ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

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トーマス・レット Thomas Rhett - Where We Started

2022-04-09 | Thomas Rhett トーマス・レット レビューまとめ

 

ポップ・フィールドにもクロスオーバーな人気を誇るカントリー・スター、トーマス・レットが通算6作目となるオリジナル・アルバムをリリースしました。トーマスといえば、昨年「Country Again: Side A」をリリースした際に、ダブル・アルバムのように一度に多くの新曲を届けるリスクを避けて「Side B」との2枚に分け、その後編「Side B」も昨年中にリリースすると公言していました。しかし、「Side B」はリリースされず、その後“Slow Down Summer”を皮切りに新たに製作された新曲で本作をまとめたようです。ただ、「Side B」もリリースが中止されたわけでなく、今年中にはリリースされるとトーマスは言っています。

 

 

このアルバムの幾つかの曲は、すでにSNS上でアコースティック・スタイルで公開されたもの。これらについてトーマスは、゛みんながトラックリストを見て、「そういえば、あのアコースティックな曲を演奏していたな」と思ってくれるのを楽しみにしているんだ。「レコードではどんな音になるんだろう」とね゛と語り、フル・バンドによるアレンジに期待を寄せています。というのも、コロナ・パンデミックによりブームのようになったソーシャル・メディア上でのアコースティックな曲への関心について、トーマスは懐疑的に感じているようなのです。゛その問題点は、SNSでの曲公開が人々を興奮させることはできても、アコースティック・バージョンしか作らなかったらライブが平坦になってしまうことだ゛というのがその理由です。トーマスがいかに音楽のクオリティやライブ活動を重要視しているかが感じ取れます。

 

フロリダ・ジョージア・ラインのタイラー・ハバードとラッセル・ディッカーソンが参加の"Death Row"

 

やはりアルバムで最大の話題は、タイトル曲の"Where We Started"で、ポップ・ディーバ―のケイティ・ペリーがデュエットしている事でしょう。これが実現した経緯をトーマスが語っています。゛レコーディングに立ち会っていたあるレコード・レーベルの女性が電話してきて「この曲にはゲストが必要だと思うの」って言ってきて、誰か考えているのかって聞いたら、「ケイティ・ペリーにぜひ送りたい」って言ったんだ゛というのが始まりのようです。

 

 

゛「ケイティは僕のことを知らないだろうし、メールに返信することもないだろうけど、絶対にやってみるべきだよ」ってOKしたら、その翌日にはケイティから返事が来て、この曲にどれだけ共感したかを話してくれて、それから24時間も経たないうちに、僕とケイティはファセット・タイムをしていたよ。どのパートを歌えばいいか、コーラスを担当すべきか、と僕に聞いてきたんだ。彼女は「この曲が大好き」と言ってくれて、結局1週間ほどで彼女のボーカルが送られてきたんだ゛これまで、心地よいテナー・ボイスと共にモダンでポップな楽曲で人気を確立した彼らしい、スムーズなバラードです。幾通りものアレンジを試して、最終的にこの形に落ち着いたと、トーマスは語っています。

 

 

「Country Again: Side A」では重厚なカントリー・バラード曲が主軸で、アップ・テンポはソフトで無難な感じだった印象を持ってましたが、本作はアップ・テンポ曲で小気味よいデジタル・ビートやサンプリングが多用されつつも、カントリーらしいオーガニックなフレイバーを散りばめ、スローと軽妙洒脱なアップテンポのバランスの取れたアルバムだと感じました。トーマスは、「Center Point Road」を似たイメージとして引き合いに出しているようですが、これまでお得意だったR&B調スタイルをもっと自然に消化してるように聴こえますね。"Bring the Bar to You"、"Paradise"、トワンギーなホンキー・トンクの"Half of Me"など多くの曲はライブのために特別に書かれたものらしく、やはりライブで盛り上がれるハッピーな楽曲が重視されたようです。

 

 

それでもその万人に響く歌声で聴きごたえが有るのはバラード曲。その一つ、冒頭の"The Hill"ではこう歌われます。゛自分のプライドのために、言葉を弾丸のように使ってきた/正義の名のもとに硬い木に穴をあけてきた/自分に地に一人で立って許しを拒んできた/でも今それは違うとわかる/僕はエベレストに登ることに人生を賭けていた/曲がった道を走る事に人生を賭けて来た/すべての戦いに価値があるわけじゃない/どこで間違ったのか認めよう/でも君の愛の為に戦っているんだ/その丘の上で死にたいんだ゛トーマスはこのアルバムの歌詞について゛とても良く書けている゛と自信を持っているようで、この"The Hill"や"Angel"そして"Your Mama's Front Door"などを特に挙げています。

 

そんなアーティストとしての技量としても脂の乗り切ったトーマスです。そろそろCMAアワードの男性ボーカル賞や、エンターテイナー賞の受賞を期待したくなります(アカデミー・オブ・カントリーでは受賞済み)。今年はアルバム2枚を出すようなので、期待できるでしょうか。

 



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