一息ついた曲者、Big & Rich。それでも、カントリー・アルバム・チャートのNo.1は勿論、ファースト・シングル"Lost In This Moment "の方もシングル初のNo.1獲得!
90年代に活躍したカントリー・バンドLonestar("Amazed"!)の元ボーカリストJohn Rich と、それまでは無名だったBig Kenny が出会い、一緒に作曲を始めたのが1998年。それからお互いのライブでジャムっているうちに、他の友人をも巻き込んで定例化。これが、MuzikMafiaとして知られる毎火曜日のセッション・イベントとなりました。作曲チームとしてのBig & Richの最初の大きな成果は、Martina McBrideが「Martina」で取り上げた"She's a Butterfly"。そして、彼ら自身も2004年に「Horse of a Different Color」で華々しくデビューしたのです。このアルバムでは、その当時のカントリー・ミュージックの慣習を無視、R&B風ラップやグランジ・ロックをも取り込む雑食性を見せて、ほとんどサザンロックの現在形と言っていいくらいの、そしてそれをカントリー・ミュージックだと堂々と宣言するふてぶてしさを持って、それでいてベテランのうまさもちりばめた、ヘヴィで迫力のサウンドを聴かせてくれました。結果アルバムは大ヒット。現在のカントリー・ファンが、結構幅広くハードな嗜好を持っている事が改めて明白になったのです。
Big & Richのもう一つの成果は、Gretchen Wilsonの”発見”。最初、ナッシュビルのダウンタウン、プリンターズ・アレイ沿いのバーで歌っていた彼女をBig & Richが訪ねたのですが、Gretchenはなぜかこのコンビを無下に扱い、名詞とデモを投げつけて追い返しています。その後何ヶ月ものRichからの電話にようやく彼女も折れてMuzikMafiaに参加。その後もRichにはナッシュビルの作曲家集団の業界事情を教わるなど、現在まで強力なパートナーとして支えられています。
この2007年の3作目、前半はミディアム~スロー曲が並ぶということもあり、ずいぶんマイルドな印象。「Horse of a Different Color」と比べると、バックのそれぞれの音の持つ圧力や密度が幾分下がり目で、エレキ・ギターなども軽めのサウンド。ロック・バンド、AC/DCのカバー"You Shook Me All Night Long"も軽いカントリー・アレンジになってるし。"Radio"の「ウォオ~ウ」のコーラスは、往時のJourneyのそれを思い起こさせます。二人の歌声には心なしか粘りが欠けるような・・・チョッと言いすぎかもしれませんが、リハーサルっぽくて、ミックスダウンもジックリとやってない?という感じか。つまり、忙しすぎて自身のアルバムに時間がかけれなかったんじゃないの?と。それでも素材にはヒラメキを感じるものも多く、お気軽に、スカッ!と爽快に聴ける仕上がりにしたという事かな。幻想的な展開が心にしみて美しい"Faster Than Angels Fly"、哀愁のメロディと Wyclef Jeanのラップのミックスが楽しいミディアム "Please Man"など、お薦めの曲はありますよ。まだまだカントリー界をかき回す存在として、目が離せないでしょう。おバカなポーズをとったりするユーモアセンスも、何か考えてそうで好奇心をそそります。
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