横浜の建築設計事務所 コア建築設計工房のブログ

建築のこと、 横浜のこと、保育や福祉施設のこと、介護のことを表現します。

陰翳礼讃と日本文化私観

2021年08月31日 | 展覧会・アート・本

おはようございます。
神奈川県横浜市にある設計事務所・株式会社コア建築設計工房の野上です。

お盆中、外出し難い時期だったので本を読んでいました。
文豪が建築について言及していることが面白いので取り上げます。

※没後50年経過しているので、存分に引用します。

 

妖しい耽美を描いた谷崎潤一郎と、捻くれてるけど実は優しい坂口安吾は随筆をのこしています。
建築に関わる記述(どちらもあらかじめ「建築については門外漢であるが…」と丁寧に前置きしています。謙虚ですね)が多くあり、日本の西洋化への考えの相違が面白いです。

ひとつめ、『陰翳礼讃』(いんえいらいさん)は建築業界では有名で、羊羹から建築に至るまで、その名の通り陰翳を礼讃する旨です。
個人的な解釈では「影」は姿がわかるカゲを、「陰」「翳」は薄ぼんやりとしたカゲリを表し、その暗さの文化を語っています。そして、その描写がいちいち凄まじく耽美なのです。

▲ 陰翳礼讃 谷崎潤一郎 中央公論新社 (青空文庫もおすすめです)

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のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光りを吸い取って夢みる如きほの明るさを啣んでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子には絶対に見られない。クリームなどはあれに比べると何と云う浅はかさ、単純さであろう。だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。
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軒を深く出す建築で暗い部屋に住まねばならなくなった先祖は、陰翳のうちに美を発見し、それに合わせて陰翳を利用するようになりました。
よって美は常に生活の実際から発達すると述べています。
そして、西洋文化は順当に発達したのに対し、日本は優秀な西洋文化に急に出会ったがゆえに損をしていると主張し、嘆いています。

 

LEDに白く照らし出された部屋で生きる我々は、現実の陰翳を愛でる心はどれほど残っているのか哀しみを覚えました。
論理的に日本文化を語られても完全な理解はできませんが、本によって、その世界に没入すれば見えるものもあると思います。
対して、感覚的に理解していること、例えば「わびさび」を外国人に説明することがあれば、言語化された谷崎の文学をもってすれば幾らかは伝えられるかもしれないと思いました。

長くなるので安吾は次回書きます。

 

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某こども園新築工事 その2 ~基礎~

2021年08月06日 | 工事監理

おはようございます。
神奈川県横浜市にある設計事務所・株式会社コア建築設計工房の森です。

先月ブログにアップさせて頂いた某こども園新築工事の進捗をご紹介致します。

前回杭打ちが完了し、現在は基礎工事を行っています。


▲地中梁などの基礎配筋の様子


▲配筋検査の様子

配筋の本数、かぶり厚(型枠と鉄筋の距離)、鉄筋同士の離れなどを確認していきます。


▲打設完了後の様子


▲埋設管の様子

基礎は建物の土台であり、建物が完成すると隠れてしまい再度修正や確認をすることが出来ない大事な部分になります。

そのため施工会社、監理者、確認審査機関を含め図面通りに出来ているか、問題なく納まっているかしっかりと確認する必要があります。

 

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プラスチックの現状

2021年08月02日 | 環境問題

おはようございます。
神奈川県横浜市にある設計事務所・株式会社コア建築設計工房の井下です。

 こどものころ(1980年代)、石油はあと30年で枯渇すると学校で教わりましたが、今現在でもまだあと50年は採掘可能であるとか、シェールガスがアメリカで量産されたり、メタンハイドレートが日本近海に埋蔵している(海洋エネルギー資源開発促進日本海連合HPより)とかで、技術開発は必須ですがしばらく化石燃料は枯渇することはないように思います。
そんな中、地球温暖化対策、CO2抑制、脱炭素の風が吹き、カーボンニュートラルではない石油関連からの脱却の流れは今や社会常識になっています。
建築でも大量に利用している石油由来の素材「プラスチック」の現状についてまとめました。

 プラスチックは原油の中から作られるものの極一部(原油全体の3%)です。
原油からは、LPガス、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット燃料、軽油、重油、アスファルトなどが取り出されます。
この内のナフサから、プラスチック製品、ゴム製品、繊維、塗料などが作られています。

▲原油からプラスチック製品ができるまで(日本プラスチック工業連盟HPより


 19世紀後半、アメリカで原油が採掘可能になった当初は照明用の灯油として使い、それまでの鯨油を駆逐していきました。
自動車の普及に伴いガソリンの需要が生まれ、発電や大型船舶の燃料として重油が使われてきました。
ナフサも化学製品、プラスチック原料として使われるようになり、原油を余すことなく使われました。
なので、プラスチックだけを減らしても無駄で、ガソリンも灯油も軽油も重油も全てを減らさなければ意味がないものだと思っていました。
しかし、調べてみると、国内のナフサだけでは化学製品の需要を賄えず、ナフサ単体でも必要量の6割を輸入をしています。
さらにプラスチック原料の樹脂も輸入をしています。
輸入量を減らすためにもプラスチックの減量に一定の意義があることが分かりました。


▲プラスチックの生産、リサイクル、廃棄の流れ(産業環境管理協会資源リサイクル促進センターHPより


 プラゴミは、マテリアルリサイクル(約23%)、ケミカルリサイクル(約4%)、サーマルリサイクル(約58%)の方法でリサイクルされ、一部は焼却・埋立処分(14%)されています。
マテリアルリサイクルは、ペットボトルから作業着を作ったり、発泡スチロールから文房具や日用品を作ったりしています。
きれいに洗って分別しないと再利用ができません。
ケミカルリサイクルは、化学的に分解して、コークス化、製鉄所で使う還元剤、ガス化、油化して、再利用しています。
多少の異物が混入していても再利用が可能です。
サーマルリサイクルは、焼却する時に発生する熱を利用したり、その熱で発電したりしています。
高い発熱量をもつプラスチックをエネルギー源としています。
CO2排出という観点からすると、サーマルリサイクルがそもそもOKなのか疑問もありますが、
無理にマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルなどせずに焼却して熱回収する方が合理的に思います。
不法に海洋投棄などされてしまうよりかは確実に回収して焼却してしまった方が良いようにも思います。


 プラスチック削減を目指すのであれば、プラスチック製容器包装(使い捨てプラ)を全廃するなどの大ナタを振るわなければ何も変わらないと思われます。

▲一般廃棄物の中でのプラスチックゴミの割合(容積比)(環境省HPより

プラスチックの利便性に漬かっている現状では現実的には全廃は難しいですが、「バイオプラスチック」へ置き換えることで実現できそうです。
植物由来の原料で作られているプラスチック(バイオマスプラスチック、緑色エリア)と、土壌中などで分解されるプラスチック(生分解性プラスチック、青色エリア)があります。
できれば右上のエリア(植物由来かつ生分解性のプラスチック)へ移行し、更には海洋生分解性プラスチックに期待したいです。

▲バイオプラスチックのマトリックス(国際環境経済研究所HPより

 先日、小2の息子がふざけて「ちくわ」をストローにして牛乳を飲んでいました。
食べられるストローも有りかも!!と思いました。

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