置かれた場所で咲く

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積もるストレス【2】

2007-08-25 23:17:49 | インド旅行記
この国には、聖人もいれば物欲の塊もいる。真の優しさでもって接してくれる人も、下心を臆面もなくみせて近づいてくる人もいる。いろいろな人がいる。いい人も、そうでない人も。
そう、聞いていた。

しかし、わたしにはとてもそうは思えなかった。

宿泊しているホテルのまわりを散歩するだけで、マダム!いくら?と断っても断っても声をかけてくる、大勢のリクシャーワーラーたちにはほとほとうんざりし、日本語本だよ、とカーマ・スートラ(古代インドの愛の経典)の緻密でリアルな描写部分だけを臆面もなくパラパラと見せて、ニヤニヤしながら何で買わないの?なんて訊ねる店員とは、ほかのものの値段交渉をする気にもなれなかった。

今回の旅が一週間だという焦りもどこかにあった。


今まで行った、数少ない国々。どの国も、大好きになって帰ってきた。

しかし、今回は・・・今回は・・・・・・。

また、この国に行きたい。帰国後、そう話すわたしを、今思い描くのはやや難しかった。


そんな思いを抱いたまま、駅のホームでバナナとオレンジを20ルピーの言い値で買い、デリーからアグラに向かう寝台特急に乗り込んだ。

寝台特急。不安な思いを抱いたまま・・・。



積もるストレス

2007-08-25 11:50:51 | インド旅行記
「ごめんなさい。」

開口一番の、彼女の言葉。

「もう、今日の予定は全部決まってるの。10時にホテルでタクシーと待ち合わせ。ほら、もうあと30分しかない。親切にしてくれてありがとうございます。丁寧に説明してくれたのに、ごめんなさい。」


およそ10分後、わたしたちは彼らに手を振り、その場を離れた。



異国に入るといつも最初は馴染めず、時に攻撃的になるあたしにとって、温和な彼女が一緒にいることは非常に心強かった。
わたしよりも4つ上の彼女は、穏やかでちょっと天然で、何よりも自分のまわりにいる人たちを傷つけることをひどく恐れているように思えた。
傷つけるなら、自分が背負ったほうがいい。苦しむなら、わたしが苦しむ。
そんな思いをもって人と接しているようだった。

やや大袈裟なジェスチャーでテンポ良く喋り、周囲をくすっと笑わせる。
よく使う言葉は、「ありがとう」「ごめんなさい」だった。

過剰な防御本能で、しばしば相手を傷つけてしまいがちなわたしにとって、彼女の存在はありがたかった。