ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Rhonda Vincent ロンダ・ヴィンセント - Destination Life

2010-01-23 | Bluegrass ブルーグラス レビューまとめ

 シャープネスと甘さが同居したクオリティの高い歌唱で、ルーツ・オリエンティッドなアコースティック・ミュージックを提供し続けてくれる、とびきりの美人女性シンガー、ロンダ・ヴィンセント。すでにベテランと言っていい領域に足を踏み込んでいる人ですが、その美しさは変わりませんね。通算14作目、そしてRounderレーベルでは8作目となる最新アルバムです。彼女の音楽は、プログレッシブ~コンテンポラリー・ブルーグラスなどと呼ばれるのですが、よく見られるポップやロックの要素を持ち込んでくるようなやり方でなく、現代メインストリーム・カントリーの艶やかさやウェスタン・スウィングのジャジーなフレイバーを織り込むことで、和みの要素を加えたオーソドックスなブルーグラスを創り上げた事がロンダの功績とされています。その彼女らしさは今回も健在。この「Destination Life」では自身のツアー・バンドThe Rageのみでレコーディング、サポート・ゲストを多数招いた前作「Good Thing Going」に対し、ミニマムでバンド感を大切にした作品にしています。来月のグラミー賞でも、ブルーグラス・アルバム部門でノミネートされてます。

 
 


 特に注目はタイトル曲"Destination Life"。珍しくニュージーランドのアーティストDonna Deanの作品です。これは、ロンダが世界中のブルーグラス・ファンとチャットなどで交流していた時に、オーストラリアやニュージーランドのカントリー/ブルーグラス・シーンを知り、そしてDonna Deanのこの曲を紹介されたそうです。「アメリカでこの曲がリリースされるのはこれが初めて」と、ロンダがあえてコメントしてアルバム・タイトルにするくらいにお気に入りの、アリソン・クラウス的和み系ナンバーです。

 オープニングのLast Time Loving Youはロンダらしいおなじみの快調なアップテンポ・ナンバー。Alice ZinconeとRick LaFluerの原曲に、ロンダがeメールで参加して仕上げた曲だとか。ライブでも新しいオープニング曲としてフィーチャーされている、このアルバム中のピークの一つです。同じくアップテンポでもスムーズで洗練されたCrazy Loveもナイス。これもアリソンがやりそう・・・・。クラシック・カントリー曲も取り上げていて、パッツィ・クラインで知られる"Stop the World (And Let Me Off) "をチョッぴりカリビアンなテンポで鮮やかに料理し、現代によみがえらせています。ラストを飾るWhen I Travel My Last Mile (He Will Hold My Hand)は、バンドメンバーのサポートで完全アカペラで歌われるゴスペル・ソング。このアルバムの手作り感をしっとりまとめてアルバムを締めくくります。



 ロンダは、このアルバムに向けて、新しいメンバーを加えたThe Rageとリハーサルを開始しようとしていた頃のエピソードをインタビューで語っています。「Aaron McDaris(バンジョー、元グラスカルズ) と Ben Helson(ギター)が私に電話をかけてきて、自分達がどんな曲を”担当する(work)”のか聞いてきたの。私は答えたわ。『何も働く事なんかないのよ。何も書かれていない真っ白な楽譜を、自由に盛り上げていくだけ。初めてのRhonda & The Rage プロジェクトの為にアイデアを分かち合い、新しい音楽を創っていくの』。私達はスタジオで初めて会った時から、アイデアを交換し、いろんな歌声や楽器のコンビネイションをトライたわ。その結果が「Destination Life」で実を結んだ」ロンダの音楽に対するアーティスティックで真摯な思いが感じ取れる言葉です。


Trouble Free


 1962年、ミズーリ州は Kirksville生まれ。5歳の時に早くもファミリー・バンドでプロとして活動してました。演奏していた楽器は、何とドラム。その後、8歳でマンドリン、10歳でフィドルと、次々と楽器をこなす様になり、週末ごとに家族とプレイしていたのです。20歳代半ば頃に出演した、テネシー州のTV局TNNのコンテスト番組Can Be a Star で、当時グランド・オール・オプリーに出演していたジム・エド・ブラウンJim Ed Brown(The Browns "Three Bells"など)の心をつかみ、結果マイナーのRebel Recordsと契約する事に。 ここで出した数枚のレコードが、メジャーGiant Nashvilleの社長James Stroudの興味をひきつけ、レーベルを移籍。ロンダは2枚の素晴らしいコンテンポラリー・ストレート・カントリー・アルバム「Written in the Stars」(1993年)、「Trouble Free」(1996年)をリリースしました。特に後者「Trouble Free」は、アリソン・クラウス、ドリー・パートンそしてランディ・トラビスらの豪華ゲストを招いた盤。現在までのキャリアを通じてベストとの声もあり、機会があったらぜひ聴いてほしいと思います。その後、Rounderに移籍し、彼女が共に育ったルーツ・ミュージックへの情熱を、ブルーグラスをベースに表明していきます。1999年には自身のバンド、The Rageを編成、盲目のフィドラーMichael Clevelandらによるハード・ドライビングでエネルギッシュな演奏のサポートも得て、ブルーグラス界での名声を不動のモノとし、ロンダはIBMA(International Bluegrass Music Association awards)で、2000年以降7年連続して女性ボーカル賞を獲得するまでになるのです。これはアリソン・クラウス(4回)を超える受賞数です。



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