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パク・クネ大統領、辞任は不可避か

2016-11-30 19:26:44 | 海外
 韓国のパク・クネ大統領が、いよいよがけっぷちに立たされている。
 大統領府である青瓦台には、100万を超すともいうデモ隊が押し寄せ、さしものパク大統領も、記者会見でついに辞任の意思があると口にした。
 これについては、あえてみずから辞任の意思もあることを示すことによって弾劾を避けようという意図があるともみられているが、それが真意だとしても、結局辞任を少し先延ばしすることにしかならないだろう。

 最近当ブログでは海外ネタをいくつか扱っているが、その延長として今回は日本にもっとも近い隣国である韓国について書く。

 韓国という国は、30年ぐらい前までは軍事独裁国家だった。
 その大統領職はまるで呪われた椅子で、任期途中で失脚したり、現大統領の父であるパク・チョンヒのように暗殺されたりと、イレギュラーな形でその座を追われることが多かった。青瓦台はアメリカのホワイトハウスをもじって「ブルーハウス」と呼ばれたりもするが、死亡した例をのぞけばホワイトハウスを任期途中で去ったのはリチャード・ニクソンただ一人であるのに対して、軍政時代のブルーハウスでは任期をまっとうするのがまず難しいという状態だった。民主化時代の大統領であるノテウにして「はじめて無事に青瓦台を出た」といわれたほどである。
 そして民主化後も、大統領をやめた後に醜聞がもちあがって司直の手にかかったりしている。そういう歴史の延長線上としての、いまのパク政権の惨状であり、韓国という国は今でもまだ非民主的な軍政時代の残滓を引きずっているのだなあと感じさせられる。

 韓国にこのような状況があれば、もちろん日本にとってもよくない影響がある。
 なにしろ密接な関係にある隣国だから、政治・経済・安全保障など、その悪影響は広範囲にわたるだろう。しかも、弾劾になるにせよ、パク大統領みずから辞任となるにせよ、混乱は長期化しそうな情勢だ。

 それにしても、韓国のデモの激しさには驚かされる。
 これもまた、波乱に満ちた韓国政治史のなかで形作られたものだろう。韓国では初代大統領のイ・スンマンからして任期途中で辞任しているのだが、彼を辞任に追い込んだのは、“4月革命”と呼ばれる大衆運動だった。イ政権の独裁体制と腐敗体質に怒った大衆が決起し、100人以上の死者を出す激しい抗議運動の末に大統領を辞任に追い込んだのである。
 また、それから20年後、パク・チョンヒ暗殺後にクーデターで実験を握ったチョン・ドファンに対しても、民主化を求める激しい運動が起きた。“韓国の天安門”とも呼ばれる光州事件である。このときは、アメリカでいえばグリーンベレーに相当するといわれる韓国軍の特殊部隊「第7空挺部隊」が出動したが、この「韓国軍最強」の部隊を相手に市民は多くの犠牲を出しながらも民主化のための抵抗運動を続けた。鎮圧の後も民主化運動の火が完全に消えることはなく、それが90年代の民主化につながっていく。
 このように韓国には、軍隊が乗り出して弾圧してきてもあくまでも抵抗する強力な民衆運動の歴史がある。
 その激しさには、たしかに度を超していると思えるような部分も見えて一長一短あるだろうが、それが実際に独裁的な大統領を退陣に追い込んだという実績もある。為政者の腐敗や強権的政治を徹底的に糾弾するというところは日本もちょっとみならったほうがいいんじゃないか――青瓦台の前に集結したすさまじい人数のデモを見ていると、そんなことも思わされる。


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