「The Nashville Sound」は、1969年のGrand Ole Opry 44周年記念イベントを収録したドキュメンタリー。当時の、そして今やレジェンドとなっているスーパー・スター達の若かりし頃(或いは、ご存命の頃)のパフォーマンスがフル・コーラスで見れる貴重なDVD。会場はもちろん、ライマン公会堂。観客の表情、ナッシュビルの町の風景など当時の雰囲気も確認できて楽しいです。結構、画像にはノイズが混じってたりするので、どんな経緯で2006年になって発売されたのか興味あるところ。
主な曲目とアーティストは・・・・①East Virginia Blues(Earl Scruggs) ②Big Wind(Porter Wagoner) ③My Blue Ridge Mountain Boy(Dolly Parton) ④With Body and Soul(Bill Monroe) ⑤The Girl Most Likely(Jeannie C. Riley) ⑥To Make a Man(Feel Like a Man)(Loretta Lynn) ⑦Don't Come Home a-Drinkin'(with Lovin' on Your Mind)(Loretta Lynn) ⑧"Country rock session"(Bob Johnston、Doug Kershaw etc) ⑨Wait,Wait,Wait(Tracy Nelson & the Mother Earth) ⑩You Win Again(Tracy Nelson & the Mother Earth) ⑪Wabash Cannonball(Roy Acuff) ⑫High Noon(Tex Ritter) ⑬Rollin' in My Sweet Baby's Arms(Lester Flatt) ⑭Harper Valley P.T.A.(Jeannie C. Riley) ⑮All I Have to Offer You Is Me(Charley Pride) ⑯Kaw-Liga(Charley Pride) ⑰Folsom Prison Blues(Johnny Cash)
この時期はJeannie C. Rileyが"Harper Valley P.T.A."でブレイクしていた頃で、ライマンの観客は大盛り上がり。この時代の人気ソウル・シンガー、Clarence Carterが直後にこの曲をカバーしてるくらいですから、相当のヒットだったのでしょう。Jeannieはもう1曲、これは屋外での特別なライブも収録されており、人気の高さが伺われます。
私が感激した映像が、デビュー間もない頃の、なんと初々しい(!)Dolly Parton。Porter Wagonerのバンドをバックにした"My Blue Ridge Mountain Boy"がフルコーラスで見れます。当然観客は写真とりまくり。そしてカメラは、Dollyを恍惚としたまなざしで見つめる男性ファンを何人も映し出します。彼女が出てきた頃のインパクトがどんなものだったかが感じられます。もう一人、注目したいのが、ファン・クラブのイベント会場で歌うLoretta Lynn。2曲若々しく素晴らしい歌声を聞かせてくれます。バンドもミニマムで要所を押さえたホンキー・トンク・サウンドでバックアップしてて、素晴らしいライブです。コレでもっと音と画像が良ければ、と悔やまれます。
面白いのが、当時の旬のスターが現れる度に、多くの観客が写真機を持ってステージに詰め寄っている事。私も1998年のファン・フェアに行ったときにやって、バシバシ写真を撮った事を思い出します。そのときは、人気者になると収拾がつかなくなるから、ステージの片方からもう片方へ常に歩かされる方式に"進化"していましたが。30年も前から同じような事をしてたんです。
カメラは途中、トラディショナルなカントリーを離れ、当時の新興勢力であったカントリー・ロックをフィーチャーして、新しい動きの芽生えを映し出します。ここらはドキュメンタリーとして抜かりないですね。2曲でアーシーな声を聴かせてくれているTracy Nalsonは、今年7月にニューアルバムを出すなど、今だに前線で活躍しています。
他にも、フォーキーでイカしたEarl Scruggs("East Virginia Blues"はこの当時、ボブ・ディランもプレイした、カーター・ファミリーのナンバー)や、Roy Acuffのヨーヨー、The Tennessee Threeを同伴し危うい妖気を放つJohnny Cashなど、見所は満載。トータルなイメージとしては、スケール的にはこじんまりした南部地域音楽際といった雰囲気です。当時、カントリーはあくまでナッシュビル特産の音楽。この地におけるロックやクロスオーバーとの交流はこれからという時期だったのです。それにしても、時代は60年代後半、サイケデリックやフラワー・パワー全盛の時期にもかかわらず、映像からはそんな物は微塵も感じられません。インタビューに答える一般人も、年齢層高いし。この当時は、まだアメリカの中でも地域ごとの音楽スタイルの特徴が保たれていて、個性的な音楽がアチコチから出現していた時代。このドキュメントはその中でも重要な一地域をフィーチャーした、今となってはアメリカン・ミュージックの歴史を確認できる貴重なアーカイブだと思います。
残念ながら、リージョン1で国内のプレーヤーでは再生できません。私、PCで見てます。
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