ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

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ミッドランド Midland - The Last Resort [EP] / The Sonic Ranch

2021-07-24 | カントリー(男性)

 

ポップ・カントリーの時代にあって、レトロなカントリーの良き時代の雰囲気を濃厚に漂わせる貴重なグループ、ミッドランドがこの7月にリリースしたばかりの最新EP「The Last Resort」と、3月にリリースした、同名ドキュメンタリーのサントラ盤の位置づけとなるアルバム「The Sonic Ranch」です。2019年にセカンドの「Let It Roll」をリリースし、昨年にはライブ録音もリリースしていて、いろいろと趣向を凝らして精力的にリリース活動をしています。

 

「The Sonic Ranch」

 

「The Last Resort」は5曲入り。タイトルからイーグルスのあの曲をカバーしてる?など期待したのですが、いずれもメンバーのジェス・カーソン Jess Carsonらと、ナッシュビルの売れっ子ソングライター、ジョシュ・オズボーンやシェーン・マカナリーらの共作による新曲です。そもそもレトロなカントリー~ロカビリー調サウンドと今流の楽曲のミックスで人気を博した彼ら。対してこの作品群は、冒頭の"And Then Some"から感じるように、メロウで抑え目のサウンドと曲想になってる感じがしました。

 

 

シングルになっている"Sunrise Tells The Story"は、トワンギーなギター・フレーズが抑え目に響くミディアム。この手でのマーク・ワィストラッチ Mark Wystrachのボーカルにはとても雰囲気があって、カバー写真で一人カウボーイ・ハットを被らずジャケットを着ているという、チョッとばかりクールなイメージと合ってるようです。3曲目のTwo To Two Step”で少しテンポ・アップし騒々しくなりますが、それでも従来の彼ららしい溌剌さはなく落ち着いた感じがします。5曲となると凝縮された曲の良さを期待したいのですが、どうも引っかからない・・・というのが正直な印象です。

 

 

「The Sonic Ranch」の方は、3人がメジャー・デビューする前にテキサス州エル・パソの、アルバムの名前にもなってる著名なレコーディング・スタジオで2014年春に録音した作品を蔵出ししたもの。同名のドキュメンタリー映画(その当時のレコーディングの様子を記録)があり、後の成功へつながったルーツを探った映像のサウンドトラックの位置づけです。作品はほとんどがジェス・カーソンのペンによるもので、ナッシュビルの職人ソングライターが関わったメジャー・デビュー以降の練られた曲想とは違い、実にクラシックでシンプルなカントリーのメロディが楽しめます。

 

 

勿論サウンドもナッシュビルのそれと全然違うわけで、唯一これまで公式リリースされていた"Fourteen Gears"を比べて聴けば、そのペダル・スティールが鳴り響く幾分ローカルとも感じるサウンドに、「格差」がよく感じられます。つまり、音楽的には粗削りで公式レコーディング程のクオリティはないのですが、そんな中で唯一既に完成しているのがマークの歌声。確かにこれを聴いたら、゛ナッシュビルに連れて行ったらもっと良いのが出来るぞ゛と思うでしょうね。ただし、日ごろ艶やかなメジャー・サウンドに辟易している方であれば、このプリミティブなカントリー・サウンドと極上の歌声とがミックスした作品集は、なかなか楽しい時を過ごせるのではと思います。

 

 

新作EPの方が少々心配ですが、そもそものバンドの心のルーツであるテキサス志向を推し進めて、(最近アメリカで人口が増えている)ヒスパニックらのラテン系サウンドなんか取り入れたら楽しくて良いんではないでしょうか・・・そんなユーモアが欲しいと感じる新作EPです。

 



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