島には
特定の人以外、立ち入りを
禁止しているところがあります。
「うたき」と呼ばれる場所です。
神社や寺とはまた違うポジションの
地域の神様などの居
校区内に
「うたき」が存在している場合
先生や親など、とにかく大人たちは
そこに入ってはいけないと諭します。
「うたき」は神様の場所だから
祭事以外は人間はむやみに
立ち入るものではない
と教え込むのです。
しかし、
幼き頃の旦那さんは
近所の友達連中と
あろうことかそこで肝試しを
開催したそうで(!)
当然大人たちに見つかり
自分子供史上最大級に叱られたそうです。
中には親にビンタを食らっていた
友達もいたのだとか。
(その後近くの公園で、
叱った大人たちも交えて
肝試しを再開したという事実も
ほのぼのエピとして追記)
至る所に
その場所はありますから
私がいた学区にも
「うたき」は勿論ありました。
そうして、私も
好奇心にかられ足を踏み入れた
ことが実はあります。
「してはいけない」と言われている
ことへの背徳感か
とにかく色んな作用が混ざり
(もしかして神秘的な作用も)
なんとも息苦しく頭が重くなった
ことを覚えています。
クラスメイトは
そこで鬼ごっこを開催し
その内の1人はその後数日
高熱を出し、その後も
半月ほど学校に来ませんでした。
私たちの間では
「あの子だけ、「うたき」の
石を拾って帰ったらしいよ
バチが当たったんだね」
などの噂が広まりました。
もしくは、
石を拾うとか、あの子は
もしかして誘われたに違いないとか。
石を拾ったその子は
やがて登校してきたのですが、
いくら真相を聞いても
「言いたくない」「親に怒られる」
とダンマリを決め込んでいました。
大分お灸をすえられたようでした。
今思えば、
石を拾ったのは
「うたき」で遊んだ証拠として
披露する為に持ち帰ったのではとか
学校に来なかったのは
例えば親にしこたま怒られて
そうして何かの罰かお祓いの
為に来なかったんじゃないかとか
現実的な想像は容易にできますが、
当時の小さな幼稚な脳みその
私たちには推理できるはずもなく、
真相を聞こうにも
その子がだんまりを決め込むことで
いつしかその話はしなくなりました。
私にとって「うたき」とは
そんな記憶が残る場所です。
しかし思い出といえばその程度で
あまり関わりのないスポットで
ある筈が
最近新たな情報を仕入れてしまい
若干おののいています。
地区の女たちは
55歳になったら
うたき祭事に参加
しなければならないと。
うみさんって
〇〇地区よね(義実家地区)
〇〇嫁だよね。
パート仲間の歳上マダムが
私に問いました。
私がそうだと頷くと
あそこも祭事が細かくあるわよね
頑張ってね。
なんですと?
聞いてねーぞぉぉ!!
店舗事務所で私は叫んでしまいました。
大変よー。
〇〇でしょ。〇〇でしょ。。。
そうやってパートマダムが主な催事を
挙げてくれたのですが
私にはとんと馴染みがなく
それが更に恐怖感を煽ります。
それにしてもうまく出来てるわよね
子育てにひと段落した歳周りで
その仲間に加わるように出来てるのよ。
パートマダムは話を続けていましたが
私が驚愕の瞳のまま何も言えずにいると
笑って肩をぽんぽんとたたき
ま、なんとかなるわよ。
私もなんとかやってる。
やれる やれる。
頑張ろう。
そう笑顔で去っていきました。
私は今、未来に怯えています。