台風が近づいてくるよ。
お店は大繁盛だよ。
台風シーズンははまだ先だと
想定していなかったものだから、
倉庫内の水やカップ麺在庫は空っぽ。
(これでも離島あるあるで備蓄は多い方なのに)
怒涛の勤務が終了。
閉店シャッターを下ろした後、
私を含めたタバコ吸い達は脱力感満載で
誰も居なくなった駐車場で一服タイム。
風、少し出てきましたね。
マルボロメンソール男が呟く。
なんかカレーが食べたい。
iQOS女子が食に癒しを求める。
今日ね、売り上げが年末並みだったよ。
カバンからライターを探しながら
副店長が報告する。
皆の発言はキャチボールというよりか
壁打ちをしてる状態。
私はもはやダンマリでタバコを吸う。
さて、と。
ヤンキー座りでのタバコ吸いが
妙にハマっていた副店長が立ち上がる。
店舗を一周見廻りをして、
台風で飛んでしまうものが残ってないか
の点検に向かうのだ。
それに皆、ノロノロと続く。
別に皆で行かなくてはいけないという
決まりはないのだがなんとなく。
ノロノロと歩きながら会話も続いていく。
ここでようやく、独り言から会話になった。
てかさ。
なんで蝉が鳴いてんの?
そうなんだよね。夜中なのに。
うん。1匹だけ鳴いてるよね。
実は皆、
さっきからその事が気になっていたようだ。
夏に蝉が鳴くのは当たり前だけど、
今は真夜中過ぎだ。静寂が常のこの時間に
似つかわしくない。違和感。異質感。
あれかな、
蝉も敏感に台風を感じてるのかな。
ヤバいよーヤバいよーって。
早くメス探さなきゃーって。
嘆いてるのかもしれない。
俺まだ地上に出てきたばっかりだよー
信じられなーい。信じられなーいって。
どんだけー、どんだけー。って。
おー、IKKO蝉だね笑笑。
皆、好き勝手に言いながら、
見えるわけじゃないんだけど
なんとなく蝉がいるであろう方向に
目をやりながら話だす。
蝉が夜も鳴いてしまうときは
照明とかで夜も明るいとか、
熱帯夜のときにあるみたいだよ。
以前、不思議に思って調べたことがある
私はそう教えてあげようかと思ったけど
何となくそのままやり過ごした。
今夜はそのままでいいと思った。