男の人一人がやっと入れるくらいの狭い入り口を通り、階段を5段のぼったつきあたり、壁が剥がれかかった小さな部屋に、わたしたちは通された。
えらく恰幅のいい、40前後の男。幅1mほどの小さな机の前に座っていた彼のにこやかな愛想笑いが、余計にわたしたちを不安にさせた。
肌の色は日本人に近く、この辺りのリクシャーワーラーを取り仕切る者だろうという直感が脳裏を走った。
連れてきた男は、二言三言ヒンディー語らしき言葉を交わすと、すぐに席を外した。
「さて・・・・・ね・・・。」
沈黙はすぐに破られた。こわばったわたしたちを前に、できるだけリラックスさせようとしているらしかったが、その笑顔にわたしたちはますます表情を固くした。
「君たちの、今日のプランは?」
ない、と言ったら最後、相手の思うつぼであることは明らかだった。
「・・・ニューデリー駅にいって、コンノートプレイスでショッピング。それから・・・」
「ツイてないな。8月15日はインドの独立記念日だ。三日前から店は全部閉まってる。遺跡も見たいんだろう?」
驚きを必死で隠し、わたしたちは沈黙を守った。
「・・・・・・遺跡だって、今日はほとんど見られない。どうするんだ?」
どうにかして、わたしたちの口から依頼の言葉を引き出したいようだった。
絶対、怪しい。まだ口調は穏やかだ、外に出よう。ホテルに戻ったほうが安全だ。
「・・・・・・ホテルに戻るよ。」
男の顔が僅かに曇った。
「・・・いや、いいプランがあるんだ。」
表情には、まだ余裕がみえた。
「いいかい、女二人旅で初めてのインド、危険だ。絶対、危ない目に遭う。」
もう、既に遭っている。
「・・・みんな、それで失敗するんだ。ガイドをつけて、車で移動するのがベストだ。まずここから一番近いジャマー・マスジットに向かう。ここなら開いてるし、わたしの顔が利く。それから・・・。」
まずは、ここをどう切り抜けるかだ。
「・・・だいたい、半日ちょっと、料金は・・・。」
・・・・・・冗談じゃない!!
「これだ。安い。グッドプライスだよ。」
「・・・・・・!!!」
熱くなりそうになったあたしを止めたのは、一緒にいた彼女だった。
えらく恰幅のいい、40前後の男。幅1mほどの小さな机の前に座っていた彼のにこやかな愛想笑いが、余計にわたしたちを不安にさせた。
肌の色は日本人に近く、この辺りのリクシャーワーラーを取り仕切る者だろうという直感が脳裏を走った。
連れてきた男は、二言三言ヒンディー語らしき言葉を交わすと、すぐに席を外した。
「さて・・・・・ね・・・。」
沈黙はすぐに破られた。こわばったわたしたちを前に、できるだけリラックスさせようとしているらしかったが、その笑顔にわたしたちはますます表情を固くした。
「君たちの、今日のプランは?」
ない、と言ったら最後、相手の思うつぼであることは明らかだった。
「・・・ニューデリー駅にいって、コンノートプレイスでショッピング。それから・・・」
「ツイてないな。8月15日はインドの独立記念日だ。三日前から店は全部閉まってる。遺跡も見たいんだろう?」
驚きを必死で隠し、わたしたちは沈黙を守った。
「・・・・・・遺跡だって、今日はほとんど見られない。どうするんだ?」
どうにかして、わたしたちの口から依頼の言葉を引き出したいようだった。
絶対、怪しい。まだ口調は穏やかだ、外に出よう。ホテルに戻ったほうが安全だ。
「・・・・・・ホテルに戻るよ。」
男の顔が僅かに曇った。
「・・・いや、いいプランがあるんだ。」
表情には、まだ余裕がみえた。
「いいかい、女二人旅で初めてのインド、危険だ。絶対、危ない目に遭う。」
もう、既に遭っている。
「・・・みんな、それで失敗するんだ。ガイドをつけて、車で移動するのがベストだ。まずここから一番近いジャマー・マスジットに向かう。ここなら開いてるし、わたしの顔が利く。それから・・・。」
まずは、ここをどう切り抜けるかだ。
「・・・だいたい、半日ちょっと、料金は・・・。」
・・・・・・冗談じゃない!!
「これだ。安い。グッドプライスだよ。」
「・・・・・・!!!」
熱くなりそうになったあたしを止めたのは、一緒にいた彼女だった。