バイクレースが日本史上最も華やかだった時代(残念ながらそう言い切ってしまっていいでしょう)、その中心にいたライダーのうちの一人の自伝、というより回顧録、というより半分は告白本いや告発本。
いや~まさに1980年代からバイクにハマりだした者としては、この内容は面白すぎて刺激が強すぎて、こんなの出して大丈夫なの?と心配してしまう程です。グッドジョブ!
読んでみればわかりますが、すぐに想起したのがタイトルにもある『まっすぐに蹴る』。90年代日本の格闘技ブームの中心にいた佐竹雅昭氏の本ですね。
近頃はネットでMotoGPの内幕も結構記事になるので、「さもありなん」という出来事が多いのですが、多いという事はつまり時代が変わっても皆同じようなことで失敗し続けているわけです。(もちろん著者はじめ成功の部分が大きかったからこそ大きな業績を上げたわけですが。)
ただちょっと意外だったのは、あの頃スペンサーやマモラ等の(つまりホンダチームの)メカニックとして著名だったジョージ・ブクマノビッチ氏がイタリアのカジバへ移籍した後のインタビューで、「カジバの連中は複数の新パーツのテストを同時にやろうとするので正確な評価ができない。」と愚痴っていたのですが、実はホンダのワークスチームも(ある時は)同じことをやっていたんですね。
もちろん著者がWGPで走ったレーシングライダーなので、有名選手に関するエピソードや評価、トレーニング、ライディングの分析等その方面の興味深い記述も多いです。(そう言えば「敬称」に関する面白い伏線と回収があります。)「必要にせまられて」開発ライダーにもなった(なってしまった)著者ならではのエピソードも(様々な世界チャンピオン達と対比させながら)楽しむことができます。
ということで、内幕暴露の是非以外にも評価が分かれるかもしれない本ですが、徹底的に「いち当事者」の視点で書かれた貴重な資料としての価値は高く、とても人間臭い、ある意味日本人臭い、「歴史」のスナップショットとして僕は楽しむことができました。もしかしたらこれはフェンスの外、テレビの前にいた側の特権なのかもしれませんね。(この本に「登場しなかった」(ちょっと後の世代の当事者である)本間利彦氏の感想を是非聞いてみたい!)
それから、MotoGPに関するツイートでも度々指摘しているのですが、ライダー(プロアスリート)を守りともに戦ってくれる「代理人」やその他で構成する「チーム」の存在が如何に大事か必要かということがこの本を読んでもよくわかると思います。2023年は土曜日にスプリントレースを追加するという、アホな決断をしたMotoGPの興行サイドですが、ますます厳しくなる世界の経済環境、二輪の良さを消す技術の導入が続く中で、ライダー(人間)は機械(マシン)の一部として、それとも商業システムの一部として、それとも「ユーザー」が猛烈な勢いで消費する「コンテンツ」の一部として、融けて消えゆく間際にいることに気づく関係者が増えてくれることを願ってやみません。
いや~まさに1980年代からバイクにハマりだした者としては、この内容は面白すぎて刺激が強すぎて、こんなの出して大丈夫なの?と心配してしまう程です。グッドジョブ!
読んでみればわかりますが、すぐに想起したのがタイトルにもある『まっすぐに蹴る』。90年代日本の格闘技ブームの中心にいた佐竹雅昭氏の本ですね。
近頃はネットでMotoGPの内幕も結構記事になるので、「さもありなん」という出来事が多いのですが、多いという事はつまり時代が変わっても皆同じようなことで失敗し続けているわけです。(もちろん著者はじめ成功の部分が大きかったからこそ大きな業績を上げたわけですが。)
ただちょっと意外だったのは、あの頃スペンサーやマモラ等の(つまりホンダチームの)メカニックとして著名だったジョージ・ブクマノビッチ氏がイタリアのカジバへ移籍した後のインタビューで、「カジバの連中は複数の新パーツのテストを同時にやろうとするので正確な評価ができない。」と愚痴っていたのですが、実はホンダのワークスチームも(ある時は)同じことをやっていたんですね。
もちろん著者がWGPで走ったレーシングライダーなので、有名選手に関するエピソードや評価、トレーニング、ライディングの分析等その方面の興味深い記述も多いです。(そう言えば「敬称」に関する面白い伏線と回収があります。)「必要にせまられて」開発ライダーにもなった(なってしまった)著者ならではのエピソードも(様々な世界チャンピオン達と対比させながら)楽しむことができます。
ということで、内幕暴露の是非以外にも評価が分かれるかもしれない本ですが、徹底的に「いち当事者」の視点で書かれた貴重な資料としての価値は高く、とても人間臭い、ある意味日本人臭い、「歴史」のスナップショットとして僕は楽しむことができました。もしかしたらこれはフェンスの外、テレビの前にいた側の特権なのかもしれませんね。(この本に「登場しなかった」(ちょっと後の世代の当事者である)本間利彦氏の感想を是非聞いてみたい!)
それから、MotoGPに関するツイートでも度々指摘しているのですが、ライダー(プロアスリート)を守りともに戦ってくれる「代理人」やその他で構成する「チーム」の存在が如何に大事か必要かということがこの本を読んでもよくわかると思います。2023年は土曜日にスプリントレースを追加するという、アホな決断をしたMotoGPの興行サイドですが、ますます厳しくなる世界の経済環境、二輪の良さを消す技術の導入が続く中で、ライダー(人間)は機械(マシン)の一部として、それとも商業システムの一部として、それとも「ユーザー」が猛烈な勢いで消費する「コンテンツ」の一部として、融けて消えゆく間際にいることに気づく関係者が増えてくれることを願ってやみません。