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インドとの出遭い

2007-08-23 11:39:34 | インド旅行記
いきなり、きた。


デリー空港に到着したときは、既に8時を過ぎていた。
ホテルで休んだ翌日12日、今日は首都デリーを丸一日かけてまわろう、という大まかな予定を胸に、わたしたちはホテルを後にした。

ホテル前には大勢のリクシャーワーラーがたむろしていた。
(リクシャーの説明はこちら→ 『インド道路事情』

「ニューデリー駅に行きたいんだけど。」「いいよ。どこを見る予定なんだ。」
「コンノートプレイス。10ルピーでお願い。」「ダメだ、30ルピー。」
「じゃあ、二人で20(ルピー)でどう?」「・・・オッケー、わかった、行こう。」


乗り込んだわたしたちを乗せ、走り出すリクシャー。
しかし、どうも様子がおかしい。

挙動不審できょろきょろ。時折立ち止まり、ヒンディー語らしい言葉で通りすがりのワーラーに何かを訊ねている。
顔を見合わせ、無言の会話をするわたしたち。

値段も場所も決めたし・・・大丈夫・・・だよね?


走ること5分弱、路地にいた男が、わたしたちの乗るリクシャーに乗り込んできた。

「ノープロブレム。わたしの従兄弟だ。」と話す、リクシャーワーラーの男。
彼が乗り込んできたことがまさにプロブレムだ。

ここまででかなり不信感を募らせていたわたしたちは、そんなことよりも早く指定の場所にいってくれ、と男に詰め寄りたい気分だったが、なんせ初日。しかも人通りの少ない路地では、二人の大男の怒りを挑発するような言動をとるのはリスクが高すぎる。
ここなら、まだホテルまでの道が全くわからなくもない。指定の場所に行けないのであれば、ここで降りてしまおうか・・・。

そのとき、後からやってきた男が口を開いた。
「あんたたち、コンノートプレイスに行きたいんだって?」

嫌な予感が胸を過ぎる。

「・・・ええ、さっき彼にそう伝えたばかり。」
「今日は全部閉まってる。フェスティバルの前は店はほとんどやってない。」
「・・・!?」

「閉まってる店にいったってムダだろう。違う場所にいかないか。」

危険な香りはさらに高まっていた。ガイドブックに幾つも載っていた、トラブルパターンの王道だった。
「ノー。ニューデリー駅。コンノートプレイスに行きたいんだ。」「だから閉まっているんだ。行っても意味がない。」

短い時間だったにもかかわらず、いつの間にか何人ものリクシャーワーラーが集まってきて、わたしたちの話を聞いていた。
何度も押し問答を繰り返すうちに、後から来たインド人も口々に説明し始めた。
君たちはまだ、来たばかりだからわからないだろう。今日はどこの店もやっていない。みんな休みなんだ。

今回は初めてのインド旅行だ、と、うっかり口を滑らせて話してしまったことを、今更後悔してももう遅い。

「ニューデリー駅に行きたいんだ。」

インド英語は、東南アジアの国々同様、かなり訛りが強い。ジャングリッシュならまだしも、聞きなれないイントネーションに時折ヒンディー語らしき言葉が混じり、口々に話す言葉を聞き分けるのは至難の業だったが、とにかく約束通り駅に行くことで一応の決着がついた。


「着いた。中に入れ。」

さんざん揉めた末に連れてこられた場所は“観光局”。
あんなに念を押したのに・・・。

ぐったりと心身ともに疲れたわたしたちは、ふらふらと中に入っていった・・・