雑誌では長い長い勝負の決着がとうとうついたところで思い出したようにレビューを。
スピードと回転を高いレベルで併せ持ったエッグボールを駆使して怒涛の如く攻めまくる神田に対し、主人公は徹底的に受けながらチャンスを狙う作戦を選択。が、活路を見出すことができない。もはやよくある失敗で、体力も技術もある攻撃型の相手に受身になってしまったため、相手は攻めに集中できるので気持ちよく打ち続けられ、ショットの精度も上がってしまうという悪循環にはまってしまったよう。
そこで主人公は持ち味である正確で多彩なショットを生かした、的がしぼりにくくリズムがとりづらい配球で攻める。そして何より神田の特徴である先制攻撃をさせないために、サービスの使い方を再考、「緻密なコース狙い」と「球威で押す」パターンをはっきり分けて使うことにする。
相手に攻め込まれずしかも自分からミスらないギリギリのレベルを見極めながらの配球、それにより相手の返球の予測がより容易になったことで、主導権を維持する場面が増えてくる。3-5。神田は、主人公の試合中の分析力とプランの実行レベルの高さに改めて驚嘆、同じタイプの国内トップであり「ボスキャラ」難波江戦のためにも、きっちり倒さなければいけないと改めて思う。
神田のショットは平均して威力があり確率も高いため、主人公にとってはデータが取りやすく、試合が進むにつれ予測もしやすくなっていたのだが、ここで神田はテクニカルなショットでポイントしてみせる。それはチームカラーに染まりきることへの危機感から身につけていた武器だったが、メンタルモンスターである主人公はここでパニックになどならない(笑)。改めてイチから作戦立て直しするのではなく、相手が新しい武器を出す前に潰してしまえと、相手のお株を奪うような先制攻撃をレシーブゲームでも繰り出す。しかも、それではゲームを取るまでポイントし続けることは不可能と判断するや、相手に完全には主導権を渡さない程度に(自分からミスらない程度のリスクで)攻める配球で、エッグボールとアングルショットを組み合わせた神田のプレイを観察できる時間を長く取る作戦にチェンジ、つまり2ndセットのためのデータ取りと割り切ることにする。
すると、相手をますます(笑)冷静に見ることで図らずも理想的な心理状態に近づき、自然とポイントを量産するようになる。主人公は、いままで積み重ねてきた訓練と、相手の情報の蓄積と分析が一挙に花開いたことを実感する。
自らが「ゾーン」にいることを確信した主人公は自信を持って攻め続け、逆転で1stセットを取ってしまう。
一方、神田は、これが、今迄実績の少ない主人公を心の底で甘く見ていた故の結果であることを認識する。
このブレイクは確かに相手が強かったからだが
同時に俺が招いた結果でもあるんだ…
2ndセットに向けて、主人公は自分がいい状態である間にポイントも情報もできるだけ蓄積しておくことを考え、神田は自分が(地味だが)「怪物」を相手にしていることを意識、捨て身の勝負に出ることを決める。
ここで場面は女子の準決勝に切り替わる。ナツは主人公から教えてもらった、「裏付けをたくさん見つけることで自信を強める」ことを試み、亜希は身につけてきた技術を、「その時正しい対処」のために使うのではなく、自分が描いたポイントのイメージを実現するために、自分を表現するための道具として用いることを始める。
さて、主人公の試合、2ndセットのはじめ、神田は攻めの姿勢を強める。球威重視とコントロール重視をよりはっきりさせ、主人公が守勢にまわった瞬間を見逃さずネットに出て決める。一方、主人公は未だゾーンの状態から外れていない…
ということでまたまた濃厚なテニス漫画の26巻はここまでとなるのだが、はっきり言ってこう暑いとレビュー書くのも相当面倒になってくる。そしてファンの多くが薄々気づいているだろうこの作品の最大の難点は、濃すぎてアニメ化が難しいということだ…それどころかしっかり読み込むのはおそらく電子書籍でも難しいのではないだろうか。早くITFの公式教本化を実現すべきである(と外野は好きなことを言ってみる。が、ジュニアも楽しんで読めるからいいよね)。
ところで女子の試合の場面は非常に「情緒的な」葛藤がテーマになっているが、これってやっぱり男子との違いを出すためと思うが、もしかして女子は実際にこういうレイヤーのことを考えながら試合してたりするの(できるの)?