野菜スタンドを出しておられるその方は、
いまの世の大金持ちです。
何しろ、小さな土地を買うのに一生を賭けなければならない人が大部分の時代に
小市民の家なら何千軒も建つような広い土地の持ち主です。
とはいえ、人から責められるようなことではありません。
何代にもわたってこの土地を耕してきた家の子孫だということなのです。
最初は、山や林を切り開き、大変な労苦の末、田んぼを整え、働きづめで働いて
田畑を維持してきたのでしょう。
猫の額ほどの庭の草むしりでさえおっくうな都会育ちの私でも、想像はつくのです。
★ ★★ ★
「(市場に)売るために作っているんじゃないからね。(品物が)少ないでしょう」
たまたま、出てこられたそのうちのおばあ様(奥様)と立ち話になりました。
「息子が作っているけど、薬とか使わないから手間ばかり大変で,べつにもうからないんだけど」
「そうでしょうね。感謝です。安心して食べられるものがあって」
「息子の仕事はね。蝶々を追い回すことよ」
一瞬、私の脳裏を、虫取り網を振り回している少年の姿が浮かびました。
「蝶々は、すぐに卵を産み付けるからね」
「はあ?はあ?(青虫のこと?)」
「よく見てないと、全部だめになってしまう」
「私の子供の頃は、虫食い野菜なんて当たり前だったですけどねえ」
いえいえ、その頃でも、母は不満を口にしながら白菜を剥いていたっけ。
おいしい物が人の口に入るまでの苦労は、昔も今も、変わっていないんだ・・・。
そんなわけで
楽しい学びの時間でした。