発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

月の満ち欠けが都会人の睡眠にも影響を及ぼすようです。

2021-02-23 07:03:23 | 自殺企図
人間の活動が太陽の光に影響を受けることは数多く報告されています。
例えば、
・不眠症では朝太陽の光を浴びることを推奨
・視力は光を浴びて発達する
等々。
まあ、夜は目が見えなくて活動できない人類では、夜は行動自粛し体を休める生活リズムは自然かもしれません。

ところが、太陽だけではなく、月の明かりも生活リズムに影響を及ぼしているという報告が目にとまりました。
確かに「満月の夜は・・・」という逸話は昔からありますが、科学的裏付けも出てきたようです。

具体的には、
・月の満ち欠けに人間の睡眠時間が連動して変動している。
・満月の前の3~5日は就寝時刻が遅くなり、かつ睡眠時間が短くなる傾向が認められた。
・反対に新月前の数日間は、最も睡眠時間が長かった。
・月齢にあわせて睡眠時間は平均46~58分変動し、就寝時刻は約30分変動していた。
・電気を使わない地域の住民は、月の満ち欠けの影響を確実に受けているが、電気を使う地域の住民にも影響が見られた。
・スマホの明るい光でも睡眠に影響を及ぼす可能性がある。

等々。
夜も明るい生活は、ヨーロッパの産業革命以降でしょうから、たかだか数百年の歴史にすぎません。それまで人類は、夜間は漆黒の中で生活をしてきました。その遺伝子がすぐには変わることはないのでしょう。


 月の満ち欠けが都会人の睡眠にも影響
 月の満ち欠けの周期に同調するかのように、人々の睡眠時間が変動していることを示すデータが報告された。電気の通っていない未開の地の先住民だけでなく、満月か新月かを問わず常に夜の明るい都会の学生でも、月の満ち欠けと睡眠時間の間に関連が見られるという。米ワシントン大学教授のHoracio de la Iglesia氏らの研究によるもので、詳細は「Science Advances」に1月27日掲載された。
 De la Iglesia氏らはこの研究を、アルゼンチンの先住民であるToba/Qomコミュニティーの98人と、米ワシントン大学の学生464人に対して行った。研究の手法は、覚醒と睡眠の状態、および環境光を測定できる機器を手首に装着し、生活してもらうというもの。なお、Toba/Qomコミュニティーの98人は生活条件によって、さらに以下の3群に細分化した。電気を全く使わずに生活している群、電気を若干用いた生活をしている群、電気を十分に使える生活をしている群。
 データ解析の結果、いずれの地域の研究参加者でも、満月の前の3~5日は就寝時刻が遅くなり、かつ睡眠時間が短くなる傾向が認められた。反対に新月前の数日間は、最も睡眠時間が長かった。月齢にあわせて睡眠時間は平均46~58分変動し、就寝時刻は約30分変動していた。
 「電気を使わない地域の住民は、月の満ち欠けの影響を確実に受けているが、電気を使う地域の住民にも影響が見られた。特に、ワシントンに暮らす大学生の睡眠にも月の満ち欠けとの関連が見出されたことは予想外だった」と、de la Iglesia氏は語る。同氏はその驚きの理由を、「都会に暮らす人の中で、今日が満月か新月か、あるいは三日月か半月かなどと、日々の月齢を確認しながら生活している人はほとんどいない。それにもかかわらず、人々の睡眠が月齢に影響されていたからだ」と説明する。
 本研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院睡眠医学センターのSteven Feinsilver氏は、「ヒトの概日リズムの調整に光が重要であることは以前から知られている」と述べている。その上で、近年研究が進められている、青色光の影響についても言及。同氏によると、「20年ほど前まで、青色光の生体への影響はほとんど知られていなかった。現在、青色光は視覚にはあまり影響しないものの、起床すべき時刻や就寝すべき時刻を、脳に知らせる役割を果たしていると考えられている」という。
 月は満月に近づくにつれて徐々に明るくなり、日没後の早い時刻に昇り始める。「われわれは光が生活のリズムにとって重要であることを知っている。恐らく、月明かりほどの明るさであっても、生活リズムの調節に重要であると考えられる」とFeinsilver氏は推察する。一方、De la Iglesia氏は、「古代人は月明かりを利用することで、日没後の遅い時間帯まで、仕事や社会活動をしていたと考えられる。その生活リズムが、現代人にも受け継がれているのではないか」と話す。
 今回の研究で得られた知見についてDe la Iglesia氏は、「睡眠障害の治療に役立つ可能性がある。医師から明るい光やスクリーンタイム(スマートフォンなどの利用時間)を減らすことを指示されている場合、満月に近い時期にはその対策をより強化すべきかもしれない」と述べている。
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「苦しいときは電話して」(坂口恭平著)

2020-09-20 15:32:54 | 自殺企図
苦しいときは電話して」(坂口恭平著)
講談社現代新書、2020年8月発行

自ら双極性障害(昔の躁鬱病)であることを公開し、作家活動ほかをしている坂口氏の最新刊です。
補足すると、「死にたいと思っているほど苦しいときは、私(坂口氏)のスマホに電話してください」ということです。
この電話を「いのっちの電話」と名付けています。

エッ?
個人情報保護が重視されるこの時代に、自分の電話番号を公開?

この疑問は、本を読み終わると解決します。
電話で話すことにより、相手を救い、自分も救われているのですね。

著者は「いのっちの電話」でたくさんのヒトと話をする中で、「死にたい」と思うときは驚くほどその思考回路が似ていることに気づきました。
それを「反省熱」とか呼んでいます。

これは一つの“症状”ではないか?
誰でも陥る可能性のあるパターン化した思考回路ではないか?
ならば対処法があるのではないか?
という斬新な発想。

精神疾患は思春期以降に発症することが多いとされています。
なぜ小学生では発症しないのか?
著者は「生活リズムがキチンとしているから」と推察しています。

朝起きて、ご飯を食べて、学校へ行き、
クタクタになって帰り、風呂に入ってご飯を食べて寝る。
この日課が決まっていると、ヒトは体調を維持しやすい。

しかし自由度が高くなればなるほど、かえって生活は乱れて心も安定しなくなるのではないか、と。
これを根拠に、
「調子が悪くてどうしようもないときは、
調子のよかった頃の生活リズムを思い出して真似てください」
とアドバイスしています。

なるほど、一理あるかもしれません。

それから、「死にたい」と悩んでいるときの体の状況は、
「何かを創造するとき」とよく似ている、という発見をしています。

24時間あなたは悩み考え続けられる状態で、
力が有り余っていて、
もうすでにアウトプット状態に入っていて、
 思考は毎秒外にあふれ出ている

悩むことは言葉が涌いてくること、
 だから「書くヒト」になれる

ここにも目からうろこが落ちました。
確かに、後世に名を残す小説家や芸術家は、精神疾患を病んでいる人が多いですね。

現在でも読み継がれている夏目漱石は神経症、
芥川龍之介は統合失調症と言われています。
北杜夫は自他共に認める双極性障害でした。

北杜夫氏の、
どくとるマンボウシリーズは躁状態の時の作品
自伝的な「木霊」「幽霊」などはうつ状態の時の作品
とされています。
私は後者の作品がたまらなく好きなんです。

坂口氏による自己&他人分析がメインのこの本、
今まで読んだことがないタイプです。
いや、現在精神科領域で行われている「当事者研究」(患者さん自身が自分を分析して語る)に似ているかもしれませんね。
悩める現代人の心の病理への羅針盤になり得る文章だと感じました。
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Google、Yahooなど検索サービス7社、自殺予防で連携強化

2017-12-20 06:13:40 | 自殺企図
 自殺対策にインターネット業界が動き出しました。
 スマホのLINEは入っていない?

■ Google、Yahooなど検索サービス7社、自殺予防で連携強化
2017年12月18日:井上輝一,ITmedia
 グーグルを含めた、インターネット検索サービスを提供する7社は12月18日、臨時の会合で自殺予防に関する各社の取り組みを共有し、自殺予防へ連携を強化することを確認した。

インターネット検索サービスを提供する7社が自殺予防に関する連携を強化
 会合に参加したのは、NTTレゾナント、ビッグローブ、ヤフー、グーグル、日本マイクロソフト、ニフティ、NTTドコモの7社。2017年10月に起きた座間市で9体の遺体が見つかった事件を受け、事業者でも再発防止に取り組んでいくという。
 この会合では、「死にたい」「自殺したい」などの自殺願望と関連するキーワードに対して、相談機関の連絡先を表示する取り組みなど、各社が自殺予防のために実施してきた取り組みの情報共有を行った。
 会合には厚生労働省、総務省、経済産業省も参加。厚生労働省は、従来の電話相談窓口にとどまらず、メールやSNSによる相談を受け付ける窓口を準備しているという。
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自殺企図後も生き続けるためのプロセス

2017-03-16 06:29:34 | 自殺企図
 自殺企図、どん底から抜け出す方策を検討した報告を紹介します。
 概念的なのでピンときませんが、自己コントロールのスキルが関係するようです。
 すると、日本で行われている認知行動療法も有用ということになりそう。

■ 自殺企図後も生き続けるためのプロセス
2017/03/16:ケアネット
 うつ病は、自殺や自殺企図の強力な危険因子である。これまでの研究では、自殺企図へのパスウェイについて検討されてきたが、自殺克服のために重要な点について検討した研究はほとんどない。スウェーデン・ルンド大学のLisa Crona氏らは、自殺企図後、生き続けるための個人の戦略について検討を行った。BMC psychiatry誌2017年2月13日号の報告。
 理論に基づく定性的なアプローチを用いた。1956~69年に重度のうつ病と診断された元入院患者13例を対象に、最後の自殺企図(21~45歳時に経験)から42~56年フォローアップを行った。2013年6月~2014年1月までに1度、半構造化インタビューを用いて調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・自殺企図へのパスウェイは「抵抗できないほどの状況に追い込まれた」と定義した。
・回復プロセスは「プロフェッショナルケア」「個人の状況での緩和」「生き続ける決断」の3つのカテゴリで構成されていた。
・これらのカテゴリから「コントロールを取り戻すことによって自分自身をケアする」とラベルされたコアカテゴリが浮かび上がってきた。
・うつ病からの回復とは無関係に自殺の克服が起こっていた。

 著者らは「自殺企図後のケアは、非常に長期的であり、回復プロセスは多面的かつ変動的である。適切な治療、他者とのつながり、意思決定問題の克服が必要となる」としている。



<原著論文>
Crona L, et al. BMC Psychiatry. 2017;17:69.
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