丹沢でブルックナー音楽祭!?コーヒー屋・堀謙造の夢と野望に迫る
◼️丹沢をブルックナーの聖地に
―堀さん、壮大な夢に向かって一歩を踏み出したそうですね。
私は神奈川県秦野(はだの)市に住んでいますが、そこに広がる丹沢山地をブルックナーの聖地にしたいと思っています。具体的には、「丹沢ブルックナー音楽祭(仮)」の開催に向けて動いています。秦野市を、毎年セイジ・オザワ 松本フェスティバルが開催されている長野県松本市のような、クラシック音楽の街にしたいのです。
―なぜ、ブルックナーなのでしょうか。
丹沢にはブルックナーがよく似合うからです。ブルックナーは、オーストリアのリンツに近いアンスフェルデンという村に生まれ、オルガン奏者だった父親の影響で、幼少期から音楽に親しみました。オーストリアの豊かな自然、教会の厳かな雰囲気は、「透明感がある」「精神性が高い」「宇宙のような響きがある」などと評される、ブルックナーの音楽に大いに影響を与えたことでしょう。
秦野市は「神奈川の屋根」とも言われる丹沢山地に囲まれています。丹沢を臨み、文化施設として親しまれている『クアーズテック秦野カルチャーホール(秦野市文化会)』もあります。
私には、このホールにブルックナーの音楽が響き渡り、丹沢の山を抜け、宇宙とつながるような感覚をイメージできるのです。
―ブルックナーの音楽について、もう少し詳しく教えていただけますか?
ブルックナーの交響曲は、長くて繰り返しが多く、「わかりにくい」「とっつきにくい」と言われることもあり、比較的、クラシック上級者向け、そして男性的だと評されています。ですが、クラシック愛好家の間では、男女問わず熱烈なファンも多く、人生を終えるときに聞きたい曲として、ブルックナーの交響曲9番をあげる人が多いですね。また、「ブルックナー交響曲第8番」は、交響曲史上、最高傑作とも言われています。ブルックナーに馴染みがない方も、交響曲5番の第2楽章か、交響曲第9番の終楽章を、何回か聴くうちに理解が深まり、開眼する可能性が高いでしょう。開眼したときは、宇宙や大自然とつながる一体化する不思議な感覚を味わえるかもしれません。
◼️クラシック音楽は心を豊かにしてくれる
―堀さんはクラシック音楽に精通していらっしゃいますが、クラシック音楽との出会いは?
小学3年生の頃に、ラジオやテレビから流れるクラシック音楽に心を奪われました。ロッシーニのウィリアムテル序曲をレコートで聴いたときは、鳥肌が立ちましたね。チャイコフスキーのピアノコンチェルト1番などもお気に入りで、CDを何百回も聴くような子ども時代でした。
―その頃から今にいたるまで、堀さんの人生には、常にクラシック音楽があったのですね。
もしクラシック音楽を聴いていなかったら、今の自分はないと思っています。クラシック音楽は私にとって、生活や心を豊かにしてくれる存在であり、人生の醍醐味です。
―そうして、とうとう、地元の丹沢でブルックナーの音楽祭を開催するというプロジェクトを?
ええ。地元の方や、丹沢を訪ねてくださる方々と一緒に、ブルックナーの偉大な作品を堪能したいのです。クラシックファンはもちろん、日頃クラシック音楽に触れる機会がない人、若い人にこそ聴いていただき、感動を伝えたいと思っています。
◼️夢の実現に向けて。
―この夢は、いつ頃から温めていたのでしょうか?
これまで、クラシック音楽は趣味であり、愛好家という立場でしたが、3、4年前から、自分だけが楽しむのではなく、この感動を次世代に継承し、地域文化と人の心を豊かにしたいという野望を抱くようになりました。この度、夢の実現に向けて挑戦し、行動する決意をしました。
―決意から数日後に、大きな一歩を踏み出したそうですね。
全国で活躍する指揮者であり、音楽評論家である福島章恭(ふくしまあきやす)さんにコンタクトを取ったところ、「僕も丹沢にはブルックナーが似合うと思います」とコンセプトに共感してくださり、「ぜひやりましょう」と。信頼できるオーケストラメンバーを揃え、指揮棒を振ってくださるというのです。
2年後の2021年後を目処に、クアーズテック秦野カルチャーホール(秦野市文化会館)で『丹沢ブルックナー音楽祭(仮名)』を開催する、という構想ができました。
―一気に夢が近づきましたね。実現に向けて、今後の展望は?
自治体、企業、個人を巻き込みながら、夢を叶えていきたいと思っています。丹沢がブルックナーの聖地になれば、全国からクラシックファンが集まり、街を活性化するきっかけにもなります。丹沢の美しさをアピールする絶好のチャンスになるはずです。
―この一大プロジェクトの実現を応援したい人にできることは何でしょうか。
すでに、美しい音楽も、それを奏でる環境も施設もあり、最高の指揮者とメンバーも揃いました。資金面で協力してくださる企業・団体を探していこうと思っています。もちろん個人の方で応援してくださる方がいれば、大歓迎です。丹沢に音楽を響かせ、みなさんと一緒に感動を共有できれば嬉しいです。
以上
(インタビュー・文 なまずみき