サーフェイスはグリーンサンド。緑色した粗い土で、普通の日本のクレーよりは水はけがいくらかいいのかも知れないが、乾くとそのまま固まりやすく、ギャップは多い。
1回戦の相手はとにかくロブ一辺倒。レシーブから面を上に向けてこちらのバックサイドへ上げ続けるという、向上心ないけど試合には勝ちたい手合いがよくやる手だ。まあ、僕に関する情報を事前に集めていたらしく、それを基にたてた作戦のようで、後述するがくだらない小細工もやってきた。
で、レシーブから始まった試合はとりあえずパンパン叩けるところは叩いてサクサク2ゲーム取ってしまったのだが、ここで僕の悪癖が出た。緊張感と共に集中力がなくなってしまったのだ。例によって自分のリズムではなくボールに合わせて緩慢な動きをするようになった。すると微妙に打点やヒットのタイミングがずれてきて、ショットの精度と威力が落ちてくる。特に相手は土のコートで(トップスピンもかかっていない)ロブを上げてくるため、ボールがこちらへ飛んでくる力を利用しづらい。やらなければならないことはその分しっかり踏み込んでヒットを続けることなのだが…
で、修正を無意識に力でやろうとしてしまい、余計スイングスピードは落ち、腰と腕にいらぬ負担がかかるばかりになった。スコアといえばイーブンに戻った挙句先行される破目に。全くリズムのないプレイを続けたせいかサービスも調子が上がらず、短く落ち勢いが死んだボールの処理もボロボロ、スマッシュでは太陽が目に入らない方向に回り込むこともなくネットミスを続ける。それでもさすがにこんな試合で負けるわけにはいかないということで辛抱しながらチャンスボールを待ち、配球で決める。相手がやることはさらにロブできわどい所を狙ったり、スライスを混ぜることだが、プレッシャーがかかるほどミスは増える。そんなこんなで最終的にはワンブレークアップで1セットマッチを終わらせた。
予選リーグなのでとっくに初戦を終えていた次の対戦相手を5分ほど待たせて2戦目。前年は決勝トーナメントに出ている人だったが、こっちも勝つしかなくなっていた。というのは、最初の試合でスコアが競ってしまったために、1勝1敗では一人2試合、4人のリーグ戦(スケジュールの問題だろう)では得失ゲーム差で2位にもなれない可能性がある。不毛な試合で消耗した挙句最初に勝った相手より下位になることは耐え難い。
さて、肝心の今度の対戦相手は正攻法でくるタイプで、フォアハンドはしっかり押しの効いたトップスピンを打ってくる。相手がサービスを選んだためにレシーブから始まった序盤、デュースサイドで結構切れてくるスライスサービスを打ったので警戒したが、結局それきり打ってこなかった。これは僕自身の大きな課題でもあるが、相手に対して効果があるショットをしっかり確認してゆく作業がやはり必要だ。
で、最初のゲームを先行されながら逆転で取る。次のサービスゲームも比較的スムーズに取る。相手は試合会場のコートをホームにしているらしく、荒れていそうなところを狙って回転の強いスライスを落としてくるなどしたが、はっきり言ってあまり関係なくこちらのレシーブミスなどで相手に2回目のサービスゲームはキープを許す。が、こちらもリズムは完全には戻らないまでも体は暖まり、ラケットも変更して(ストリングの設定が違う)サービスから何とか調子を上げていった。結局相手とハードに打ち合うまでには至らず、強いボールはいなしてミスさせたり、配球でチャンスをつくって決めるパターン。スコアの差が開くにつれて余計気落ちしたのか、結局1ゲーム与えただけで終わってしまった。もうちょっとしぶとくやれば結構強いのだろうが、展開の手詰まりを過剰に意識しやすいタイプのようで、ちょっともったいないかも、というのは自戒の意味もある。
次は決勝トーナメントということになるのだが、その翌日がまたレベルの高い大会なのでどうするか思案中。どちらも100%頑張るというのは腰の状態からして不可能。まして土のコートは(フットワークが悪いと余計)股関節に負担がかかる。
さて、この日の試合はストリングのテストの意味もあった。今まで愛用してきた安価で質の良いブランドがなくなってしまったようなのだ。で、ネットの評判を色々見て特性が近そうなものを単張りで取り寄せたのがシグナムプロのプラズマ・ピュアとポリ・プラズマ。もちろん今安売りしてくれている製品というのは大きな魅力だ!(笑)僕はハイブリッド張りなので、これらを横糸に張って比較した。先に練習で試したのはプラズマ・ピュアで、確かに衝撃吸収力がある。今まで使っていたものより手にくる衝撃はかなり減った気がする。が、反発力がその分ない。僕のラケットはプロスタッフ系なのでストリングのサポートが必須。で、ちょっと時期的に早いが、ナイロンの縦糸を1.30mmから1.25mmに変えてみたが、あまり効果はなかった。で、初戦はプラズマ・ピュア、2戦目は張りたてのポリ・プラズマ(縦糸は1.30mm)で臨んだ。飛んでこないボールを飛ばない(回転もいまひとつ)セッティングで打つのはやはりつらかった。一方、2戦目のポリ・プラズマの方はもう少し固い感触だが、より飛んでくれた。特にサービスは楽になり、スピード、スピンともアシストしてくれた。ストロークではタイミングを合わせきれず叩き返すまではいかなかったがOKの範疇。どちらも反発力に関しては正直もう少し欲しいところだが、多分ポリエステルの糸は普通こんなものだろうし、反発力のあるラケットであれば全く問題ないだろう。また、今回試した1.23mmより細い製品もあり、シグナムプロの製品はテンション維持性能が高い評価を得ているが、どちらにせよ僕はハイブリッド張りなので先に縦糸が切れてしまう。横糸を細くして縦糸にノッチができやすくなりはしないか詳しい人に聞いてから決めようと思う。
例によってダラダラ書いてきたが、最後に、やはり目に余ったのが最初の試合の相手の「やりくち」。もう初老と言っていい外見なのだが、試合の前から明らかに何かやる気満々。で、やったのが徹底した「遅延活動」。試合の順番が来てもなかなかコートに入らず、入ったと思ったらノロノロ歩き、やっとベンチに座ったと思ったらグズグズしたあげく遠い駐車場まで何やら取りに行く。試合が始まってもコートチェンジは1分半では済まさず、絶対こちらを待たせるようにする。ポイント間こちらが少しでも間を取れば、お返しにその数倍かけてからプレイに入るという具合。勿論転がったボールを取りにゆくのも牛歩戦術である。言うまでもなく試合終了まで挨拶も詫びも無し(ちなみに2戦目、僕が途中で振動止めを付け直すのにやや時間を食ってしまったのも問題だったかもしれないが、しっかり相手に謝りました)。だが実は「ロブ作戦」含め、意表を突かれることはなかった。というのは、以前チーム戦で混合ダブルスをやっているのを見たことがあって、対戦相手の女性にばかりハードヒットし続けるような奴だったということを覚えていたからだ。地元であることを利するのは相手だけではなかったのだった(笑)。まあそれにしても、経験的に言えるのは、残念ながら年寄りになるほど汚い手合いが増えるということ。この大会では以前、ゲーム中にスコアに関しておかしな難癖をつける者もいたし(あきらかに心理的動揺を狙っていた)、終わってから憎まれ口をたたくのは他の大会でもよく見かけた。1対1になるテニスのシングルスではそれでなくともエゴがむき出しになりやすいので、気が滅入る状況である。実力に関する向上心でなく足を引っ張って勝つ雰囲気が強いのも若いプレイヤーが増えない一因ではないかとさえ思ってしまう。