●2017年リリースのWay Out Westについてコチラに記事があります
やはり分かってるなぁ、この人は。
80年代末からのトラディショナル・カントリー・ブームの中で、トラビス・トリットTravis Trittと共にロカビリー~ロッキン・サウンドで登場し90年代のシーンを引っぱったマーティ・ステュアート。2006年のライブ・アルバム以来、久々のオリジナル・アルバムです。ここで展開される音は、トラディショナル・カントリーのマーティ流現代解釈、と言ったところ。バック・オウェンズ風エレクトリック・サウンドで快調に突っ走り、オールド・スタイルのカントリー・バラードでホロリと泣かせる。マーティの力あるラフなカントリー・ボイスが今の時代にこの音楽が十分説得力を持つ事を強力にアピールします。コレ、2010年ベスト・カントリー・アルバムの最有力候補だな、と感じられたほど、生粋のカントリー・ファンには応えられない出色の出来と思いますヨ。
1958年生まれのマーティは12歳の頃からブルーグラスをプレイしていて、14歳の頃には伝説的ブルーグラス・デュオ、フラット&スクラッグスFlatt and Scruggsのツアー・バンドに加わったほどの、早熟な天才音楽家でした。その後もヴァッサー・クレメンツ(フィドル)やドック・ワトソン(ギター)らの、コチラも伝説的なプレイヤー達とセッションを共にしたり、さらにジョニー・キャッシュのバンドに籍を置いたりすることで、ブルーグラス~カントリー・ミュージックの極上のエッセンスをレジェンド達から直々に学ぶ事が出来たのです。そんな彼の知識、テクニックと才能が、この「Ghost Train, The Studio B Sessions」には凝縮されています。
オープニングを飾るリードシングル"Branded"と、それに続く、ブルーグラス・レジェンドであるリノ&スマイリーが50年代末に放った名曲"Country Boy Rock and Roll"のロッキン・カバー2曲で、マーティらしいルーツィーなカントリー・ロックの世界に引きずり込まれます。往年のベイカーズフィールド的クリアなギターが全編響き渡り、雰囲気はサイコー。ミニマムでカッチリ引き締まったバンド感と、マーティの勢いある声が活き活きとバウンドしナイス。そのバンドサウンドがたっぷり楽しめるのが、アップテンポのインスト"Hummingbyrd"。流れるように次から次へと爪弾かれるアーシーなフレーズがホントかっこいいね!カントリーの父、ジミー・ロジャースのシグネイチャー・リックでスタートする″Ghost Train Four-Oh-Ten"は、カントリー十八番のペダルスティールによる汽笛のイミテーションも聴かれる、チョッぴりブルージなトレイン・ソング。現代にあっては”ゴースト”とも揶揄されかねない伝統的なスタイルが、しかしこうして変わらず前進し続けるというアルバム・コンセプトを代弁しているナンバーです。
クラシックなカントリーの名曲達にも負けない貫禄をもつバラード群が、"Driftin' Apart""A World Without You"、そして妻コニー・スミスとのデュエットで深みあるストリングスのアレンジも美しい"I Run To You。この手のスタイルが好きな私には至福の時です。故ジョニー・キャッシュとマーティが最後に書いたという"Hangman"は、”絞首刑執行人”というテーマどおりの独特なダークネスを持つ曲で、やはりキャッシュの影がそこかしこに感じられます。"Hard Working Man"は、「この質問にはっきりと答えてほしいんだ。労働者達はどうなっていくんだい?」との問いかけがキーになるメッセージ・ソング。かつてカントリー・ミュージックのゴールデン・エイジを支えた労働階級の人達。社会の構造が変化しその労働階級の位置づけも変わってきていることに対する、カントリー・ミュージックのあり方を問いかけているのだと思います。このアルバム、何が個性的で素晴らしいかと言うと、今のカントリー・アルバムにはほとんど感じる事がなくなった”影”が、マーティ自身の声やスティール・ギター・レジェンドであるラルフ・ムーニーのプレイなどそこかしこに感じられる事です。そしてその”影”が、このシンプルな音楽にえも言われぬ深みを与えているのです。ゴールデン・エイジのクラシック・カントリーは、そういうものだったのだよ、とマーティは言いたいのだと思います。
上記の”修行時代”を経て、1989年にMCAナッシュビルから「Hillbilly Rock」でデビュー。同名タイトル曲が見事トップ10入りを果たします。当時は、既にスターだったドワイト・ヨーカムが引き合いに出されるくらい、評価も上々でした。その後も順調にチャート上の快進撃を続け、1992年の「This One's Gonna Hurt You」では、盟友となるトラビス・トリットとデュエットしたタイトル曲がヒット。アルバムも初のゴールド・アルバムを獲得するのです。トラビスとマーティは、トラディショナル・シンガーでは当然だった、”テンガロン・ハット”をかぶる事を拒否、”No Hat”を標榜して2人でツアーをしては、ロッキッシュなカントリーサウンドでファンを楽しませました。1999年の「The Pilgrim」まで、90年代を通じてメジャーMCAに所属し続けましたが、そのカントリーとしては革新的で評価も高かったコンセプト・アルバム「The Pilgrim」(ただし、テーマはカントリーの伝統がベース)のセールスが思わしくなかった事から、MCAとは袂を分かちます。それでも、そのカントリー・ミュージックに対する才能と理解への周囲の信頼は揺るぐ事はなく、着実に活動を続けて来ました。以前紹介した、クラシック・カントリーの映像集「Opry Video Classics」ではホストとして登場。彼の姿とコメントには高い信頼性と説得力が感じられたものでした。
●マーティのMySpaceサイトはコチラ●
やはり分かってるなぁ、この人は。
80年代末からのトラディショナル・カントリー・ブームの中で、トラビス・トリットTravis Trittと共にロカビリー~ロッキン・サウンドで登場し90年代のシーンを引っぱったマーティ・ステュアート。2006年のライブ・アルバム以来、久々のオリジナル・アルバムです。ここで展開される音は、トラディショナル・カントリーのマーティ流現代解釈、と言ったところ。バック・オウェンズ風エレクトリック・サウンドで快調に突っ走り、オールド・スタイルのカントリー・バラードでホロリと泣かせる。マーティの力あるラフなカントリー・ボイスが今の時代にこの音楽が十分説得力を持つ事を強力にアピールします。コレ、2010年ベスト・カントリー・アルバムの最有力候補だな、と感じられたほど、生粋のカントリー・ファンには応えられない出色の出来と思いますヨ。
1958年生まれのマーティは12歳の頃からブルーグラスをプレイしていて、14歳の頃には伝説的ブルーグラス・デュオ、フラット&スクラッグスFlatt and Scruggsのツアー・バンドに加わったほどの、早熟な天才音楽家でした。その後もヴァッサー・クレメンツ(フィドル)やドック・ワトソン(ギター)らの、コチラも伝説的なプレイヤー達とセッションを共にしたり、さらにジョニー・キャッシュのバンドに籍を置いたりすることで、ブルーグラス~カントリー・ミュージックの極上のエッセンスをレジェンド達から直々に学ぶ事が出来たのです。そんな彼の知識、テクニックと才能が、この「Ghost Train, The Studio B Sessions」には凝縮されています。
オープニングを飾るリードシングル"Branded"と、それに続く、ブルーグラス・レジェンドであるリノ&スマイリーが50年代末に放った名曲"Country Boy Rock and Roll"のロッキン・カバー2曲で、マーティらしいルーツィーなカントリー・ロックの世界に引きずり込まれます。往年のベイカーズフィールド的クリアなギターが全編響き渡り、雰囲気はサイコー。ミニマムでカッチリ引き締まったバンド感と、マーティの勢いある声が活き活きとバウンドしナイス。そのバンドサウンドがたっぷり楽しめるのが、アップテンポのインスト"Hummingbyrd"。流れるように次から次へと爪弾かれるアーシーなフレーズがホントかっこいいね!カントリーの父、ジミー・ロジャースのシグネイチャー・リックでスタートする″Ghost Train Four-Oh-Ten"は、カントリー十八番のペダルスティールによる汽笛のイミテーションも聴かれる、チョッぴりブルージなトレイン・ソング。現代にあっては”ゴースト”とも揶揄されかねない伝統的なスタイルが、しかしこうして変わらず前進し続けるというアルバム・コンセプトを代弁しているナンバーです。
コニー・スミスと
クラシックなカントリーの名曲達にも負けない貫禄をもつバラード群が、"Driftin' Apart""A World Without You"、そして妻コニー・スミスとのデュエットで深みあるストリングスのアレンジも美しい"I Run To You。この手のスタイルが好きな私には至福の時です。故ジョニー・キャッシュとマーティが最後に書いたという"Hangman"は、”絞首刑執行人”というテーマどおりの独特なダークネスを持つ曲で、やはりキャッシュの影がそこかしこに感じられます。"Hard Working Man"は、「この質問にはっきりと答えてほしいんだ。労働者達はどうなっていくんだい?」との問いかけがキーになるメッセージ・ソング。かつてカントリー・ミュージックのゴールデン・エイジを支えた労働階級の人達。社会の構造が変化しその労働階級の位置づけも変わってきていることに対する、カントリー・ミュージックのあり方を問いかけているのだと思います。このアルバム、何が個性的で素晴らしいかと言うと、今のカントリー・アルバムにはほとんど感じる事がなくなった”影”が、マーティ自身の声やスティール・ギター・レジェンドであるラルフ・ムーニーのプレイなどそこかしこに感じられる事です。そしてその”影”が、このシンプルな音楽にえも言われぬ深みを与えているのです。ゴールデン・エイジのクラシック・カントリーは、そういうものだったのだよ、とマーティは言いたいのだと思います。
上記の”修行時代”を経て、1989年にMCAナッシュビルから「Hillbilly Rock」でデビュー。同名タイトル曲が見事トップ10入りを果たします。当時は、既にスターだったドワイト・ヨーカムが引き合いに出されるくらい、評価も上々でした。その後も順調にチャート上の快進撃を続け、1992年の「This One's Gonna Hurt You」では、盟友となるトラビス・トリットとデュエットしたタイトル曲がヒット。アルバムも初のゴールド・アルバムを獲得するのです。トラビスとマーティは、トラディショナル・シンガーでは当然だった、”テンガロン・ハット”をかぶる事を拒否、”No Hat”を標榜して2人でツアーをしては、ロッキッシュなカントリーサウンドでファンを楽しませました。1999年の「The Pilgrim」まで、90年代を通じてメジャーMCAに所属し続けましたが、そのカントリーとしては革新的で評価も高かったコンセプト・アルバム「The Pilgrim」(ただし、テーマはカントリーの伝統がベース)のセールスが思わしくなかった事から、MCAとは袂を分かちます。それでも、そのカントリー・ミュージックに対する才能と理解への周囲の信頼は揺るぐ事はなく、着実に活動を続けて来ました。以前紹介した、クラシック・カントリーの映像集「Opry Video Classics」ではホストとして登場。彼の姿とコメントには高い信頼性と説得力が感じられたものでした。
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をしていた頃、ロッキンカントリーは聞き慣れていなかったので衝撃を受けたのを思い出しました。
I Run To YouこれLady Aのヒット曲ですか?
Crystal Shawandaについては、2年前に取り上げた事があります。下記リンクをご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/bigbird307/e/8088bb4a3426792a23048e4c6ee25fe6