本職の人たちはどう言うか知らないが、プレイヤーにとって、テニスというゲームの全てが詰まっていると言っても過言ではないすごい巻(試合)になっているというのが最初の感想だ。漫画というフォーマットとしてはとりあえず行くところまで行ってみた的な、子供たちごめんね的な、解説書をクリスマス発売します的な内容と言える。
序盤のリードが詰まってきた終盤、予測を難しくさせる、つまり自らのペースと配球の“規則性”をとにかく破る(リスクを上げて相手が蓄積しているデータ“の例外”の割合を高める)ことで主人公は1セット目を逃げ切る。もちろん日本ナンバーワン・ジュニアは容易にポイントを取らせてくれず地力を見せつけるが、主人公は気持ち的にもプレー的にもとにかく引かない。
国内無敵の相手から今大会初めてセットを取ったことに周囲は沸くが、主人公はすぐに次のセットのために積極的に頭を悩ませる。
人によって違いはあるが、どのスポーツでも強い奴は“時間の密度”が違うというのははっきり感じる。つまりゴール(試合に勝ちきる)まで無駄な時間を使わない。というか、そういう連中は、自分のための時間をつくりだし、その分たくさん「仕事」をしている。そして一方で相手の時間を削ることに長けている(試合の進行をどうこうするのではない)。そしてどんなレベルでも言えるのは、最後までの見通しがはっきり見えている/感じられている方が、途中の過程はどうであれ、大概勝つ。ことテニスにおいては、心理的なキャパのサイズが大きくものを言う。
一方難波江は主人公を捉え切れなかったこと、特に感情に負けてセットポイントを落としてしまったことが完璧主義者ゆえ余計響いた。結局チェンジコート中に気持ちの調整が終わらなかったため、いつものルーチンを行うことにする。つまり、「管理できない分の感情は別に取り分けて、相手に返すことで解消する。」。
1ポイントかけて心のバランス調整した難波江は一挙にギアを上げ、序盤でワンブレークリードの貯金をつくってしまう。相手のその“プラン”を予期していた主人公は実力差に愕然とするが、「目に見える部分での勝利の方程式(ビジョン)」を思いつけない。そこで1セット分の余裕を見て再度調子を上げる、つまり「ゾーン」へ持ってゆくための方法を模索、試行錯誤することにする。だがセット終盤にたどり着いた結論は、
答えが出せないまま次のゲームに入った主人公は攻めの姿勢を失い第2セットを落としてしまう。
チェンジコートで主人公は、自分の立ち位置と方向性を再確認、そして勝てるビジョンを描くのではなく、見つけるための手段を決める。
リスクを上げてきた主人公を難波江はうまくあしらい?一挙に3-0。だが3ゲーム費やした「仮説の検証」は無駄ではなく、一度あてにすることをやめたゾーンの状態に近づいていることに主人公は気づく。そこでこんどはゾーンに依存することをやめることで心理的な余裕が増え、相手の動きがよく見えるようになる。サービスゲームでポイントを先行された難波江は、
綱渡りながらも「勝利のビジョン」を描けた主人公はますます迷いがなくなりとうとうサービスをブレークバック、スコアをタイに戻す。
攻めようとしていた自分の先手を取ってくる主人公に対し、難波江はよりシンプルな計算をする。つまり今まで経験したことのない領域でのプレーを続けている主人公が負っているリスクに、自分は付き合う必要はないのではないか、と。そして受身ではないが負けないテニス、確率重視の王道のテニスでひとつひとつポイントを積み重ねてゆくことを選択する。
第3セット終盤、両者の意志は同じ。「最短で勝負をつける」。戦略も変わらない。
最終ゲーム、どちらの心理がベターだったのか、あえて判断を保留したい。そして終了の握手をした直後から全日本ジュニアにフォーカスして両者は動き出した。どんな内容であれ今回の対戦は「そういう試合」だったのだ。
最初に書いたとおりまたえらく濃い本なので、「パターンを“見せ球”にする」ような技術も出てくる。画も良くなっているし、描写は最小限だがコーチが選手と一緒に闘っている様子が印象に残った巻でもあった。
序盤のリードが詰まってきた終盤、予測を難しくさせる、つまり自らのペースと配球の“規則性”をとにかく破る(リスクを上げて相手が蓄積しているデータ“の例外”の割合を高める)ことで主人公は1セット目を逃げ切る。もちろん日本ナンバーワン・ジュニアは容易にポイントを取らせてくれず地力を見せつけるが、主人公は気持ち的にもプレー的にもとにかく引かない。
こんなに強いのか?額に入れて部室やクラブハウスに飾っておきたくなった指導者もいるのではないだろうか(笑)
・・・・いやそうだ
難波江くんは相手によって合理的なテニスをするから俺が本当の強さを知らなかっただけ・・・・
日本トップクラスの強豪の上に君臨し続ける絶対的な存在
これが日本一の実力
・・・・俺はこんな人に勝たなきゃならない・・・・
いや・・・・
俺はこんな人だからこそ勝ちたいんだ・・・・
だから・・・・今やれることは全部やるんだ!!
国内無敵の相手から今大会初めてセットを取ったことに周囲は沸くが、主人公はすぐに次のセットのために積極的に頭を悩ませる。
人によって違いはあるが、どのスポーツでも強い奴は“時間の密度”が違うというのははっきり感じる。つまりゴール(試合に勝ちきる)まで無駄な時間を使わない。というか、そういう連中は、自分のための時間をつくりだし、その分たくさん「仕事」をしている。そして一方で相手の時間を削ることに長けている(試合の進行をどうこうするのではない)。そしてどんなレベルでも言えるのは、最後までの見通しがはっきり見えている/感じられている方が、途中の過程はどうであれ、大概勝つ。ことテニスにおいては、心理的なキャパのサイズが大きくものを言う。
一方難波江は主人公を捉え切れなかったこと、特に感情に負けてセットポイントを落としてしまったことが完璧主義者ゆえ余計響いた。結局チェンジコート中に気持ちの調整が終わらなかったため、いつものルーチンを行うことにする。つまり、「管理できない分の感情は別に取り分けて、相手に返すことで解消する。」。
1ポイントかけて心のバランス調整した難波江は一挙にギアを上げ、序盤でワンブレークリードの貯金をつくってしまう。相手のその“プラン”を予期していた主人公は実力差に愕然とするが、「目に見える部分での勝利の方程式(ビジョン)」を思いつけない。そこで1セット分の余裕を見て再度調子を上げる、つまり「ゾーン」へ持ってゆくための方法を模索、試行錯誤することにする。だがセット終盤にたどり着いた結論は、
・・・・てことは もしこれがゾーンに入る要素なら「自らゾーンに入れる選手」は・・・・
意識的に無意識の状態になれるってこと・・・・?
・・・・って それどういうことだ?
答えが出せないまま次のゲームに入った主人公は攻めの姿勢を失い第2セットを落としてしまう。
チェンジコートで主人公は、自分の立ち位置と方向性を再確認、そして勝てるビジョンを描くのではなく、見つけるための手段を決める。
俺は今プロになれるかどうか・・・・
本当にこれからこれで生きてゆくかどうかの試合をしているのに
今まで自分が積み上げてきた力で勝負しないでどうするんだ
リスクを上げてきた主人公を難波江はうまくあしらい?一挙に3-0。だが3ゲーム費やした「仮説の検証」は無駄ではなく、一度あてにすることをやめたゾーンの状態に近づいていることに主人公は気づく。そこでこんどはゾーンに依存することをやめることで心理的な余裕が増え、相手の動きがよく見えるようになる。サービスゲームでポイントを先行された難波江は、
感情を抑えるでもなく逆に解き放つでもなくコントロールしようとするテニスは不安定さが仇にはなるがハマった時に怖さがある
綱渡りながらも「勝利のビジョン」を描けた主人公はますます迷いがなくなりとうとうサービスをブレークバック、スコアをタイに戻す。
攻めようとしていた自分の先手を取ってくる主人公に対し、難波江はよりシンプルな計算をする。つまり今まで経験したことのない領域でのプレーを続けている主人公が負っているリスクに、自分は付き合う必要はないのではないか、と。そして受身ではないが負けないテニス、確率重視の王道のテニスでひとつひとつポイントを積み重ねてゆくことを選択する。
第3セット終盤、両者の意志は同じ。「最短で勝負をつける」。戦略も変わらない。
最終ゲーム、どちらの心理がベターだったのか、あえて判断を保留したい。そして終了の握手をした直後から全日本ジュニアにフォーカスして両者は動き出した。どんな内容であれ今回の対戦は「そういう試合」だったのだ。
最初に書いたとおりまたえらく濃い本なので、「パターンを“見せ球”にする」ような技術も出てくる。画も良くなっているし、描写は最小限だがコーチが選手と一緒に闘っている様子が印象に残った巻でもあった。