op's weblog

文字通りのログ。経験したことや考えたことの断片のアーカイブ。

レビュー:ベイビーステップ (19)

2011年11月19日 17時32分07秒 | Weblog
本職の人たちはどう言うか知らないが、プレイヤーにとって、テニスというゲームの全てが詰まっていると言っても過言ではないすごい巻(試合)になっているというのが最初の感想だ。漫画というフォーマットとしてはとりあえず行くところまで行ってみた的な、子供たちごめんね的な、解説書をクリスマス発売します的な内容と言える。


序盤のリードが詰まってきた終盤、予測を難しくさせる、つまり自らのペースと配球の“規則性”をとにかく破る(リスクを上げて相手が蓄積しているデータ“の例外”の割合を高める)ことで主人公は1セット目を逃げ切る。もちろん日本ナンバーワン・ジュニアは容易にポイントを取らせてくれず地力を見せつけるが、主人公は気持ち的にもプレー的にもとにかく引かない。
こんなに強いのか?

・・・・いやそうだ

難波江くんは相手によって合理的なテニスをするから俺が本当の強さを知らなかっただけ・・・・

日本トップクラスの強豪の上に君臨し続ける絶対的な存在

これが日本一の実力

・・・・俺はこんな人に勝たなきゃならない・・・・

いや・・・・

俺はこんな人だからこそ勝ちたいんだ・・・・

だから・・・・今やれることは全部やるんだ!!
額に入れて部室やクラブハウスに飾っておきたくなった指導者もいるのではないだろうか(笑)


国内無敵の相手から今大会初めてセットを取ったことに周囲は沸くが、主人公はすぐに次のセットのために積極的に頭を悩ませる。

人によって違いはあるが、どのスポーツでも強い奴は“時間の密度”が違うというのははっきり感じる。つまりゴール(試合に勝ちきる)まで無駄な時間を使わない。というか、そういう連中は、自分のための時間をつくりだし、その分たくさん「仕事」をしている。そして一方で相手の時間を削ることに長けている(試合の進行をどうこうするのではない)。そしてどんなレベルでも言えるのは、最後までの見通しがはっきり見えている/感じられている方が、途中の過程はどうであれ、大概勝つ。ことテニスにおいては、心理的なキャパのサイズが大きくものを言う。

一方難波江は主人公を捉え切れなかったこと、特に感情に負けてセットポイントを落としてしまったことが完璧主義者ゆえ余計響いた。結局チェンジコート中に気持ちの調整が終わらなかったため、いつものルーチンを行うことにする。つまり、「管理できない分の感情は別に取り分けて、相手に返すことで解消する。」

1ポイントかけて心のバランス調整した難波江は一挙にギアを上げ、序盤でワンブレークリードの貯金をつくってしまう。相手のその“プラン”を予期していた主人公は実力差に愕然とするが、「目に見える部分での勝利の方程式(ビジョン)」を思いつけない。そこで1セット分の余裕を見て再度調子を上げる、つまり「ゾーン」へ持ってゆくための方法を模索、試行錯誤することにする。だがセット終盤にたどり着いた結論は、
・・・・てことは もしこれがゾーンに入る要素なら「自らゾーンに入れる選手」は・・・・

意識的に無意識の状態になれるってこと・・・・?

・・・・って それどういうことだ?

答えが出せないまま次のゲームに入った主人公は攻めの姿勢を失い第2セットを落としてしまう。


チェンジコートで主人公は、自分の立ち位置と方向性を再確認、そして勝てるビジョンを描くのではなく、見つけるための手段を決める。

俺は今プロになれるかどうか・・・・

本当にこれからこれで生きてゆくかどうかの試合をしているのに

今まで自分が積み上げてきた力で勝負しないでどうするんだ

リスクを上げてきた主人公を難波江はうまくあしらい?一挙に3-0。だが3ゲーム費やした「仮説の検証」は無駄ではなく、一度あてにすることをやめたゾーンの状態に近づいていることに主人公は気づく。そこでこんどはゾーンに依存することをやめることで心理的な余裕が増え、相手の動きがよく見えるようになる。サービスゲームでポイントを先行された難波江は、

感情を抑えるでもなく逆に解き放つでもなくコントロールしようとするテニスは不安定さが仇にはなるがハマった時に怖さがある

綱渡りながらも「勝利のビジョン」を描けた主人公はますます迷いがなくなりとうとうサービスをブレークバック、スコアをタイに戻す。

攻めようとしていた自分の先手を取ってくる主人公に対し、難波江はよりシンプルな計算をする。つまり今まで経験したことのない領域でのプレーを続けている主人公が負っているリスクに、自分は付き合う必要はないのではないか、と。そして受身ではないが負けないテニス、確率重視の王道のテニスでひとつひとつポイントを積み重ねてゆくことを選択する。


第3セット終盤、両者の意志は同じ。「最短で勝負をつける」。戦略も変わらない。

最終ゲーム、どちらの心理がベターだったのか、あえて判断を保留したい。そして終了の握手をした直後から全日本ジュニアにフォーカスして両者は動き出した。どんな内容であれ今回の対戦は「そういう試合」だったのだ。


最初に書いたとおりまたえらく濃い本なので、「パターンを“見せ球”にする」ような技術も出てくる。画も良くなっているし、描写は最小限だがコーチが選手と一緒に闘っている様子が印象に残った巻でもあった。
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テニスシューズ蟻地獄?

2011年11月18日 16時09分35秒 | Weblog
『ベイビーステップ』の最新刊は届いたのだが、えらく濃いので前巻から読み直すということで後回し。


X-アーマーの2011年版がいまひとつしっくりこなかったので、ウィルソンのツアービジョン(オムニ用)を買ったところまでは前々回書いた。で、早速練習で使ってみたのだが、グリップは問題なし。フィッティングについては、厚めのソックスを2重に履いているにも関わらず、ショップで確認したときより何だかまたゆるく感じるふわふわ感。ややきつめに(しばらく痛いくらい)ひもを縛ってプレーしたが、結局感覚的な違和感以外は足が中で前後に遊ぶこともなく問題はなかった。

だが、足が落ち着かないのはいや(足首の怪我がコワイ)なので、シューズについては御用達の状態になりつつある渋谷のア○○で物色。というか事前にネットで目をつけていたアディダスの値落ちモデルをチェックした。まず検討したのはバリケード・チーム。バリケードシリーズは古いモデルでは土踏まずの位置が合わなかったのだが、毎年どのメーカーも足型を変えてくるので(X-アーマーはやや幅広にしたようだ)、試す価値はある。で、よかった。土踏まずの位置も足型も大きく変えられていてしっくりきたし、ひもを通す穴が一部金属製になっており、緩みにくい構造になっているのも気に入った。バリケード6に比べるとアッパーの剛性が落ちるらしいが、いずれにせよ3足交互に履いても半年もたないのはわかっているし、バリケード6はまだ重い。アディゼロ・フェザーも展示してあったが、パッと見甲のラインがバボラっぽく直線的なのと、オムニ用は底がヘリンボーンということで、今回はパス。

で、その翌日試合に出たのだが、相棒は一応実績のあるX-アーマー(但し2011年版)。ふわふわ対策として内側の靴下に参加賞でよくもらう、“テニス用”を選んでみた。普通の厚めのスポーツソックスより網目が密なので少しはいいかな、と思ったのだが、成功した。ふわふわ感なく、ロングマッチでも足元を気にせずプレイできた。ただこれは靴下のおかげという以外に、自分の足自体微妙に形が変わるせいもある気がする。以前一定の周期で骨盤は開いたり閉じたりするという話を聞いたことがあるのだが、実際僕は同じ条件下であっても体調や気候の変化で体のサイズが微妙に変わるのだ。まだ検証が必要と思う。


二日後、今度はバリケード・チームで練習。グリップは問題なし。というか、最近のオムニ&クレー用シューズは小さなスパイク付のモデルが増えており(ディアドラなんてモロですな)、以前のような性能差が出にくくなっているのだ。それでもブリヂストンはスパイク無しで高いグリップを実現しているし、スパイク付のシューズをクレーで使うのは今後問題視されそうな気はするのだが。また一方でアディゼロ・フェザーはヘリンボーンを採用しているし、オールコート用で勝ち進む人も珍しくないので結局シューズの使い方もテクニックと適性次第ということらしい。仕事の徹夜明けでコート直行、雨降りのオムニにナイキのルナヴェイパー(フェデラーが履いてるやつね)履いてアップ無しでJOPベテランで勝ってしまう奴も世の中にはいるのだ。グリップの問題については逆にハードコートでわざと?滑らせるプロをよく見るのだが、関節の負担を和らげるために僕も習得したいものだ。(ハードコート用のシューズも売っているが、種類が少ないし、これ以上靴を増やしたくない。)

バリケード・チームに話を戻すと、横幅もやや細めでフィット感は高い。ただ少し縦に長い感じがしたので靴ひもは強めに締めた。結局問題はなかったものの、さすがにハードに動き続けると、靴紐の穴のロックは少しは緩む。それでもアッパー自体の剛性感は低くなく、実用上問題ないレベルだった。一方、帰宅してからチェックしてみると、ウィルソンのツアービジョンは足首周りが他のモデルよりやや広くできており、それが落ち着きのなさの原因になっているようだ。もちろんこれも使う人との相性だし、足首にサポーターをつけるときもこの方が好都合だろう。
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結局僕が知りたいのは、

2011年11月12日 00時47分06秒 | Weblog
結局僕が知りたいのは、日本の政府についている首輪、本当の『日米地位協定』つまり『日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する以外の事項に関する協定』の具体的内容だ。なぜなら、根本的に、米英は民族的な特性上、日本のように「暗黙の同意」ではなく、文書化したものを欲しがる。もしかしたらこれが入ったパンドラの箱から徐々に中身が漏れて(leak)くるというのが「第2幕」の始まりなのかも、なんてね。
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解禁前だが

2011年11月04日 21時56分56秒 | Weblog
久しぶりに顔を出したプロショップで、ウィルソンのツアービジョン(オムニ用)が安かったので買ってみた。アッパーが伸びてしまっているX-アーマーの2010年版を引退させて2011年版を一足買って使っているものの、モデルチェンジが決まっており、在庫が少なくなっているにもかかわらず期待ほど値段が下がっていない(これはメーカー側は正しい判断だが買う方はちょっと面白くない。)。さらに、つま先寄りにメッシュの部分が増えたせいか、ひもをきつく締めてもふわふわした感じがとれなくて旧モデルより少し動きにくい。足型も微妙に変えているのだろうか。いずれにせよオムニ用は常時2足あったほうがいいので、ネットでも物色していたが、今日買ったツアービジョンの最新型は足に合うし、アッパー(つま先側)もアディダス・バリケード風の丈夫そうなつくりなので気に入った。グリップについては実際に使ってみるしかないので未だ何ともいえないが、良くなくても練習専用にすればいいのであまり気にしない。

靴を買ってから店主と雑談していると、内覧会で配られたらしい、ウィルソンの来期製品カタログ(ショップ用)を取り出してきたので覘いてきた。まあラインナップなどは既に流出しているし、錦織氏などは既に実戦でお披露目してしまっているが。

プロスタッフ系ユーザーとしての感想は、「ポスト・フェデラー」へのシフトがはっきりしたなあというもの。新たにプロスタッフの名がついたモデルのうち、90平方インチモデルは全世界340g版しか出さない(となると、在庫も少ない現フェデラー・モデルの320g版は、プレミアがつく可能性がある。)。筋力不足の皆様は(僕を含め)95平方インチモデルにシフトが予想される。「95版」はフレーム重量315g前後、バランスポイント310mm、フレーム厚18mmと、ある意味待望された理想的なスペックだ。コスメティックが足を引っ張る可能性もあるが(早々に化粧直し版が出るのでは?)、ヒットすれば競技志向モデルの新たなトレンドになる可能性もある。ちなみにカタログでこのモデルの「看板」だったのが「フェデラー二世」を期待されているグリゴール・ディミトロフ氏。プレー中の画像で既にバレバレだったが、実戦で先行開発していたことがこれではっきりした。もうひとつ気になるのが100平方インチモデルがあることで、ぐっと軽くフレームもやや厚くはなるのだが、現在シニアツアーでサンプラスが試作品をつかっているのが100平方インチらしいことも考えると、サンプラス版の期待と合わせてちょっと気になる存在ではある。また(今回モデルチェンジのない)ブレードシリーズ・ユーザーの動向、さらにヘッドの新しいプレステージがどうなっているのかも興味深いところ。

フェデラー、業界内ではロンドンオリンピックを花道という観測が強くなっているのだろうか。全米では負けてしまったが新たな試みを見せていただけに、まだまだ楽しませて欲しいところなのだが。第一、いいところで負けてるのもメンタルの部分だけだからなあ…
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レビューちゅうかなんちゅうか:ウィンターズ・ボーン

2011年11月03日 21時53分27秒 | Weblog
テニスの帰りに鑑賞(大した汗かかずに試合終わっちゃったもんですから。あーあ。)。

ちょうどラファエル・ナダルの自伝を読み終わったところだったので、コミュニティ、血の絆、そしてコミュニケーションの問題について新たなケーススタディとして観た。

演技者達に文句をつけるところはない。一方、映画としての「豊穣さ」「強さ」について、正直なところ語りたいところも…やはりない。あくまである事件に沿ってリアリズムを重視してつくられているのだが、おそろしいことに、もはや率直に言って全体的に「想定内」なのだ。これも世界規模での情報共有が進んだことの弊害の一例と言えるかもしれない。ただいずれにせよこの映画は、最近目立つ「アメリカ人のためのアメリカ映画」だ。


それでも、この映画が今日本に住む者に(も)示している重要な教訓がある(もしかしたらこの映画の本当の主題なのかも知れないが)。それはどんな経緯があったにせよ、『文化的な頑迷さ』は容易に個人とそれが属するコミュニティを窮地に追い込み、そこに閉じ込める。最終的には微かな痕跡だけを残してそれらを消滅させることさえありうる。」ということだ。

これは、(もうすぐ日本でも公開される『マネー・ボール』と同じ原作者である)マイケル・ルイスが書いた『ブラインド・サイド』のレビューで言及した『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル著)にも重なるテーマだ。
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