ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Joe Nichols ジョー・ニコルズ - It's All Good

2012-04-16 | カントリー(男性)

 現代カントリー界随一のトラディショナリストとして、そのパンチと深みが両立したグッド・カントリー・ボイスでうるさ型のカントリー・ファンも唸らせてしまうジョー・ニコルス。この2011年末にリリースされた通算8作目となる新作は、紛う方なきストレート・カントリー集となっており、質の高いアップテンポと忠実なカントリー・バラードがラインアップされています。2作前の「Real Thing」で感じられたような、芸術的な神々しさのようなものはココにはありませんが、実に安定したド真ん中の現代ナッシュビル・サウンドのおかげで、何よりもジョーのカントリー・ボイスの艶やかさ、温かさにフォーカスが当たっていますね。それに、楽曲がとても粒ぞろい!トラディショナル・カントリー・ファンや、長くカントリーを愛してきた良い耳をお持ちの方々なら、この良さが分かっていただけると思います。ジョージ・ストレイトの後継者とも言われる彼が、また新たな一歩を踏み出したと言えるでしょう。

 オープニングは現代のトレンドを反映して、チョッとロック・テイストを加味したアップテンポで景気づけ。”肩にのしかかった重荷がとても負担に感じるのなら、クーラーボックスを掘り起こして、冷たいヤツを掴んでトップを摘まむのさ(もちろん、缶ビールね)”と歌われる"Take It Off"は、ジョーらしいカントリー・クラブ賛歌。続く、"The More I Look"も、リフレインのメロが実にクールなロッキン・チューンです。これらツカミ曲で雰囲気を作り、以降はストレート・カントリー曲群でじっくりとリスナーの心を掴んでいきます。ジョーがジョージ・ストレイト・フォロワーである事を強力にPRするのが、タイトルソング"It's All Good"。とてもシンプルなミディアムのシャッフル・ナンバーで、ジョーの声がとても心地よく響くのです。その歌声をサポートするフィドルとペダル・スティールも、カントリーの真骨頂。”僕はこれまで過ごしてきた年月からひとつの事を学んだんだ。たとえ全ての事が悪くなっている時でさえも、結局全ては良いんだよ”平凡で質素な生活に誇りを持つ南部アメリカ人の気骨と共に、近年アルコール依存症の克復で苦しんだジョー自身の心情が表現されている重要曲です。


 心和むスロー系、流れるようにスムーズな"I Can’t Take My Eyes off You"ではアリソン・クラウスとユニオン・ステイションのダン・タミンスキDan Tyminskiがみずみずしいコーラスで客演している事もトピック。対してよりトラディショナルなフレイバーが漂う"No Truck, No Boat, No Girl"。多彩な能力を持つジョーの歌唱の中でも、この手を歌ったときの彼に最もアイデンティティを感じるな。アルバムの後半は、このような質の高いスロー曲で満たされており、カントリーならではの穏やかでオーガニックな世界が繰り広げられています。昼下がりのポーチで聞くと、心地良さそう。CDをリリースした経験もある、マーク・ネスラーのペンによる滋味に溢れた"Never Gonna Get Enough"もこのパートに収録。このアタリ、伝統的なスタイルのカントリー・ミュージックに対するジョーの愛情が強く表れていますね。

 リアル・カントリー・シンガーと言えるジョーが、このように堅実な本物感溢れる音楽で確実にアルバムをリリースし続けてくれている事に、とても喜びを感じます。こうして、どんなにクロスオーバー化が進もうとも、リアル・カントリー・ミュージックは後世に継承されていくのです。



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1 コメント

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通りすがりの者ですが... (Mimo808)
2012-04-28 05:37:18
初めまして♪
私、管理人さまと多分同年代のカントリーファンです☆ 日本にこんなに詳しい方がいらしたなんて~!Brad PaisleyとKeith Urbanの大ファンです(ファンクラブ入ってます 笑) 更新、楽しみにしてますね~(o^^o)
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