右斜めには、さっき「箱殿」で合流したばかりの国道308が分岐。
旧街道は真っすぐ進む狭い道。
奈良街道はここからは全く別の姿となり、高度を上げていくんだね。
まさに長かった序章が一転、一気にクライマックスを迎えるのが奈良街道の魅力なのだ。
500mほど進めば、すでに市街地の雰囲気はなく、かつての街道らしさを偲ばせる。
そしてここで右折。
次の角にあるのが「子安地蔵尊」。
ここで左折し、「箱殿東」で別れた国道308と再合流。
国道といっても、車がすれ違うのがやっとの登り坂。
近鉄奈良線のガードを潜れば、ますます傾斜は激しくなり、こんなところが国道なのか?と思ってしまう。
この国308は、旧街道フリークだけじゃなく、酷道ファンにも有名な道だからね。
電柱見ると、間違いなく国道であることを認識できる。
道はさらに狭くなり、車1台が恐る恐るやっと通れる程度。
しかも物凄い坂道とヘアピンカーブ。
行政区域的にはまだ東大阪市なわけなんだけど、もう完全に山の中。
法照寺、なんて名刹もあり、その裏はもはや小さな滝?簡易ダム?状態。
終わることのない登り坂。
両側は山深き森の中。
さすがに足が動かなくなってきた。
悲しいな。
いくら登りが苦手とはいえ、それでもこの足で、東海道も中山道も走ってきた。
鳥居峠、和田峠、碓氷峠も駆けてきた。
50を超えたおじさんランナーになった今、こういう起伏にめっきり弱くなったなぁ。
途中からは歩くのとたいして変わらない状態で、情けない。
ヘロヘロになり、左手に見えてきたのが「観音寺」の石碑。
もっともこれは参詣者用駐車場(というよりただの広場?)で、お寺は右側の一段下がったところにひっそりと佇んでいる。
そしてここからまた延々と山登り…。
こりゃもう、酷道としか言いようがない。
歩くのに毛の生えたような走りで着いたのが、鎌倉時代にはすでにあったとされる卒塔婆と弘法水。
古くから伝わる湧き水で、きっとこの登りでコスモタイガーのようにヘロヘロになった旅人たちの喉を潤してきたんだね。
もっとも現代では飲料不可だから、あらかじめ買っておいたペットボトルのお茶飲むしかないんだけど。
さらに苦しむこと10分。
空が広くなり、民家が沿道沿いにチラホラ見えてきた。
急に緩やかになり、右手に矢田山出迎地蔵尊、というらしい祠が建つ。
足元は石畳に。
着いた!やっと着いた!!
ここが標高455m、暗峠の頂上だ!
大阪府(東大阪市)と奈良県(生駒市)の境界を示す看板が「お疲れさん」と出迎えてくれる。
そして奈良県側にある茶屋の前。
振り返ればそこは、パンフレットや様々なHP等で見たことのある、あの構図だよ。(冒頭写真)
酷道ブームの影響なのか?こんな狭い道に、バイクツーリングする人たちやドライブする若者グループがチラホラと休んでたりシャメしてたりする。
50過ぎのおじさんが汗ダクダクになってる様は、少々かっこ悪いなぁ…。
ここからは下りなんだけどね。
信貴生駒スカイラインの下を急坂を落ちるように潜る。
あまりの狭さとカーブのため、1.8m以上のロングボディー車は通行禁止の看板が立つ。
100m弱下ったところの左側民家の庭にあるのが「本陣跡」の石柱。
そしてここから望む奈良盆地の風景!
この風景と頂上の懐かしい光景がセットになれば、若者受けする理由がわかる気もする。
ここでYの字に分岐しており、国308は右ながら、街道は左で一瞬だけおさらばするけど、100mもしないうちにまた合流。
あとは当分1本道だから、ベースアップして一気に下る。
昔は下りが得意だったなぁ。
中山道も鳥居峠なんかはかなりのペースで下った記憶があるものの(※旧中山道編20参照)、膝痛を抱えつつある今となっては、そこまでの快走は見込めそうにない。
黙々と下って10分少々。
案内板もなく不安になるが、名もなき?お地蔵さんを発見し、旧街道らしき風景にホッとする。
さらに下ると再びY字型分岐。
何と!ここは狭いほうの鬱蒼とした右の道が正解!
鎖がかかり、車は通行禁止。
国道308の標識(通称おにぎり)がなければ怖気づいてしまう。
まぁね、国道は単に「国が管理する道」であって、車の通行を保証するものではないからね。
全国に目を移せば、青森県には階段国道(339号)もあるし、鳥羽と伊良湖を結ぶ国道42号は船でしか渡れないし。
この狭い道沿いに藤尾阿弥陀堂というお堂が安置され、間違いなく街道であることを教えてくれる。
さぁ、少しづつ人家が見えてきて、クライマックスの終焉を告げている。
それでも延々と続く下り坂は健在で、前方に遠かった奈良市街地の遠景も随分近づいたようだ。
道が広くなり、左手に池が見えてきた。
家並みも増え、次のY字路は左へ。
これまた違った意味での街道らしい風景になった。
前方にはくそ暑い中、地元のランナーがゆっくり走っている。(人のこと言えんけど…)
暗峠の案内板は不足してるけど、国308を走ってれば間違いないから、迷うことはない。
生駒南小学校の前を通れば、まもなく「小瀬町西」の交差点は、久しぶりの信号だ。
交わる広い道は、国道168号ね。
竜田川を渡れば、そこに近鉄生駒線の南生駒駅がある。
とはいえ、改札口は残念ながら線路の反対側、東口にしかないらしい。
まだ時刻は14時過ぎだけど、暑い中結構走ったし、何より峠越えたからね~。
でも数字上は恐らく13~14㎞かな…。
奈良県に入ったとはいえ、完全に大阪の通勤圏。
これぐらいならまたすぐ来れるしね。
ってことで、奈良街道はもうしばらく国308と一体になってるんだけど、本日はここでコースアウト。
踏切を渡り、南生駒駅東口ロータリー?をゴールとする。
残念ながらビール売ってそうなコンビニも見当たらないからさっさと帰りましょう。
旅情を求めようとすれば、王子行に乗って大和路線で…なんて方法もちらつくけどさ。
オーソドックスに生駒駅に出て、けいはんな線→大阪メトロで帰るとしましょうか。