私には、兄が四人いるのだが、その、四番目の兄が、今日、泊まりに来るというので、いったい、何が起こるのだろう ... と、ちょっとどきどきしているのである。
ん? なにを言っているの? と思われるかもしれないので、私の兄について、ちょっと語ってみることに ... 。
私の四番目の兄は、私の一歳年上。 四番目ともなると、己が道を突き進む性格となってしまうのか、かなり自由奔放な人。
半年から一年単位で、南米だの、タイだの、バリだのを、ふらふらしていたこともあったりして、ほんとうに、マイペースで、じぶんらしく生きている。
半年以上まえの話だが。
私が、いつも DJ をやらせてもらっているお店ではないところから、たまたま声がかかって、はじめてのお店で回すことになったとき、兄が、観に来てくれたことがあった。
もともと、音楽が好きな人だし、タイに行ってから 踊るのが大好きになってしまったらしく (タイの人は、踊り好き!)、とてもたのしみにして、わざわざ遠くから足を運んでくれたのだ。
その日は、ロック / パンクのイベントで、DJ は総勢五人。 みんなで、ロックでがんがんに盛り上がろう! という趣旨だったのだけど。
そのお店が、ちょっと辺鄙な場所にあったのと、深夜十二時からのオールナイト イベントであったのと、お天気が雨模様だったのと ... その他もろもろの事情があって、お客さんが、ぜんぜん入らない夜だった。
いちおう、私は、友人 (というか彼) も観に来てくれて、兄も含めて、二人、お客さんを呼べていた。 でも、きっと、二人しか呼んでいない DJ なんて、私だけだろうな ... なんて思っていたら。
ほかの DJ がだれもお客さんを呼んでいなかった!
お客さんは、私の彼と、兄のみ!
どうしよう ... なんて思いつつも、イベント開始。
一人目の DJ が、まずは、ゆったりと曲をかけはじめる。
なかなかいい感じの選曲だったのだけど、いかんせん、お客さんがいないため、フロアがさむい ... 。
私が、今夜、だいじょうぶかなあ ... なんて考えていたら、兄が、
「あれ? なんでだれも踊らないの?」 なんて言い出して、ふらあ~っと、踊りはじめた。 タイ仕込みの、太極拳ふうな(?)独特の踊り。 う~ん、音楽に合っていないような??
でも、だれも踊っていないよりは、ぜんぜん、ましだ。
そもそも、踊りなんて、じぶんの踊りたいように踊ればいいのだものね。
うん。 好きなように、踊ってくれい。
そんなふうに思いながら、私は、兄をじっと、見守っていた。
(兄は、体が弱いのにもかかわらず、酒呑みなので、ちょっと心配なのだ ... )
そうして、二番目の DJ のときも、三番目の DJ のときも、ふらあ、ふらあ、と踊っていた。
四番目の私のときは、私がはげしめの曲をかけたので、熱くなってしまったみたいで、むちゃくちゃになって踊りまくっていた。 うふふ。 変な踊り! でも ... ありがとう。 なんて、こころのなかでつぶやいた。
兄妹って、いいな。
兄は、最後の DJ のときも、ふらあ~っと踊っていた。
約四時間、踊りっぱなし!
「いやあ~、たのしいねえ。 いや、ほんとに気持ちいい!」 なんて言って、満足げな様子だったので、私は、ほっとしていた。
そして、世が明けて、イベント終了。 イベントとしては、きっと、失敗であろう。 しかし、仕方がない ... 。 こんな日もあるさ。
みな、無言で片づけをはじめた。
兄の姿がなくて、ちょっと心配だったのだが、きっと、煙草でも吸いに行っているのかな、と思って、私も無言で、荷物をまとめていた。
DJ をやっていたひとりが、ぽつん、と、
「なんかさあ、ひとりで、ずーっと、踊ってる人、いたよな」 とつぶやいたら、
「うん、すげえ、キモかった」
なんて言い出す人がいて、内心、ぴくり、と きたのだけど。 十八、九くらいの若者だから、まあいいや、と放っておくことにした。
そうしたら、それを聞いた、私の彼が、
「あんたの DJ のときにも、踊ってくれたんじゃん。 感謝こそすれ、そういう言い方はないだろ!」
と言ってくれて。
ああ! 彼という人は、なんというやさしさと、男気があるのだろう ... 。
ほんとうに、ほんとうに、うれしかった。
それにひきかえ、妹の私は ... 。
お兄ちゃん、ごめんなさい ... 。
そんなことを思い出しながら、兄を待つ、午後。
今宵も、どこかに踊りに行きたい ... なんて言い出したら、どうしよう? ... なんてね。
BGM:
Bruce Springsteen ‘夜の精 / Spirit in the Night’
(今日、九月二十三日は、Bruce さんのお誕生日 ... )
(リンク先は、記念すべき、デヴュー・アルバム。 いちばん好きな作品 ... )
ん? なにを言っているの? と思われるかもしれないので、私の兄について、ちょっと語ってみることに ... 。
私の四番目の兄は、私の一歳年上。 四番目ともなると、己が道を突き進む性格となってしまうのか、かなり自由奔放な人。
半年から一年単位で、南米だの、タイだの、バリだのを、ふらふらしていたこともあったりして、ほんとうに、マイペースで、じぶんらしく生きている。
半年以上まえの話だが。
私が、いつも DJ をやらせてもらっているお店ではないところから、たまたま声がかかって、はじめてのお店で回すことになったとき、兄が、観に来てくれたことがあった。
もともと、音楽が好きな人だし、タイに行ってから 踊るのが大好きになってしまったらしく (タイの人は、踊り好き!)、とてもたのしみにして、わざわざ遠くから足を運んでくれたのだ。
その日は、ロック / パンクのイベントで、DJ は総勢五人。 みんなで、ロックでがんがんに盛り上がろう! という趣旨だったのだけど。
そのお店が、ちょっと辺鄙な場所にあったのと、深夜十二時からのオールナイト イベントであったのと、お天気が雨模様だったのと ... その他もろもろの事情があって、お客さんが、ぜんぜん入らない夜だった。
いちおう、私は、友人 (というか彼) も観に来てくれて、兄も含めて、二人、お客さんを呼べていた。 でも、きっと、二人しか呼んでいない DJ なんて、私だけだろうな ... なんて思っていたら。
ほかの DJ がだれもお客さんを呼んでいなかった!
お客さんは、私の彼と、兄のみ!
どうしよう ... なんて思いつつも、イベント開始。
一人目の DJ が、まずは、ゆったりと曲をかけはじめる。
なかなかいい感じの選曲だったのだけど、いかんせん、お客さんがいないため、フロアがさむい ... 。
私が、今夜、だいじょうぶかなあ ... なんて考えていたら、兄が、
「あれ? なんでだれも踊らないの?」 なんて言い出して、ふらあ~っと、踊りはじめた。 タイ仕込みの、太極拳ふうな(?)独特の踊り。 う~ん、音楽に合っていないような??
でも、だれも踊っていないよりは、ぜんぜん、ましだ。
そもそも、踊りなんて、じぶんの踊りたいように踊ればいいのだものね。
うん。 好きなように、踊ってくれい。
そんなふうに思いながら、私は、兄をじっと、見守っていた。
(兄は、体が弱いのにもかかわらず、酒呑みなので、ちょっと心配なのだ ... )
そうして、二番目の DJ のときも、三番目の DJ のときも、ふらあ、ふらあ、と踊っていた。
四番目の私のときは、私がはげしめの曲をかけたので、熱くなってしまったみたいで、むちゃくちゃになって踊りまくっていた。 うふふ。 変な踊り! でも ... ありがとう。 なんて、こころのなかでつぶやいた。
兄妹って、いいな。
兄は、最後の DJ のときも、ふらあ~っと踊っていた。
約四時間、踊りっぱなし!
「いやあ~、たのしいねえ。 いや、ほんとに気持ちいい!」 なんて言って、満足げな様子だったので、私は、ほっとしていた。
そして、世が明けて、イベント終了。 イベントとしては、きっと、失敗であろう。 しかし、仕方がない ... 。 こんな日もあるさ。
みな、無言で片づけをはじめた。
兄の姿がなくて、ちょっと心配だったのだが、きっと、煙草でも吸いに行っているのかな、と思って、私も無言で、荷物をまとめていた。
DJ をやっていたひとりが、ぽつん、と、
「なんかさあ、ひとりで、ずーっと、踊ってる人、いたよな」 とつぶやいたら、
「うん、すげえ、キモかった」
なんて言い出す人がいて、内心、ぴくり、と きたのだけど。 十八、九くらいの若者だから、まあいいや、と放っておくことにした。
そうしたら、それを聞いた、私の彼が、
「あんたの DJ のときにも、踊ってくれたんじゃん。 感謝こそすれ、そういう言い方はないだろ!」
と言ってくれて。
ああ! 彼という人は、なんというやさしさと、男気があるのだろう ... 。
ほんとうに、ほんとうに、うれしかった。
それにひきかえ、妹の私は ... 。
お兄ちゃん、ごめんなさい ... 。
そんなことを思い出しながら、兄を待つ、午後。
今宵も、どこかに踊りに行きたい ... なんて言い出したら、どうしよう? ... なんてね。
BGM:
Bruce Springsteen ‘夜の精 / Spirit in the Night’
(今日、九月二十三日は、Bruce さんのお誕生日 ... )
(リンク先は、記念すべき、デヴュー・アルバム。 いちばん好きな作品 ... )