双極性障害はDSM-Ⅴから「双極症」と訳語が変わったそうです。
それに伴い、診療ガイドラインも「双極性障害(双極症)2023」として改定されました。
こちらの記事からポイントを拾ってみました。
・薬物療法と並んで推奨されている心理教育を実臨床で実施しやすいよう、現場で実施可能な「ミニマム・エッセンス」を推奨。
1) 規則正しい生活習慣の維持
2) 病状悪化につながる要因の把握
3) 悪影響を与える問題への対応
4) 新たな再発の兆候把握と予防策の策定・実践
5) 疾患への誤解やスティグマの解消
6) 効果的な薬物療法の実現
7) 物質乱用や不安への対応
2) 病状悪化につながる要因の把握
3) 悪影響を与える問題への対応
4) 新たな再発の兆候把握と予防策の策定・実践
5) 疾患への誤解やスティグマの解消
6) 効果的な薬物療法の実現
7) 物質乱用や不安への対応
・患者の大きな関心事の一つである周産期に関する記載も充実させ、「双極性障害を持つ人も子を持つことを妨げられるべきでないことは当然」である旨を明記。
・抑うつエピソードの治療と維持療法において、第2世代抗精神病薬(クエチアピン、ルラシドン、オランザピン)と気分安定薬(リチウム、ラモトリギン)の併用を初めて推奨。
・今回、双極症という疾患名を併記したのは、2022年3月に発行されたDSM-5-TRの日本語版が今年6月に発行され、「bipolar disorder」の日本語訳が「双極性障害」から「双極症」に変更されることを受けたもの。
私が「おや?」と感じた点は、
リチウムなどの気分安定薬が基本ではあるものの、
第二世代抗精神病薬の併用が明記されたことです。
従来は「躁転」のリスクがあるため、
実際には行われているものの、
ガイドラインには記載されないという矛盾がありましたので。
(加藤Dr.の意見)
・これまでの研究から、私は、感情に関わる神経細胞におけるカルシウムシグナリングの変化が病因と考えています。遺伝的要因などで、神経細胞内のカルシウム濃度が高くなりやすく、細胞の興奮性が上がりやすい、その結果、感情(情動)と認知のバランスが偏る、という機序です。そのため、細胞のカルシウム濃度を下げるリチウム、細胞の興奮性を抑えるラモトリギン、セロトニンを介して神経回路の興奮性を下げる第2世代抗精神病薬の併用が有効と受け止めています。
・情動性が高まると論理的に考えることが難しくなり、白か黒かという二律背反の考え方が主体になります。そのため、薬物療法に加え、そのバランスを改善する、認知行動療法などの心理教育の併用も有効というわけです。
・2000年前半までは、見逃される患者が多かったと思います。抗うつ薬投与で躁になる(躁転)リスクがあるため、双極性障害の存在を疑うよう、うつ病のガイドラインなどでも強調してきました。
・昨今は、地域差はあるかもしれませんが、都心部では、特に双極II型障害は、疑い例も含めて、過剰診断が多いように感じています。実際、双極性障害として私の外来を受診する患者の約半数は半構造化面接では双極性障害とは診断されません。
・軽躁病エピソードがないにもかかわらず、うつ病が治らなかったり、うつ症状の再発を繰り返すから双極性障害だと考えるべきではありません。
<参考>
▢ 双極性障害に「心理教育のミニマム・エッセンス」を推奨
〜順天堂大学医学部精神医学講座主任教授の加藤忠史氏に聞く