カントリー・ゴールド2008での堂々たるパワフルなカントリー・ライブが今でも記憶に新しいダークス・ベントリー。私、幸運にもインタビューする機会に恵まれ、そのカントリー・ミュージックに対する熱い思いに感激した事が忘れられません。そして今作。そのインタビューでも自身への影響の大きさを語っていた、ブルーグラス・ミュージックを基軸としたフル・アコースティック・アルバムという、メインストリーム界のスターとしてはいかにもチャレンジングな作品をリリースしました。前作「Feel That Fire」では、シングル・チャートでNo.1を獲得したいくつかのパワー・ポップ・ナンバーがフィーチャーされ、クロスオーバーへの色気も感じさせましたが、一転、カントリー・ルーツへ回帰したといったところ。ストレートなブルーグラス曲からフォーキーなバラード、スワンピーなミディアム曲と共に実験的な試みも要所で聴かれ、それでいてこれまでのダークスらしい勢いは損なわれていない、素晴らしいアルバムになっています。
このアルバムのスピリットを凝縮したと言える、オープニング・チューンでリード・シングルの"Up On The Ridge"にまず圧巻。マーティ・ロビンスのウェスタン・ソング・クラシック"Big Iron"を想起させるイントロでルーツを濃厚に感じさせつつ、そこにダンサブルなリズムをドッキングして21世紀にマッチさせています。バックは全てカントリーのアコースティック・インスト、さらに全編1コードで押し切る楽曲と、徹底的にシンプルでルーツィーなのに、このグルーブ感はさすがダークス!と言いたいですね。ロック・グループ、キング・オブ・レオンとの仕事で知られるAngelo Petragliaとダークスの共作によるコーラス・メロがナイス。もう1曲の挑戦的な話題曲が、U2の"Pride (In the Name of Love)"のカバー。マーティ・ルーサー・キング・JRを称えたアイリッシュ・ロック・バンドの曲を取り上げた事が興味深いですが、ダークスの誠実なキャラクターと歌声には合ってると思いますよ。オリジナルではギタリストのジ・エッジが奏でた印象的なリフを、ブルーグラスの各楽器が忠実にフォローしています。このアルバムは豪華ゲストが多数参加していますが、ここではブルーグラス界のベテラン、デル・マッカリーDel McCouryがコーラスで参加。ボノに負けないくらいの空高く突き抜けるような歌声を披露してくれています。白人ロック・シンギングのルーツがチラリと垣間見えるようです。エンディングでのChris Thileによるきらびやかなマンドリンも聴きもの。
デル・マッカリー
私的にはスワンプ系のミディアム"Bad Angel"がお気に入り。ミランダ・ランバートMiranda Lambertとジェイミー・ジョンソン Jamey Johnsonの2人が参加してダウンホームなリード・ボーカルを分け合っています。いつも我々にまとわりつく”誘惑”と言う名のBad Angel~タバコ、酒、そしてギャンブル~に、「Bad Angelよ。俺の肩から降りてくれないか。誘惑と救済の分かれ道に立っているところなんだから」と嘆願するこの曲で聴かせる、ミランダによる民謡歌手のようなアーシーなボーカルが素晴らしいです。同系の曲では"Fallin' For You"もいい感じ。現代的なスパイスを効かせた"Up On The Ridge"に続き、一気に聴き手をスワンピーなアパラチアのカントリー・ルーツへと引き込むのに一役かっています。ちょうど今、ローリング・ストーンズの不朽の名作「メインストリートのならず者」が、未発表曲をたっぷり追加してリイシューされて話題ですが、私にはそのアメリカ南部音楽を最良の形でストーンズ流に消化したアルバムの、アコースティック曲を集めたB面(というのはLPの話で、CDでは6~9曲目ね)の雰囲気と、ダークスの本作のイメージがダブるように感じられるのです。「ならず者」B面(LPのね)の、現代における(カントリー~ブルーグラス寄りの)進化盤が「Up On The Ridge」だ!と言ったららほめ過ぎ!?
"Rovin' Gambler""Fiddlin' Around""You're Dead to Me"、そして、クリス・クリストファーソンKris Kristofferson作でクリス自身もボーカルで参加した"Bottle to the Bottom"あたりが、オーソドックスなブルーグラス・チューン。ダークスの声はいわゆるブルーグラス的なハイトーンボイスではありませんが、その男気に溢れたバリトンボイスとブルーグラス・アンサンブルとのミックスは、まろやかでコクのある響きとなり個性的なダークス・サウンドが生まれています。ボブ・ディランのカバー"Señor (Tales of Yankee Power)"もこの手のアレンジで聴かせてくれます。アリソン・クラウスAllison Kraussがハーモニーでエンジェル・ボイスを聴かせる"Draw Me A Map"は、滑らかなフィドルが印象的で、アルバムの中程で和みの時を提供します。そしてラストを締めくくる"Down in the Mine"は、アパラチア鉱山での炭鉱夫の荒涼とした生を歌ったカントリー・バラード。カントリー・ミュージックが生まれる温床となった、厳しく常に死と隣り合わせの生活を、ダークスは見事な描写で描き、切々と歌い上げています。「鉱杭の中で、涙は泥に変わる。肺は埃にまみれ、息すら出来ない。けして日が入らない場所で、ヒルビリーの金を運ぶ。24時間、自分の墓を掘るのだ。鉱杭の中で」この厳しい人生を耐え忍び、その中でカントリー・ミュージックの礎を築いてくれた先達に対する、哀悼と感謝の思いを最後に綴ることで、アルバムを美しく締めくくっているのです。
●ダークスのMySpaceサイトはコチラ●
このアルバムのスピリットを凝縮したと言える、オープニング・チューンでリード・シングルの"Up On The Ridge"にまず圧巻。マーティ・ロビンスのウェスタン・ソング・クラシック"Big Iron"を想起させるイントロでルーツを濃厚に感じさせつつ、そこにダンサブルなリズムをドッキングして21世紀にマッチさせています。バックは全てカントリーのアコースティック・インスト、さらに全編1コードで押し切る楽曲と、徹底的にシンプルでルーツィーなのに、このグルーブ感はさすがダークス!と言いたいですね。ロック・グループ、キング・オブ・レオンとの仕事で知られるAngelo Petragliaとダークスの共作によるコーラス・メロがナイス。もう1曲の挑戦的な話題曲が、U2の"Pride (In the Name of Love)"のカバー。マーティ・ルーサー・キング・JRを称えたアイリッシュ・ロック・バンドの曲を取り上げた事が興味深いですが、ダークスの誠実なキャラクターと歌声には合ってると思いますよ。オリジナルではギタリストのジ・エッジが奏でた印象的なリフを、ブルーグラスの各楽器が忠実にフォローしています。このアルバムは豪華ゲストが多数参加していますが、ここではブルーグラス界のベテラン、デル・マッカリーDel McCouryがコーラスで参加。ボノに負けないくらいの空高く突き抜けるような歌声を披露してくれています。白人ロック・シンギングのルーツがチラリと垣間見えるようです。エンディングでのChris Thileによるきらびやかなマンドリンも聴きもの。
デル・マッカリー
私的にはスワンプ系のミディアム"Bad Angel"がお気に入り。ミランダ・ランバートMiranda Lambertとジェイミー・ジョンソン Jamey Johnsonの2人が参加してダウンホームなリード・ボーカルを分け合っています。いつも我々にまとわりつく”誘惑”と言う名のBad Angel~タバコ、酒、そしてギャンブル~に、「Bad Angelよ。俺の肩から降りてくれないか。誘惑と救済の分かれ道に立っているところなんだから」と嘆願するこの曲で聴かせる、ミランダによる民謡歌手のようなアーシーなボーカルが素晴らしいです。同系の曲では"Fallin' For You"もいい感じ。現代的なスパイスを効かせた"Up On The Ridge"に続き、一気に聴き手をスワンピーなアパラチアのカントリー・ルーツへと引き込むのに一役かっています。ちょうど今、ローリング・ストーンズの不朽の名作「メインストリートのならず者」が、未発表曲をたっぷり追加してリイシューされて話題ですが、私にはそのアメリカ南部音楽を最良の形でストーンズ流に消化したアルバムの、アコースティック曲を集めたB面(というのはLPの話で、CDでは6~9曲目ね)の雰囲気と、ダークスの本作のイメージがダブるように感じられるのです。「ならず者」B面(LPのね)の、現代における(カントリー~ブルーグラス寄りの)進化盤が「Up On The Ridge」だ!と言ったららほめ過ぎ!?
"Rovin' Gambler""Fiddlin' Around""You're Dead to Me"、そして、クリス・クリストファーソンKris Kristofferson作でクリス自身もボーカルで参加した"Bottle to the Bottom"あたりが、オーソドックスなブルーグラス・チューン。ダークスの声はいわゆるブルーグラス的なハイトーンボイスではありませんが、その男気に溢れたバリトンボイスとブルーグラス・アンサンブルとのミックスは、まろやかでコクのある響きとなり個性的なダークス・サウンドが生まれています。ボブ・ディランのカバー"Señor (Tales of Yankee Power)"もこの手のアレンジで聴かせてくれます。アリソン・クラウスAllison Kraussがハーモニーでエンジェル・ボイスを聴かせる"Draw Me A Map"は、滑らかなフィドルが印象的で、アルバムの中程で和みの時を提供します。そしてラストを締めくくる"Down in the Mine"は、アパラチア鉱山での炭鉱夫の荒涼とした生を歌ったカントリー・バラード。カントリー・ミュージックが生まれる温床となった、厳しく常に死と隣り合わせの生活を、ダークスは見事な描写で描き、切々と歌い上げています。「鉱杭の中で、涙は泥に変わる。肺は埃にまみれ、息すら出来ない。けして日が入らない場所で、ヒルビリーの金を運ぶ。24時間、自分の墓を掘るのだ。鉱杭の中で」この厳しい人生を耐え忍び、その中でカントリー・ミュージックの礎を築いてくれた先達に対する、哀悼と感謝の思いを最後に綴ることで、アルバムを美しく締めくくっているのです。
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僕はそもそもこちら方面は明るくなく(カントリーのアルバムは年1、2枚買う程度)、Dierksもチャートでよく見かけるので名前はよく知ってましたが「イケメンの中堅カントリー歌手」程度で曲の印象がありませんでした。今回はあまり売れてないのかと思ったらこんなチャレンジングな作風だったんですね!5年前のNickel Creekのラストアルバムが好きだったのでそれを思い出してたんですがきっちりChris Thileが参加してますね(笑)。個人的に今年のベストアルバム候補になりそうです。
カントリーに疎いからこそ少しでもいい曲が見つかるようにこれからもお邪魔しようと思います。別記事の話になりますが、Zac Brown Bandの新作は内容もですがどれくらいのセールスを叩きだすかでも楽しみですね。
僕はそもそもこちら方面は明るくなく(カントリーのアルバムは年1、2枚買う程度)、Dierksもチャートでよく見かけるので名前はよく知ってましたが「イケメンの中堅カントリー歌手」程度で曲の印象がありませんでした。今回はあまり売れてないのかと思ったらこんなチャレンジングな作風だったんですね!5年前のNickel Creekのラストアルバムが好きだったのでそれを思い出してたんですがきっちりChris Thileが参加してますね(笑)。個人的に今年のベストアルバム候補になりそうです。
カントリーに疎いからこそ少しでもいい曲が見つかるようにこれからもお邪魔しようと思います。別記事の話になりますが、Zac Brown Bandの新作は内容もですがどれくらいのセールスを叩きだすかでも楽しみですね。