3月にリリース予定のご案内をさせていただいた待望のマルティナ・マクブライドのライブCD&DVD。CD8曲に対してボーナスDVD(日本のプレーヤーでも再生可能)が20曲と、ほとんどDVDを買うようなもの。しかも、Limited Editionなどと銘打たれていますので、いずれはCDのみになる可能性が大きく、アメリカン・ミュージック・ファンは早急にお買い求めください。ここで聴かれる生歌は、現代アメリカの宝ですから。
●このライブアルバムに続く、2009年「Shine」のレビューはコチラ●
このライブ映像は、2007年9月26日にイリノイ州はMolineのI Wireless Centerで収録されたもの。そもそもはアメリカの公共放送PBS(Public Broadcasting Service、セサミ・ストリートの制作局として有名)が3月に全米に放送したライブ番組「Great Performance」で放送された映像で、そこに"Help Me Make It Through The Night"とパット・ベネターのアメリカン・ロック"Hit Me With Your Best Shot"を追加してDVDにしたもの。CDの方もクレジット上は同じ日の同音源で、DVDから数曲チョイス、曲順も変更されコンパクトなショーに再構成されていますが、DVDには未収録の"From The Ashes"と"Whatever You Say"が収録されているのが嬉しい。というか、それならDVDにも入れてよ、と言いたい気持ちもあります・・・・。90年代は旬のカントリー・アーティストのライブ映像なんて期待できなくて、DirecTVでCMTを放送していた頃でも、コンサートのライブ映像はあまり流していなかったです。しかしDVDの時代になって少しづつ状況は変わってきたようで、アチラのTVライブ・スペシャルがチョコチョコDVD化されてきていますね。CMTと並ぶカントリー専門局GACが頑張ってるおかげかな。
パット・ベネターと
そういう中で、カントリー界随一の実力派でパワーハウスであるマルティナの待ちに待ったライブ。彼女のライブの良さは有名で、その期待に十分応える充実のパフォーマンスが楽しめます。チョッと時期は古くなりますが、私1998年のナッシュビルでのファン・フェアで彼女の生歌に触れノック・アウトされてますし、1996年のファーム・エイド(「Wild Angels」発表後)のパフォーマンスも確認しています。ファーム・エイドの頃はまだまだ30歳で、歌の実力はすでに確立されていますが、ステージ・アクトは若々しく可憐な(背は小さく、か細いし・・・)イメージも感じるものでした。それから10年以上たった今作。業界のトップ・クラスに君臨した貫禄と経験に裏打ちされた自信に満ち溢れたパフォーマーとなった彼女がここにはいます。武道館レベルのアリーナの観客を自由自在に操る様は、まさに司祭です。感無量。偉くなったね。
ここでのサウンドについて、特別に触れる事はないでしょう。おなじみのバンド・メンバーによる手堅い演奏で、スタジオ・バージョンとは微妙な色の違いを演出して好感が持てます。曲目も、堂々の代表曲のオンパレードでおおむね納得(ファンとしては、ヒットしなかったファースト・アルバムの曲や、Carrie Underwoodが歌った"Phones Are Ringing All Over Town"のような隠れた名曲を1,2曲入れてくれたらなぁ・・・と言うのは贅沢ですね)。そして、何よりその生きた歌声です。これは、映像の無いCDで聴くと良くわかりますが、スタジオ・バージョンに比べ、彼女の声は幾分荒く(時にハスキーにも)、臨場感たっぷりのライブ感があり、聴いていて高揚します。お得意の「イ゛ェーイ!!」の雄たけびも快調!また、バラードではその喉一つで会場を包んでしまう程の安定感が堪能できます。そして私が注目したのが、本当に稀になんですが微妙(ホントに微妙で、普通に聴いてたら意識しないレベル)な声のふらつきも”修正せずに”記録されている事です。何を言っているのかって?ライブ盤というのは、コンサートで録音した音源をそのまま使うとは限らず、ミスをした部分などを後からスタジオで録音しなおす等して”修正(差し替え)して”リリースされるというのが、まあ常識です。ずるいような気もしますが、いくら歌の上手いシンガーでも、毎日のように続く消耗の激しいコンサート・ツアーをこなしながら歌い続けるのは大変です。それで常にレコードのように完璧に歌え、というのは不可能です。CMTでシャナイア・トゥエインのカナダでのアワードのライブを見た事がありますが、歌はメロメロで市販のコンサート・ビデオのパーフェクトな印象とは違いました。相当激しくダンスしてましたしね。また、ケニー・チェズニーのライブCDがリリースされていますが、私的にはコレ「歓声を付けたベスト盤」のように聴こえました。擬似ライブとまでは言いませんけれども(昔はあった)。歌声が妙に完璧であまりライブ感を感じなかったのです。しかし、CDは基本的に静かな室内で聞く機会が多いもの。ロックだったら少々荒いパフォーマンスでも許されるかもしれませんが、カントリーはそうはいかないでしょう。
しかし、この「Live」でのマルティナ。先にも書きましたとうり、(重ね重ね、チョッピリですが)荒かったり、根性で声を絞り出したりするような生々しさがありのままに記録されているのです。そこで大胆な推定なのですが、プロデューサー・マルティナは、ほとんどボーカルの差し替えをしていないのではないでしょうか。これはスゴイ事です。クレジットを信じるなら、収録は1日のみのまさに一発録り。ツアー中のベスト・テイク集ではない。それで、ここ一発に向けてのコンディションや集中力をコントロール、キープし、いざ録音に値するパフォーマンスを繰り広げるとは、まさにプロ中のプロ。コレはロックにも通じますが、マルティナのような激情派ボーカリストは声の管理が大変だもの。ベスト・ライブ・アクトとしての意地。ライブ盤とはこう有るべき、差し替えなんて!とのマルティナの心意気が伝わってきます。ツアーでまともに声の出ないロック・ボーカリスト(たまにいる)よ、彼女とすれ違う時は道をあけなさい。
見所は満載ですが強いて印象的なシーンをあげると、必殺のヴィンテージR&B調バラード"A Broken Wing"の熱唱が凄くて、この曲の後のスタンディング・オベイションが鳴り止まない光景は感動的です。"Independence Day"以上の存在感で、この曲のアメリカにおける影響力の大きさを感じさせます。面白いのがやはり"Don't Stop Believin'"でサウンドは見事にジャーニー(Journey)を完コピしていて、私、中か高校生の頃、NHK-FMで聴いたジャーニー全盛期(80年代前半頃)の来日ライブを思い出していました。マルティナや、そしてファンの大半(そして私も)は、おそらくはジャーニー全盛期の、ロック/ポップスが皆で口ずさんで歌えた時代に音楽に目覚めた世代で、現代こうして楽しみと価値観をカントリーのフィールドで共有しているのかな、と思います。そして、それは今のロックが捨ててしまったものなんではないかと・・・・
この作品、彼女のコンサートに駆けつけたファンへのプレゼント的な意味合いなんだろうと思います。ライブ盤のチャート・アクションやライブDVDのセールスというのは、通常は新作CD程ではないですからね。でも、この本格的なボリュームのボーナスDVD付きCDとしてのリリースなので、チャートにも載ってくるわけで、楽しみなところです
ファン・フェアで思い出しましたが、当時のファン・フェアは、ライブ会場と別に、アーティストと直接触れ合えるアーティスト毎のブース会場があったのです。もちろんマルティナもいたのですが、私が見た時はこの娘一人で対応して、ファンと写真を撮ったりしてたような思い出があります。その時はそんなに混んでなかったような。そう考えると、本当に偉くなったよねぇ。
●CDの方はコチラで楽しめます●
CD Track Listing:
• Happy Girl
• Anyway
• Concrete Angel
• From The Ashes
• Whatever You Say
• This One's For The Girls
• Independence Day
• Hit Me With Your Best Shot
DVD Track Listing:
• Anyway
• When God-Fearin' Women Get The Blues
• Wild Angels
• My Baby Loves Me
• Tryin' To Find A Reason
• How I Feel
• Happy Girl
• (I Never Promised You A) Rose Garden
• You Ain't Woman Enough
• Help Me Make It Through The Night
• Where Would You Be
• Concrete Angel
• For These Times
• Love's The Only House/Blessed
• This One's For The Girls
• A Broken Wing
• Independence Day
• Don't Stop Believin'
• Hit Me With Your Best Shot
• Over The Rainbow
●このライブアルバムに続く、2009年「Shine」のレビューはコチラ●
このライブ映像は、2007年9月26日にイリノイ州はMolineのI Wireless Centerで収録されたもの。そもそもはアメリカの公共放送PBS(Public Broadcasting Service、セサミ・ストリートの制作局として有名)が3月に全米に放送したライブ番組「Great Performance」で放送された映像で、そこに"Help Me Make It Through The Night"とパット・ベネターのアメリカン・ロック"Hit Me With Your Best Shot"を追加してDVDにしたもの。CDの方もクレジット上は同じ日の同音源で、DVDから数曲チョイス、曲順も変更されコンパクトなショーに再構成されていますが、DVDには未収録の"From The Ashes"と"Whatever You Say"が収録されているのが嬉しい。というか、それならDVDにも入れてよ、と言いたい気持ちもあります・・・・。90年代は旬のカントリー・アーティストのライブ映像なんて期待できなくて、DirecTVでCMTを放送していた頃でも、コンサートのライブ映像はあまり流していなかったです。しかしDVDの時代になって少しづつ状況は変わってきたようで、アチラのTVライブ・スペシャルがチョコチョコDVD化されてきていますね。CMTと並ぶカントリー専門局GACが頑張ってるおかげかな。
パット・ベネターと
そういう中で、カントリー界随一の実力派でパワーハウスであるマルティナの待ちに待ったライブ。彼女のライブの良さは有名で、その期待に十分応える充実のパフォーマンスが楽しめます。チョッと時期は古くなりますが、私1998年のナッシュビルでのファン・フェアで彼女の生歌に触れノック・アウトされてますし、1996年のファーム・エイド(「Wild Angels」発表後)のパフォーマンスも確認しています。ファーム・エイドの頃はまだまだ30歳で、歌の実力はすでに確立されていますが、ステージ・アクトは若々しく可憐な(背は小さく、か細いし・・・)イメージも感じるものでした。それから10年以上たった今作。業界のトップ・クラスに君臨した貫禄と経験に裏打ちされた自信に満ち溢れたパフォーマーとなった彼女がここにはいます。武道館レベルのアリーナの観客を自由自在に操る様は、まさに司祭です。感無量。偉くなったね。
ここでのサウンドについて、特別に触れる事はないでしょう。おなじみのバンド・メンバーによる手堅い演奏で、スタジオ・バージョンとは微妙な色の違いを演出して好感が持てます。曲目も、堂々の代表曲のオンパレードでおおむね納得(ファンとしては、ヒットしなかったファースト・アルバムの曲や、Carrie Underwoodが歌った"Phones Are Ringing All Over Town"のような隠れた名曲を1,2曲入れてくれたらなぁ・・・と言うのは贅沢ですね)。そして、何よりその生きた歌声です。これは、映像の無いCDで聴くと良くわかりますが、スタジオ・バージョンに比べ、彼女の声は幾分荒く(時にハスキーにも)、臨場感たっぷりのライブ感があり、聴いていて高揚します。お得意の「イ゛ェーイ!!」の雄たけびも快調!また、バラードではその喉一つで会場を包んでしまう程の安定感が堪能できます。そして私が注目したのが、本当に稀になんですが微妙(ホントに微妙で、普通に聴いてたら意識しないレベル)な声のふらつきも”修正せずに”記録されている事です。何を言っているのかって?ライブ盤というのは、コンサートで録音した音源をそのまま使うとは限らず、ミスをした部分などを後からスタジオで録音しなおす等して”修正(差し替え)して”リリースされるというのが、まあ常識です。ずるいような気もしますが、いくら歌の上手いシンガーでも、毎日のように続く消耗の激しいコンサート・ツアーをこなしながら歌い続けるのは大変です。それで常にレコードのように完璧に歌え、というのは不可能です。CMTでシャナイア・トゥエインのカナダでのアワードのライブを見た事がありますが、歌はメロメロで市販のコンサート・ビデオのパーフェクトな印象とは違いました。相当激しくダンスしてましたしね。また、ケニー・チェズニーのライブCDがリリースされていますが、私的にはコレ「歓声を付けたベスト盤」のように聴こえました。擬似ライブとまでは言いませんけれども(昔はあった)。歌声が妙に完璧であまりライブ感を感じなかったのです。しかし、CDは基本的に静かな室内で聞く機会が多いもの。ロックだったら少々荒いパフォーマンスでも許されるかもしれませんが、カントリーはそうはいかないでしょう。
しかし、この「Live」でのマルティナ。先にも書きましたとうり、(重ね重ね、チョッピリですが)荒かったり、根性で声を絞り出したりするような生々しさがありのままに記録されているのです。そこで大胆な推定なのですが、プロデューサー・マルティナは、ほとんどボーカルの差し替えをしていないのではないでしょうか。これはスゴイ事です。クレジットを信じるなら、収録は1日のみのまさに一発録り。ツアー中のベスト・テイク集ではない。それで、ここ一発に向けてのコンディションや集中力をコントロール、キープし、いざ録音に値するパフォーマンスを繰り広げるとは、まさにプロ中のプロ。コレはロックにも通じますが、マルティナのような激情派ボーカリストは声の管理が大変だもの。ベスト・ライブ・アクトとしての意地。ライブ盤とはこう有るべき、差し替えなんて!とのマルティナの心意気が伝わってきます。ツアーでまともに声の出ないロック・ボーカリスト(たまにいる)よ、彼女とすれ違う時は道をあけなさい。
見所は満載ですが強いて印象的なシーンをあげると、必殺のヴィンテージR&B調バラード"A Broken Wing"の熱唱が凄くて、この曲の後のスタンディング・オベイションが鳴り止まない光景は感動的です。"Independence Day"以上の存在感で、この曲のアメリカにおける影響力の大きさを感じさせます。面白いのがやはり"Don't Stop Believin'"でサウンドは見事にジャーニー(Journey)を完コピしていて、私、中か高校生の頃、NHK-FMで聴いたジャーニー全盛期(80年代前半頃)の来日ライブを思い出していました。マルティナや、そしてファンの大半(そして私も)は、おそらくはジャーニー全盛期の、ロック/ポップスが皆で口ずさんで歌えた時代に音楽に目覚めた世代で、現代こうして楽しみと価値観をカントリーのフィールドで共有しているのかな、と思います。そして、それは今のロックが捨ててしまったものなんではないかと・・・・
この作品、彼女のコンサートに駆けつけたファンへのプレゼント的な意味合いなんだろうと思います。ライブ盤のチャート・アクションやライブDVDのセールスというのは、通常は新作CD程ではないですからね。でも、この本格的なボリュームのボーナスDVD付きCDとしてのリリースなので、チャートにも載ってくるわけで、楽しみなところです
ファン・フェアで思い出しましたが、当時のファン・フェアは、ライブ会場と別に、アーティストと直接触れ合えるアーティスト毎のブース会場があったのです。もちろんマルティナもいたのですが、私が見た時はこの娘一人で対応して、ファンと写真を撮ったりしてたような思い出があります。その時はそんなに混んでなかったような。そう考えると、本当に偉くなったよねぇ。
●CDの方はコチラで楽しめます●
CD Track Listing:
• Happy Girl
• Anyway
• Concrete Angel
• From The Ashes
• Whatever You Say
• This One's For The Girls
• Independence Day
• Hit Me With Your Best Shot
DVD Track Listing:
• Anyway
• When God-Fearin' Women Get The Blues
• Wild Angels
• My Baby Loves Me
• Tryin' To Find A Reason
• How I Feel
• Happy Girl
• (I Never Promised You A) Rose Garden
• You Ain't Woman Enough
• Help Me Make It Through The Night
• Where Would You Be
• Concrete Angel
• For These Times
• Love's The Only House/Blessed
• This One's For The Girls
• A Broken Wing
• Independence Day
• Don't Stop Believin'
• Hit Me With Your Best Shot
• Over The Rainbow
いやほんとこのライブ最高です。
おっしゃるとおり調整なしのライブ録音。微妙に外す音もライブらしくてよいです。
普段ライブで観るマルチナはもっと安定していますが、このときは本人も相当、盛り上がっていたようですね。
とにかくこれはA級保存版です。
PS. 後ほどトラックバック打たせていただきます。
見所満載ですよね。特に、必殺のヴィンテージR&B調バラード"A Broken Wing"の熱唱は凄くて、この曲の後のスタンディング・オベイションが鳴り止まない光景は感動的です。"Independence Day"以上の存在感です。面白いのがやはり"Don't Stop Believin'"でサウンドは見事にジャーニー(Journey)を完コピしていて、私、中か高校生の頃、NHK-FMで聴いたジャーニー全盛期(80年代前半か?)の来日ライブを思い出していました。マルティナも、そしてファンも(そして私も)、ジャーニーなどの本当に皆で口ずさんで歌えたロック/ポップスの時代に音楽に目覚めた世代で、現代こうして楽しみと価値観をカントリーで共有しているのかな、と思います。そして、それは今のロックが捨ててしまったものなんではないかと・・・・