置かれた場所で咲く

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“これは、わたしからのサービスなの”

2007-08-30 23:43:40 | インド旅行記
それぞれ一人ずつ、暗い部屋に通される。
貴重品は棚の中に入れるよう言われた。行く末が非常に不安で、所持したいと申し出たが、オイルまみれになるから、と言われてしまった。


担当は、30くらいの恰幅のいい女だった。


仰向けに寝たわたしの額に、オイルがぽたぽたと垂らされる。
気持ちいい?と訊かれたが、イエスと答えながら、わたしの意識は財布とメイク崩れの二点集中型に転化していた。


「・・・ちょっと、相談があるんです。」

どうぞ、とつぶやくわたし。もはやどうでも良かった。


「ボディも、サービスさせてほしいの。」
しかも、男たちには内緒で、とのこと。
ここで稼いだ300ルピーの、そのほとんどは男たちの懐に入ってしまうのだろう。

お金かかる?と尋ねると、“As you like.”との返答。
この危険な言葉を、このとき受け入れてしまった自分に、わたしは後悔することとなる。

「・・・OK」


フェイシャルが終わると、彼女はボディーマッサージに移った。

“This is my gift.”肩を揉みながら、彼女は囁いた。

サンキュー、と返すわたし。マッサージは二の腕に移った。

“This is my gift.”
腕を揉みほぐしながら、彼女はまた囁いた。


・・・頼む、もう終わりにして。

願いはすぐに叶えられた。
肩、腕、足。ボディーというよりは四肢プラスアルファで、彼女からの“サービス”は、終わりを迎えた。


チップとして1ドル札2枚とルピー数枚手渡すと、少ない、との要求がきた。

インドはもともとチップの習慣はない。
渡すとしても10ルピー20ルピーの世界。


心意気次第ね、と言われたのに、お金を渡すと少ない、と切り返される。
インドで喧嘩の原因となるといわれている言葉の一つがこれだった。
自分の心まで貧しい、と言われたようで、単純に、気分はさらに沈んだ。

やや気まずい空気が漂い始めたとき、閉まっていた木戸が急に開いた。



非積極的交渉

2007-08-30 21:27:57 | インド旅行記
しばしのヒンディー語でのやり取りの後。

「・・・それはムリだ。少なくしても1000ルピー。」


「わたしたちも、ムリです。」
「・・・いいものを使ってるからこそ、わたしたちには手が届かないんです。ごめんなさい。」

とっさにフォローを入れてくれる彼女。


こんなやり取りを三度四度しただろうか。


「・・・わかった。・・・・・・」

開放される!!!

「・・・300で、手を打とう。」


・・・ぇえっ!?!?!?
マッサージは、結構ですよ!!

希望を叶えてくれる以上、今度こそ断る理由が見つからなかった。



駆け引き

2007-08-30 08:07:11 | インド旅行記
・・・ムリだ、これは・・・・・・。

お互いの目を見合わせれば、考えていることはすぐに理解できた。


「わたしたちにとって、ちょっと高すぎます。ごめんな・・・。」

言い終わるか終わらないかのうちに、言葉を遮られた。


これは、非常に高価なオイルなんです。
これだけの素材を使って、これしか採れないんです。
決して高くはありませんよ。



「わたしたち、とても貧乏で・・・」

空を渡ってきたんでしょ?今しかできないことをしなさいよ。


押しつけがましい言い方に、さすがにカチンときた。


「1500ルピーも払えません。受けたくありません。帰ります。」


席を立つわたしたちを、男たちは慌てて引き止めようとした。

「待って!!・・・いくらなら、いいんだ?」

受ける気など、さらさらなかった。


「・・・3、くらい?」
「そうだね・・・言いづらいけど・・・それなら断れるよね。」


日本語で短く相談したあと、彼らに話した。
「300ルピー。」

今度は、彼らが驚く番だった。



疑惑

2007-08-30 01:44:34 | インド旅行記
リクシャーを停めた道路の一角からガンガーまでは、バイクの通れない細い路地で結ばれていた。

ただ死を待つためだけに佇んでいる老人たち、小さな子がいるの、と身振り手振りで金銭を求める女、聖河ガンガーで死を迎えることを生涯の望みとし、そのためだけに遠路はるばるやってきた人も少なくないのだという。


帰り道、言葉少なく歩くわたしとは裏腹に、彼女はおっちゃんに、感動の一瞬の数々を伝えていた。
良かった、と頷くおっちゃんに、嬉しくてたまらないというような満面の笑みを返す彼女。


ホテルまでの帰り道、おっちゃんはマッサージとヘナをしないか、とわたしたちに尋ねた。
気は進まなかった。しかし、ここで断る理由も見つからなかった。
彼女は大乗り気だった。


月の光を鈍く反射する、小さな古いビルの二階に通された。
若い男が二人、にこにこしながら迎え出てきた。


アロマオイルを使ったヘッドマッサージ、ボディマッサージなど、4種類のマッサージが受けられます、と彼らは話した。


簡単な説明の後、値段を聞いて、わたしたちは驚愕した。

一回、1500ルピー。
90分。



再び、暗雲立ち込めてきた。