、マイアミ・ソウルに急展開するのです。曲中のブレイクでは、”Wow wow"コーラスで観客とかけ合いをするジェニファーの、茶目っ気たっぷりな一挙一動に目が釘付けになります。
ラストの"Something More"の前には、2人が大きな透明のバルーンに入って登場。そのまま観客の上を”転がる”という、これまた感動的な演出で観客を大いに沸かせてエンディングを盛り上げています。ラスト曲にクレジットされている"It Happens"はエンディングロールのバックで音声だけが流されますが、どうせなら映像付きで見たかったな。そのエンディングロールで、よく見るとREMへの謝辞が特に記載されている所に、いかに彼らがREMを敬愛しているかが表現されています。
10曲が収録されているCDは、5曲はDVDと同じRupp Arenaの音源で、残り5曲がCDだけで聴ける注目のカバー曲。ジェニファーが共演したことがある、“Irreplaceable”のビヨンセの他は、 "Circle"(実にユニークなメロディが聴きモノ)の エディ・ブリュッケルEdie Brickell、 "Better Man"のエディー・ヴェダーEddie Vedder(パール・ジャム)、 ジェニファーが「こんな曲が書けたら・・・」と語る"Sex on Fire"のキングス・オブ・レオンKings of Leon、そして"Love Shack" のthe B-52'sと、やはり皆オルタナティブ・ロックあるいはニューウェイブ系の人たちばかり。DVDとダブるREM曲もそうですし。それらロック曲を、オーガニックなアコースティック・アレンジで、カントリー・ファンに違和感無く聴かせてくれるのです。現在のメインストリームカントリーのサウンドは、大雑把に言ってしまうと、カントリー本来のフレームや器楽編成に、70年代~80年代のアメリカン・ロック~ウェストコースト・ロックのテクニックを取り込んで成り立っていると言えます。その中にあってシュガーランドが独特のシャープさを感じさせるのは、より現在に近い世代のロックである、オルタナティブ・ロックのエッセンスを取り入れているからであると、このカバー曲群は明確に示してくれています。ブッシュによるその一歩先んじたコンセプトと、ジェニファー・ネトルズの類まれな歌唱力が、シュガーランドを現代アメリカンミュージックの高みに上り詰めさせた事を、このライブCD/DVDは我々に確認させてくれるのです。
DVDの方は、2008年の10月25日、ケンタッキー州はレキシントンの Rupp Arena でのコンサートをほぼコンプリートに収録したもの。リージョンフリーです。彼らの数多くのヒット曲が、ライブを想定して書かれていた事がよく分かると共に、何をおいてもリード・ボーカルであるジェニファー・ネトルズの、シンガーとしての高い実力と、エンターテイナーとしての類まれなタレントを圧倒的なパワーで見せつけくれる映像です。バックアップするバンドのサウンドは、派手さは無いものの手堅くまとまっており、パフォーマンスのクオリティに一役買っています。
オープニングは、ステージ上でバンドメンバーが一人一人パラソルを手に取り、所定の位置に付く映像からスタート。そして会場全体が暗くなると開いたパラソル(このパラソルはコンサートの要所要所で使われ、演出のポイントになっています)が白く光り、チョッと幻想的な絵になったところで、"Love"のイントロが始まり、ジェニファーがゆっくりと歌い始めるのです。彼女独特のガニマタでリズムを取るところが個性的。2回目のコーラスでいよいよバンドがスパーク、ライブを想定したアレンジの上手さを感じさせてくれる瞬間です。このU2のような重厚なミディアムで会場を余熱し、続くロッキン・チューン"Settin'"で一気にノセる構成も粋ですね。ステージは、中央に半円の大きなスクリーンを置き、両脇にバンドメンバーを配するというシンプルな構成で、このスクリーンが曲目に合せて効果的に使われます。"Baby Girl”では、二人の子供時代の写真が写され、スーパーウーマン、ジェニファーにも子供時代があったのだと、妙に納得。
シングルカットされた"Joey"の前には、心和むピアノが奏でられ、ステージ上のメンバーと観客達が皆でシャボン玉を飛ばすという洒落た演出がされます。撮影の為に、皆に配ったんでしょうね・・・・そしてジェニファーが、例の白いパラソルを持って、穏やかにREM(同じジョージア州出身のニュー・ウェイブ~オルタナティブ・ロック・バンド)の"Nightswimming"を歌い始めるのです。このモダンなバラードを前に置く事で、"Joey"のイントロが実にドラマティックに響くんですね。REMナンバーは、DVDの終盤で、もう1曲、こちらは代表曲である"The One I Love"を、ジェニファーのアコースティック・ギターとクリスティーン・ブッシュのマンドリンのみによる、しっとりしたスロー・バラードにアレンジしてカバーしています。このヒネリ具合が、シュガーランドの真骨頂です。ここでは、ジェニファーと交互にブッシュもリードボーカルを取っています
ジェニファーの職人芸的ボーカルが楽しめるのが、"Steve Earle"。冒頭MCで「これはとっても楽しい曲よ。私からスティーブ・アールへのプロポーズなの」と、両手を合せてひざまずくポーズをとり、会場を沸かせます。いつもはステージ上を跳ね回る彼女ですが、この曲だけは中央にとどまり、ユニークなアップテンポの歌詞を歌います。ラストのブレイクでの、超早口のしゃべくり芸もバッチリ決まってますね。一方、必殺のバラード"Stay"では一転、ブッシュの弾き語りだけによる伴奏で、ソウルフルに、そして真摯に力強く歌い上げてくれます。感情移入する様は尋常ではない。会場も大合唱です。
スタジオレコーディングでは、シンプルなトラディショナル曲だった"Genevieve"。このライブではなかなかのハイライトになってます。薄暗い映像で、二人の向き合う足元がクローズアップされます。一体二人はどこにいるのか?そして、ギターとマンドリンで刻まれるリズムに合せて、ステップを始めるのですが、その都度スモークが巻き上がる様子が幻想的。しばらくしてカメラが離れると、2人がステージの右脇にいた事がわかります。ステージ中央には、ここでもパラソルを持ったメンバーが一人また一人と集まり始め、そのバラソルを自分の前に置きながら、半円状に並んでいきます。そしてジェニファーとブッシュがその両端にスタンバイするや否や、コーラスがスタートするのです。
同様にイントロでユニークな演出がほどこされているのが、"Everyday America"。アーバンなクラブ風のベースラインとダンスビートが会場に鳴り響きます。真っ暗なアリーナでは緑色のペンライトが揺らめき、ステージ上でもスタッフ達が押し寄せ、皆踊っています。スポットライトを持ち、あちこちを照らしまわるブッシュ。そして、ベースラインが消えると、あの印象的なカリビアン・ギターのイントロが奏でられ、マイアミ・ソウルに急展開するのです。曲中のブレイクでは、”Wow wow"コーラスで観客とかけ合いをするジェニファーの、茶目っ気たっぷりな一挙一動に目が釘付けになります。
ラストの"Something More"の前には、2人が大きな透明のバルーンに入って登場。そのまま観客の上を”転がる”という、これまた感動的な演出で観客を大いに沸かせてエンディングを盛り上げています。ラスト曲にクレジットされている"It Happens"はエンディングロールのバックで音声だけが流されますが、どうせなら映像付きで見たかったな。そのエンディングロールで、よく見るとREMへの謝辞が特に記載されている所に、いかに彼らがREMを敬愛しているかが表現されています。
10曲が収録されているCDは、5曲はDVDと同じRupp Arenaの音源で、残り5曲がCDだけで聴ける注目のカバー曲。ジェニファーが共演したことがある、“Irreplaceable”のビヨンセの他は、 "Circle"(実にユニークなメロディが聴きモノ)の エディ・ブリュッケルEdie Brickell、 "Better Man"のエディー・ヴェダーEddie Vedder(パール・ジャム)、 ジェニファーが「こんな曲が書けたら・・・」と語る"Sex on Fire"のキングス・オブ・レオンKings of Leon、そして"Love Shack" のthe B-52'sと、やはり皆オルタナティブ・ロックあるいはニューウェイブ系の人たちばかり。DVDとダブるREM曲もそうですし。それらロック曲を、オーガニックなアコースティック・アレンジで、カントリー・ファンに違和感無く聴かせてくれるのです。現在のメインストリームカントリーのサウンドは、大雑把に言ってしまうと、カントリー本来のフレームや器楽編成に、70年代~80年代のアメリカン・ロック~ウェストコースト・ロックのテクニックを取り込んで成り立っていると言えます。その中にあってシュガーランドが独特のシャープさを感じさせるのは、より現在に近い世代のロックである、オルタナティブ・ロックのエッセンスを取り入れているからであると、このカバー曲群は明確に示してくれています。ブッシュによるその一歩先んじたコンセプトと、ジェニファー・ネトルズの類まれな歌唱力が、シュガーランドを現代アメリカンミュージックの高みに上り詰めさせた事を、このライブCD/DVDは我々に確認させてくれるのです。
50を過ぎて聴きはじめた私なので、R.E.Mほかのアーティストの影響・関係など知らないことばかりでした。
先日GACのオンエアでシカゴでのコンサートを見ましたが、"It Happens"も楽しい。私も、映像で入れて欲しかった。
レビューを見ながら、改めてDVDを楽しみます。
シカゴでのコンサートがオンエアされてましたか!このLive On The InsideもTV放送してたようですから、それだけ彼らのライブへのニーズが多いんでしょうね。情報有難うございました。