5月4日、山梨県北斗市の明野地方は快晴。文句なしのニッポン晴れである。ご近所の農家の庭先には、勇ましくこいのぼりが悠々と泳いでいる。実はこの日はボクの誕生日、なんと厄年真っ只中になってしまった。
今日は明野登山口から、茅ヶ岳という山に登ろうと思う。1700mちょっとの手頃な山だ。冒頭の写真は、日本百名山の明峰、甲斐駒ケ岳だ。12倍ズーム目一杯で山頂付近を撮影してみた。まるで本場アルペンを彷彿させる岩山だそうだ。いつかはチャレンジしてみたい。
明野口の千本桜手前まで車で送ってもらい、そこからのアプローチになる。標高にして700m位だろうか、ちょっと特した感じだ。この千本桜までは車で入ることができ、ソメイヨシノ中心に桜の木がたくさん植わっている。お花見シーズンには盛り上がるに違いない。
通常、茅ヶ岳登山は、交通の便等もあり、深田公園からのアプローチが多い。かの登山家、深田久弥は、この山頂付近で亡くなったそうで、その功績を惜しみ、深田公園と名づけられ、彼の碑もあるとのこと。今回我々は、明野口からのアプローチでほとんど人はいないと思っていたが、1台の車が千本桜の駐車場に停車した。そして初老のご夫婦が我々に道を聞いてきたのだが、どうも深田公園と間違えたらしい。仕方なくここからのアプローチとなった様子で先に登って行かれた。
ボクらはしばらく遅咲きの桜を愛でながら、それとなく心と身体の準備体操を行ってからのスタートとなった。
ほどなく登山道はいよいよだな、という雰囲気を醸し出した。茅ヶ岳はその風貌が八ヶ岳に似た長い稜線を持っている。だからニセ八ヶ岳とか言われることがあるが、本家に比べるとかなりのミニチュアサイズだ。
裾野は長いとは覚悟はしていたが、登るに従って傾斜がきつくなった。写真でうまく伝わるだろうか、この傾斜をひたすら2時間弱は登って行くのだ。今年は年明けに高尾山に登った程度の身体には幾分しんどい行程だった。心臓と相談しながら何度も休憩を挟んで次第に高度を上げて行った。所々に岩場もあり、高所が苦手な人はきっと下を見れないだろうと思われるところもある。ステッキを握る手に力が入った。きっと腕も筋肉痛になるに違いない。
アップダウンを繰り返し、どうにか山頂に到着。狭い山頂には、深田公園方面から来られたと思う団体さん達がたくさんいた。もうどこでもいいので早く座って休みたい。それほど憔悴仕切っていた。
それにしてもここからの眺望は素晴らしかった。360度見渡せて、しかも富士山、南アルプス、八ヶ岳等が快晴のおかげでどれも素晴らしい風貌を見せてくれていた。ちょっと早いけど、昼食の時間だ。オニギリと簡単なおかずに舌鼓を鳴らす。海苔がパリパリとしてて美味い。
お腹が満足してから、もう1度、周りの景色を堪能して感動を覚える。ちょっと雲が出てきたかな、という程度で、日差しがジリジリと肌を焼きだした。
さて、そろそろ次の行程に進むとしようか。目指すはお隣の山、金ヶ岳だ。茅ヶ岳より60m程高い。なのに有名なのは茅ヶ岳なんだよな。
この山とセットで茅ヶ岳登山と言われるような双子山だ。風貌もほとんど似たり寄ったり。ってことは、またしても垂直に近いアップダウンが続くのか?
不安は的中した。もう目の前にある頂なのだが、悲しいことにかなり下までまず下山する。そして実はこの間にもう一山あるので岩場と砂地のアップダウンを繰り返す。なのでものすごく近く感じるのに1時間は有にかかってしまった。こちらの山頂はちょっと地味目ではあったが、眺望には茅ヶ岳と変わりなく明野の集落がすべて見渡せた。そして行きに千本桜で出会った初老のご夫婦にここでご対面。なんという健脚だ。ものすごくペースが早いのでビックリしてしまった。
ここからの下山も急斜面が続くので注意が必要だ。岩場、砂地、枯葉等の滑る要員がたくさんある。しかも断崖絶壁な個所も数箇所あるので肝を冷やしながらの下山だ。東京大学の宇宙線測定所方面に下りることになる。急斜面をやはり2時間近く要して下りると、ここからは長~い裾野だ。ダラダラ坂を引力に任せてただ歩き続けた。
登山道が終わると、一般農道になる。田植えの準備をしている農家や、リンゴの木を世話する農家などの田園地帯が一面に広がっている。風は心地よく日焼けした頬や腕を冷ましてくれている。
もう足はニュートンの法則に逆らうことはできずに、只々ダラダラ坂を下り降りていく。結局、明野に到着したのは夕方の4時を過ぎていた。ざっと7時間半程度の行程となった。
まだ日が高い中で少々熱めの風呂につかり、疲れを癒した。その後の冷たいビール。言うまでもなく至福の瞬間だ。この日は眠気が早めに襲ってきたが、それでも遅くまで山の談義に華が咲いた。