大ベテランの女性シンガーで、Suzy Boggussと共に私的にもとても思い入れのあるKathy Matteaの新作。日本語訳すると「石炭」。ジャケットもカントリーでは珍しくアーティスティックで、なかなか凄みがあるデザイン。つまり、一言で言うと”Kathy Mattea Sings マウンテン・ミュージック”。かつて炭鉱産業が盛んだったアパラチア~カントリー・ミュージックの原点、その音楽に立ち返ろうと言うコンセプトでしょう。以前、Patty Lovelessが「Mountain Soul」で取り組んだもののKathy版。そのPattyもコーラスで参加してサポートしています。ブルーグラス的な作風だったPattyの「Mountain Soul」に対し、ここでのKathyの取り組みは、彼女のルーツであるフォーク・ミュージック寄りにシフトした切り口で楽曲を揃えています。プロデュースは90年代のロッキン・カントリー・ヒーローで、ブルーグラッサーのマーティ・スチュワート(Marty Stuart)。
そのフォーク志向は、オープニングの2曲"The L & N Don't Stop Here Anymore ""Blue Diamond Mines"、50年代を中心に活躍したフォーク・シンガーでアパラチアン・ダルシマー奏者、そして”フォークの母”とも称えられるジーン・リッチー(Jean Ritchie)のナンバーを取り上げている事で伝わってきます。その"Blue Diamond Mines"ではPatty Lovelessがいつものように感動的なコーラスを付けていて、ブルーグラスの洗練性とは微妙に違った、生気と緊迫感に溢れたオーガニックな「アパラチア」の音世界の再現が試みられているのです。さらに60年代フォークの歌姫で、CSN&Yの「青い目のジュディ」にも歌われたジュディ・コリンズ(Judy Collins)がらみのナンバーが3曲、"Red-Winged Blackbird ""Coal Tattoo""Coming of the Roads"が取り上げられている事も特筆でしょう。"Coming of the Roads"のチェロを伴う純アコースティック・サウンドと歌声には、Kathy自身の1990年頃の全盛期にも匹敵する穏やかで神々しい美しさを感じました。カントリー系からは、Merle Travisの素晴らしいクラシック"Dark as a Dungeon"や、Patty Lovelessも取り上げていた"You'll Never Leave Harlan Alive"などを好演。アルバム全体としては伝統的なバラッド曲集ってな風合いのマイナーなトーンが中心な中で、エミルー・ハリスの"Green Rolling Hills"が心和むカーター・ファミリー調カントリー曲で、心和みますよ。この曲のラストでのカーター・ファミリー・ピッキングが実に滋味に溢れています。
Kathy Matteaは、90年代初頭、私をカントリー・ミュージックに決定的に引きずり込んだ女性シンガーです。後にGarth Brooksのプロデューサーとして名をなすAllen Reynoldsによるブルーグラスやフォークを上手くブレンドした、気持ちよくも豊かで奥行きのあるアコースティック・サウンド、Kathyの温かみと深みと、そして知性をも感じさせる歌声に、こんな素晴らしい音楽があったのか!と、アルバム「A Collection of Hits」や「Time Passes By」を何度も聴いた事を思い出します。しかも、それが商業的にも成功している事にも感動したものです。
1959年ウェスト・バージニア州はCross Lane生まれ。中学生の頃にクラシックのヴォイス・トレーニングを受けていましたが、同時期にフォーク・ミュージックに目覚めギターも始めます。1976年の大学生時代、ブルーグラス・バンドに参加して、その2年後には大学をドロップアウトしナッシュビルへ。そして作曲技術を磨いて、1983年遂にMercuryのメジャー・ディールを獲得。 3枚目のアルバム「Walk the Way the Wind Blows」からの、 Nanci Griffith曲のカバー"Love at the Five and Dime"がカントリー3位のヒットでようやく商業的にブレイク。さらにフォーク色を増した1989年5枚目の名盤「Willow in the Wind」では、2曲のナンバー1ヒット・ソング"Burnin' Old Memories" "Come from the Heart" のおかげで初のゴールド・ディスクを獲得。そしてその中の、"Where've You Been"によってグラミー賞の Best Female Country Vocalもゲットしてしまいます。このアルバム、他にClaire Lynchがライターとして名を連ねる"Hills of Alabama"や、Pat Alger作の"She Came from Fort Worth"など名曲ぞろいですよ。その後の90年代初め、Kathyはイングランドはスコットランドに何度か足を運ぶことで、カントリー・ミュージックとスコティッシュ・フォークの関係を独学し、その成果が素晴らしい「Time Passes By」に結実するのです。 この後商業的には少しずつ下り坂になって行きますが、「Lonesome Standard Time」や「Walking Away a Winner」などフォーク・ロック色を強めつつ作品の質は衰えることなく、現在もこうして精力的な制作活動をしてくれている事に彼女の実力が感じられて嬉しいです。
●KathyのMySpaceサイトはコチラ●
そのフォーク志向は、オープニングの2曲"The L & N Don't Stop Here Anymore ""Blue Diamond Mines"、50年代を中心に活躍したフォーク・シンガーでアパラチアン・ダルシマー奏者、そして”フォークの母”とも称えられるジーン・リッチー(Jean Ritchie)のナンバーを取り上げている事で伝わってきます。その"Blue Diamond Mines"ではPatty Lovelessがいつものように感動的なコーラスを付けていて、ブルーグラスの洗練性とは微妙に違った、生気と緊迫感に溢れたオーガニックな「アパラチア」の音世界の再現が試みられているのです。さらに60年代フォークの歌姫で、CSN&Yの「青い目のジュディ」にも歌われたジュディ・コリンズ(Judy Collins)がらみのナンバーが3曲、"Red-Winged Blackbird ""Coal Tattoo""Coming of the Roads"が取り上げられている事も特筆でしょう。"Coming of the Roads"のチェロを伴う純アコースティック・サウンドと歌声には、Kathy自身の1990年頃の全盛期にも匹敵する穏やかで神々しい美しさを感じました。カントリー系からは、Merle Travisの素晴らしいクラシック"Dark as a Dungeon"や、Patty Lovelessも取り上げていた"You'll Never Leave Harlan Alive"などを好演。アルバム全体としては伝統的なバラッド曲集ってな風合いのマイナーなトーンが中心な中で、エミルー・ハリスの"Green Rolling Hills"が心和むカーター・ファミリー調カントリー曲で、心和みますよ。この曲のラストでのカーター・ファミリー・ピッキングが実に滋味に溢れています。
青い目のジュディ
Kathy Matteaは、90年代初頭、私をカントリー・ミュージックに決定的に引きずり込んだ女性シンガーです。後にGarth Brooksのプロデューサーとして名をなすAllen Reynoldsによるブルーグラスやフォークを上手くブレンドした、気持ちよくも豊かで奥行きのあるアコースティック・サウンド、Kathyの温かみと深みと、そして知性をも感じさせる歌声に、こんな素晴らしい音楽があったのか!と、アルバム「A Collection of Hits」や「Time Passes By」を何度も聴いた事を思い出します。しかも、それが商業的にも成功している事にも感動したものです。
1959年ウェスト・バージニア州はCross Lane生まれ。中学生の頃にクラシックのヴォイス・トレーニングを受けていましたが、同時期にフォーク・ミュージックに目覚めギターも始めます。1976年の大学生時代、ブルーグラス・バンドに参加して、その2年後には大学をドロップアウトしナッシュビルへ。そして作曲技術を磨いて、1983年遂にMercuryのメジャー・ディールを獲得。 3枚目のアルバム「Walk the Way the Wind Blows」からの、 Nanci Griffith曲のカバー"Love at the Five and Dime"がカントリー3位のヒットでようやく商業的にブレイク。さらにフォーク色を増した1989年5枚目の名盤「Willow in the Wind」では、2曲のナンバー1ヒット・ソング"Burnin' Old Memories" "Come from the Heart" のおかげで初のゴールド・ディスクを獲得。そしてその中の、"Where've You Been"によってグラミー賞の Best Female Country Vocalもゲットしてしまいます。このアルバム、他にClaire Lynchがライターとして名を連ねる"Hills of Alabama"や、Pat Alger作の"She Came from Fort Worth"など名曲ぞろいですよ。その後の90年代初め、Kathyはイングランドはスコットランドに何度か足を運ぶことで、カントリー・ミュージックとスコティッシュ・フォークの関係を独学し、その成果が素晴らしい「Time Passes By」に結実するのです。 この後商業的には少しずつ下り坂になって行きますが、「Lonesome Standard Time」や「Walking Away a Winner」などフォーク・ロック色を強めつつ作品の質は衰えることなく、現在もこうして精力的な制作活動をしてくれている事に彼女の実力が感じられて嬉しいです。
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スージー・ボガス、パティ・ラヴレス、そして
マーティ・スチュアートは辛うじて認知していましたが、
この人はまるでノー・マークでした。
ありがとうございます。
勉強になりました。
メインストリームからは既に離れて久しい人ですが、個人的な思い入れだけでなく、忘れるべきではないアーティストなので、取り上げさせていただきました。もしアコースティックで穏やかな音がお嫌いでなければ、紹介させていただいた旧盤の方を見つけたらゲットされると良いと思います。
今後ともよろしくお願いします。
キャシーマティアはデビューからCollectionまでは聞いていました。レーベルが変わってからあまり聞かなくなりましたが日本盤が発売されたときは少しびっくりしました。
Where've You Beenがヒットしていたころには自分が若かったせいか歌詞に絶望的なイメージを感じてしまい美しいメロディーなのに聞くことが少なかったけど、年をとった今聞き返すと泣けますね。
コメントいただき有難うございました。
お返事遅れ申し訳ありません。
たしかにCollectionまでが全盛期ですね。
2012にCalling Me Homeをリリース後は、
現在もツアー活動をしているようです。
Coalは思い入れ強いようで、オフィシャル
Webには今もCoalのページが設けられています。
今後ともよろしくお願いいたします。