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安倍政権、悪行の軌跡:派遣法改悪

2015-11-06 16:18:42 | 安倍政権、悪行の軌跡
 安倍政権の過去の悪行を振り返るシリーズとして、今回は派遣法改悪について書く。
 派遣法のことについてはもうあちこちで批判されていて特に付け足すこともないので、ここではそれらをまとめ的に書いておこう。

 まず、派遣が固定化されるという懸念がある。
 3年間という期限が設けられるわけだが、人を変えれば同じポストをずっと派遣にしておいてもいいということになっていて、全体でみればむしろ派遣労働が固定化され、非正規雇用の境遇から脱け出すことができない労働者が増えるという懸念がある。社会人としてのスタート時点で正社員になれなかった人は、それから3年スパンで延々と派遣のポストを渡り歩くことになる可能性が高い。
 そして、正社員にするように働きかけるというルールについても、実効性が疑問視されている。あくまでも派遣元がそのように要請する義務があるというだけであり、企業の側がそれに応じて派遣労働者を正社員にする義務はない。景気がよければ正社員にしてもいいとなるかもしれないが、景気が悪ければ、そんな余裕はないと断るだろう。それでは、派遣という雇用形態の不安定性はまったく解消されない。

 そして問題は、単に派遣労働という不安定な雇用形態に追いやられる人が増えるというだけではない。
 相対的に収入が低い派遣労働者の増加は、全体的な購買力を低下させ、経済にとってマイナスとなる。GDPの6割は個人消費とされるが、その個人消費が伸び悩むことになるのだ。というか、「派遣労働の増加によって消費が落ち込む」というのは、すでに現実のものになっているという指摘もある。それが日本に慢性的なデフレ基調を定着させ、「好況」とされる時さえそれが実感されない原因になっているとも考えられる。だとすると、派遣法の改悪によってその傾向がさらに進めば、日本の経済は今後いよいよ低迷していく危険がある。
 さらに、これは人口問題にもつながってくるおそれがある。派遣労働という状態では結婚・出産したくともなかなかそこに踏み切れないという人も相当数いるだろう。そうすると、少子化傾向にさらに拍車をかけることにもなる。デフレの元凶は少子化・人口減少という指摘もあるわけだが、そういう観点にたてば、派遣労働者の割合が増加することは、少子化を通じてデフレ傾向を推し進めるということにもなりかねない。
 つまり、派遣労働の固定化は、「個人消費を低迷させる」「少子化を進める」という点で、二重に経済を地盤沈下させるということになる。

 このようにさまざまな問題が指摘されていながら、安保法案の陰で、ろくに議論もしないままに派遣法は改悪されてしまった。
 たしかに、目の前の数年ぐらいの単位で考えれば、それは企業にとって有利なことなのかもしれない。それによって、企業の業績はよくなるかもしれない。だが、長期的にみれば派遣労働者の増加は経済全体を縮小させ、やがてそれは企業の業績にもはね返ってくるのである。ここには、あるプレーヤーのある時点での最善の行動が、必ずしも全体にとって最大の利益ではなく、しかも長期的には自分の利益も逓減させることになる――というゲーム理論的な状況がある。ゲーム理論的な最適解というのは、しばしばいまの一時点だけからみると不利益・非合理的にみえるものなのだ。短期的な利益のことに目を奪われがちな企業の行動ではそうした最適解にはたどりつけないから、公的な機関がそれをルール化する必要がある――と私は考える。
 最近厚生労働省が発表した調査によれば、非正社員ははじめて4割の大台に乗ったということだが、この傾向にどこかで歯止めをかけなければ、日本の経済は縮小していく一方だろう。それを防ぐためには、短期的には企業に不利であっても、派遣労働をタイトに制限していくことこそが必要だったのではないか。
 目先の企業の利益だけを優先して、長い目で見れば社会全体を停滞させる、あるいは社会全体に大きなリスクを負わせる――そういう視野のせまい政策が、安倍政権には非常に多いように思われる。原発再稼働もそうだし、アベノミクスそのものもそうだといえるかもしれない。まさに、「洪水はわがなきあとにきたれ」というやつで、そのツケは、将来世代の国民が払わされることになるのだ。

安倍政権、悪行の軌跡:辺野古新基地建設

2015-10-16 21:05:12 | 安倍政権、悪行の軌跡
 当ブログでは、安倍政権の過去のさまざまな横暴の記憶を風化させないようにということで、ときどきそれらをまとめ的に特集している。
 その一環として、今回は、沖縄の辺野古新基地建設問題をとりあげたい。
 普天間基地移設をめぐる問題は政府と沖縄側の激しい対立が続いているが、先日、沖縄の翁長知事は、とうとう埋め立て承認取り消しに踏み切った。政府の側もこれに対して不服を申し立て、沖縄側は法廷で争うとみられている。いよいよ基地問題は法廷闘争にまでもつれこむ勢いである。

 この辺野古新基地をめぐって、沖縄ではいまも熾烈な反対運動が起きている。
 運動は、座り込みや、カヌーで海上に漕ぎ出しての阻止行動など多岐にわたるが、それに対して、先月、沖縄の基地移設反対運動のテントが襲撃されるという事件もあった。20人ほどの集団が、「米軍がいなくなったら中国が攻めてくるぞ」などといいながら襲撃してきたという。この件は、事態をよくあらわしていると思う。本当に危険なのは、外にいる敵ではなく、こちら側にいる好戦的な人間だ。
 前回の記事で書いたが、かつての南ベトナムは、駐留している米軍が勝手に戦争を起こし、その戦争に敗れて国が消滅してしまった。
 歴史を見てみれば、中国が攻めてくるとかいうことよりも、むしろ、心配するべきなのはそういうことなのだ。「中国が攻めてくるぞ」などといいながら自分の国の同胞を襲撃するような者たちがいることこそが問題なのである。

 この基地問題に関しては、米側は本音では県外でもかまわないと考えているのに、むしろ日本側が辺野古に固執しているという疑念も根強くささやかれているわけだが、その真偽がどうであれ、政府の側が沖縄県民の声を聞くつもりがないことはあきらかである。それは、政府関係者の発言を聞いていればよくわかる。
 菅官房長官などは、沖縄が何をしようがあくまでも工事を進めるという姿勢を表明しているが、彼らのこのような姿勢は、いまにはじまったことではない。
 たとえば、2013年に、小池百合子元防衛相が「自分たちが戦っているのは、沖縄のメディアだ」という発言をしている。「戦っているのは沖縄のメディア」――これが彼らの認識である。
 沖縄が強く反対しているのは、左翼メディアが沖縄県民を洗脳しているから……そのように言い募ることで、自分たちを正当化しているのだ。こういう姿勢が、あの「文化芸術懇話会」での「マスコミを懲らしめる」発言にもつながっている。

 本土に住んでいる人間も、この基地問題をもっと切実な問題として考えるべきである。
 政府がいま沖縄に対してやってるようなことを許せば、自分の住んでいる町も、いつ同じような目にあうかわからない。このようなことがまかりとおれば、いつか、国が勝手にあたなの町に迷惑施設を建設して、「反対意見はいっさい聞きません」と言い出すかもわからないのだ。そうさせないためには、この辺野古新基地のようなことが既成事実化されるのを許してはならない。

安倍政権、悪行の軌跡:特定秘密保護法

2015-09-27 19:51:24 | 安倍政権、悪行の軌跡
 以前、このブログで、安倍政権の過去の悪行を振り返ろうというキャンペーンをやっていた。
 なにしろ安倍政権というのは、次々に無茶苦茶なことをやるので、ともすれば過去の悪行が“風化”してしまいかねない。そこで、この政権が過去にどんなことをやってきたかというのを、折に触れて思い出しておく必要がある。
 その一環として、今回は特定秘密保護法について書く。この問題については一度本ブログで取り上げているのだが、おさらいとして、まず、その部分を再掲しておく。


《この法案が国会で審議されていた2013年秋ごろにメディアで問題とされたことを、以下にいくつか列挙する。


①どこまでが“特定秘密”に含まれるかがはっきりせず、拡大解釈される可能性が高い。
②メディアが取材しづらくなり、結果として国民の知る権利が侵害されるおそれがある。特にフリージャーナリストは活動しづらくなると思われる。
③「教唆」だけで罪が成立し、それが特定秘密にあたるかどうかも知らずになにげなく質問しただけで罪に問われかねない。
④石破茂幹事長(当時)がブログで法案へ反対するデモを「テロ行為」と呼んで問題視されたが、つまるところ政府与党には、「秘密保護」に名を借りて反対意見を封殺しようという意図があるのではないか(石破氏は問題の発言を撤回しているが、これは彼の考え方を表明したものであり、発言を撤回したとしてもそこに表れている彼の思想をなかったことにするものではないと私は考える)。
⑤各種世論調査をみても、反対の人が多い。
⑥特定秘密に指定された情報を取り扱うことになる責任者へは適正評価が行われるが、これによってプライバシーが侵害されるおそれがある。

 ……などである。なかでも①の点がもっとも問題にされるところだと思うので、この点をもう少し掘り下げてみたい。
 本当に特定秘密は拡大解釈されないのか。そのための合意はできているのか。これが、はなはだあやしい。この法案が審議された2013年秋の臨時国会では、あるとき自民党の小池百合子衆院議員が「首相動静は知る権利を超えている」といい、後に菅官房長官が「特定秘密にはあたらない」と指摘。また、法案の担当大臣である森雅子特定秘密保護法担当相は、TPP交渉に関する情報が特定秘密にあたるかを問われて「私が判断できない」と答えるなど、政府与党内部でも見解がちぐはぐである。ちなみに担当大臣である森氏に関しては、その後「食品の安全」も特定秘密になるかもしれないなどとも発言している。食品の中にテロリストが毒物を入れるというような情報がある場合、テロ対策として特定秘密になるかもしれないというのである。この発言ひとつとっても、特定秘密なるものがいくらでも恣意的に拡大解釈できるものであることがわかるだろう。繰り返しになるが、石破茂氏にとってデモはテロ行為なのである。
 また、ちょうどその頃ニュースになった話として、海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」でのいじめ自殺裁判でその証拠となる文書が隠蔽されていたという一件があった。いじめの存在を示す内部調査資料が存在していたにもかかわらず、遺族の情報公開に対して「破棄した」と嘘をついて隠していたのである。これなども、このような隠蔽体質を持った組織によって「特定秘密」が拡大解釈されるおそれを現実の出来事として示したものと考えられる。ちなみにこの文書の存在を内部告発した3等海佐に対して、防衛省は一時懲戒処分をくだそうともしていた。このような組織が、特定秘密を担うことになるのである。
 こうした一連の批判・懸念に対して安倍首相は「秘密の範囲が広がることはない」「一般国民が巻き込まれることはない」というようなことをいっているのだが、これらの発言に関しても、いったい何の根拠があってそんなことを言い切れるのかという批判が巻き起こった。
 私もまた、安倍首相がそう請合ったところで、信じる気にはまったくなれない。
 そもそも、この総理はできもしないことを軽々しく「やります」と約束する癖がある。その一つの例として――これもまた古い話になるが――2007年にもちあがった年金記録問題がある。このときが第1次安倍政権にあたっていたのだが、このいわゆる“宙に浮いた年金”問題で安倍首相は、納付者が特定できない約5000万件について「最後のお一人にいたるまでチェックしてきちんと年金をお支払いしていく」と述べた。本当にそんなことが可能なのかと多くの人が疑ったと思うが、それから7年が経ち、やはり不可能であることが明らかになっている。この件について社会保障審議会が去年一月に報告書を出しているのだが、その報告によれば「最後のお一人にいたるまで」どころか、2000万件以上が未解明のままで残されており、そのうえで報告書は《「すべての人の年金記録について100%完全な回復」がなされることは、まず不可能という現実を踏まえておく必要がある。》と指摘している。つまり安倍首相は現実を踏まえない実現不可能な約束をしていたわけだ。
 そしてもう一つ、これはわりかし最近の話だが、国会議員の定数削減問題がある。2012年の臨時国会で安倍氏は、自民党総裁として当時の野田首相に対して議員定数削減を約束している。このやりとりは、はっきりと映像としても記録されている。それが実現されていないじゃないか――というのが、選挙の前に報道番組などで取り上げられた。これに関して当の安倍総理は、自分は「自民と民主だけでは決められないけれど」ということをいっておいた、その部分がカットされている、などと逆ギレしていたが、本当にそれは言い訳になるのか。ごく普通に考えて、自民と民主だけで決められないというのなら、その両者の間だけで「約束します」ということ自体がおかしくないか。本当にそう思っているのなら、約束しますとはいわずに、「あなたと私の間だけでは決められませんから、約束はできません」というべきである。できないとわかっていながら約束するということ自体、きわめて無責任で、口先だけと批判されてもやむをえまい。こういった無責任な約束をする“前科”があるから、問題の特定秘密保護法に関しても、安倍首相がいくら懸念されるような事態は起きないと言い張ったところで、私はそれを信頼する気にはなれないのである。
 そしてここで、特定秘密保護法が成立した直後の朝日新聞の記事の一部を引用しておこう。
 《秘密保護と知る権利を調整する国際指針「ツワネ原則」の採択を主導した米国の「オープン・ソサエティー財団」は6日、特定秘密保護法の中身は国際基準にほど遠いとして深い憂慮を示す声明を出した。また、同財団の上級顧問で元米政府高官のモートン・ハルペリン氏は「21世紀に民主国家で検討されたもので最悪レベルのもの」と強く批判した。》
                                                (本ブログ1月3日の記事「狼は足跡を隠す」より)

 
 いうまでもないことだが、特定秘密保護法は、今回の安保法制の問題とも深く関連している。
 政府は国会審議において「総合的判断」という言葉を繰り返し使ったが、もっとも肝心な情報が特定秘密としてブラックボックス状態のままで、その「総合的判断」が下されてアメリカが遂行する侵略的な戦争に加担することになる可能性が否定できない。そういう意味で、特定秘密保護法もまた、今後につながっていく重大な問題なのである。
 また、この記事中で、安倍総理の“できもしないことを軽々しく「やります」と約束する癖”について書いたが、この癖は今夏の安保国会でもフルに発揮された。安倍総理の軽々しい断言があてにならないことは、過去の事例がはっきり証明している。われわれ有権者は、将来世代に対する責任として、このようないい加減な政権を排し、でたらめな法は廃止に追い込まなければならないのである。