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笑って、おどけて / ワンダフル・ワールド

2004年09月06日 22時59分44秒 | about him
 にちようびは、夕方から、新宿へ。 ..................................................

 友人 (というか彼) も、私も、ちょうど、新宿に用事があったのだ。

 人ごみがあまり好きでない彼といっしょのときは、あまり新宿に来ることはないのだが。

 こういうときこそ、とばかりに、お互いにさまざまな用事をこなした。

 私は、お絵描きソフトを見て回ったり、愛用していた台所用品が壊れてしまっていたので、東急ハンズであたらしいものを買い求め、高島屋でかねてからほしかったスカーフを購入した。

 彼は、電気店に修理に出していた CD ウォークマンを受け取り、楽器屋でギターの弦を買い ... 、

 そのあと、CD を買いに行きたい、と言い出した。

 私が、ごくふつうに、「なに買うの?」 と訊いたら。

 「ん? いやさあ。 ユミがさあ、さいきん、悩んでるみたいだって、話したじゃん」

 「うん」

 (ちなみに、「ユミちゃん」 とは、 彼の 「七番目の女(の子)」 (?) のこと。 便宜上、仮名で、ここではそう呼ぶことに)

 「どうやら、かなり深刻に悩んでるみたいなんだよ」

 「恋の悩みだったっけ?」

 「いや、そういうんじゃなくてさ、ユニットのことで、いろいろあるらしいよ」

 私たちの音楽仲間のひとりであるユミちゃんは、キーボード奏者の女の子と二人組みで、歌をうたっているのである。

 話を聞くと、ユミちゃんは、キーボードの女の子と、いま、どうやらしっくり行っていないらしい。

 「女ふたりってのは、たいへんみたいだよな」

 「 ... う~ん。 そうだね。 こじれると、いろいろややこしくなるかも」

 「でさ、すごく落ち込んでるんだよ。 これから、ブッキングがいっぱい入ってるのに」

 ユミちゃんのグループは、ついさいきんテレビに出たとかで、ちょうど、勢いに乗って、どんどんライヴ活動をしていこうとしているところなのである。

 (私は、このテレビ出演が、ユニット間の不和のきっかけのひとつなのかな ... と想像しているのだが)

 「でさ、落ち込んでるときは、『いい歌でも聴いて、元気出せや』 って、なんか CD でもプレゼントしてやろうかね、と思ってさ」

 う~ん。 彼らしい発言。 ほんとうに、世話好きで、面倒見のいい、みんなの、やさしいやさしいお兄ちゃん。

 そう。 みんなに、やさしいのだ ... 。



 そうして、いざ、タワー・レコードに向かい、ふたりで、新宿の街並みを歩いていたら。

 彼が、

 「いや、さあ、ローウェル・ジョージっているじゃん? あいつがさあ、ヴァレリー・カーターに、『きみは、一年間、ひたすらこれを聴き続けろ』 って言って、アル・グリーンのアルバムを渡したんだってさ。 その言いつけを守って、ヴァレリー・カーターは、毎日アル・グリーンを聴いて、それでシンガーとして成長したんだって (* 注1)。 いい話だよなあ。 おれもさ、それを、真似してみたかったのよ」

 と、言った。

 もしかすると、私が、ちょっと気にしていると思って、そんなことを言ったのかもしれない。

 「ふうん、じゃあ、アル・グリーンのアルバムをあげるの?」

 「いや、サム・クックをやろうと思ってさ。 おれは、サム・クックを通過していないシンガーはだめだと思ってるからさ」



 そうして、タワー・レコードの Sam Cooke コーナーで、ああでもない、こうでもないと物色。 いきなり三枚組み CD なんかをあげると重すぎるので、あまりヴォリュームのありすぎない、無難な選曲のベスト盤を購入していた。

 私は、私で、人が CD を物色していると、なぜかじぶんも欲しくなってきて、「わたしも、なにか買おうかな」 と、ふと、つぶやいた。

 「なに買うの?」 と、彼が訊いてくる。

 私は、先日いっしょに観た、ブルースの映画のサウンドトラックを買おうかな、とこたえた。

 じつは、私は、サウンドトラックも好きなのである。

 「あれ、良かったよなあ。 サントラ、出てんのかねえ。 よし、ちょっと見に行ってみるか」

 そうして、サウンドトラック コーナーへ向かったのだが。

 ぱっと見た感じ、見当たらなくて。 きっと、売り切れてしまったのかな、なんて考えていたら。

 彼が、「あっ!」 と叫んだ。 声が大きいので、こっちがびっくりしてしまう。

 「あったよ、これだよ!」

 「あ、ほんとだあ。 わあい」 と、早速、その CD をもらって、レジへ直行しようとしたら。

 「ちょっと待て。 これは、おれが見つけたんだから、おれが買う!」

 ええ~! なんてことかしら!

 「もう一枚ないの?」

 「これ、一枚しかない。 へっへーん、おれのもんだからな」

 うえ~ん。 しどい!

 「じゃあ、今度、それ、MD にダビングしてね」

 「やだ」

 「ふぬぁ! けちんぼ!」

 なんて、会話を交わしていたのだが ... 。



 彼が、会計を済ませた商品を、私に、ぽんと手渡した。

 私が、彼の顔を見ると。

 「いや、ユミに CD 買ってやって、おまえに買ってやらないのは、おかしいだろ?」

 一瞬、なんのことかわからない。

 「?*$!」

 「だから、ぷれぜんと・ふぉー・ゆー、だよ!」

 と、彼は、照れくさそうに言った。

 私が、あまりにびっくりして、「わーん、どうして?!」 と言ったら、

 「いらねえなら、いますぐ、捨てちまえ! ほら、いますぐ!」 なんて、怒り出す始末 ... 。

 ほんとうに、くれたばかりの CD を奪って、床に叩きつけるふりまでして ... 。

 結局、(いろんな意味で) 半泣きで、ありがたく頂戴した。





 彼というのは、こういう人なのだ。

 だから、彼を慕う人が、あとを絶たないのかもしれない、と思った。





 アリガト。










 * ちなみに。 「七番目の女の子」 とかいうのは、もちろん冗談で言っているだけなのです (たぶん)。





 BGM:
 Sam Cooke ‘I'm so Glad (Trouble Don't Last Always)’

コメント (14)
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