発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

自傷行為を行った10代、自殺リスクは17.5倍/BMJ

2017-10-27 06:33:44 | 精神科医療
 ある人に言わせると、人間が自殺をするときは正気を失っている状態である、なぜなら自分が死ぬことによる周囲への影響を想像する能力がなくなっているから、だそうです。
 
 私は10代の自傷行為の場合、「周囲へのアピール」「周囲への影響を考えた上での自殺」もありかと思います。
 人間関係、とくに親子関係と関連が深い。
 女児の摂食障害が母親への復讐という要素が指摘されているのと同様に。

■ 自傷行為を行った10代、自殺リスクは17.5倍/BMJ
2017/10/27:ケアネット
 2001~14年の間に、英国に住む13~16歳の女子で自傷行為が68%増加していたことが明らかとなった。英国・マンチェスター大学のCatharine Morgan氏らが、地域住民を対象に、10代の若者における性別および年齢別の自傷行為発生率の経時的傾向、臨床管理パターン、自傷行為エピソード後の死因別死亡リスクを調査したコホート研究の結果を発表した。近年、小児および青年で自殺率が上昇していることや、精神的苦痛を訴える若年者の急増が報告されているが、非致死的な自傷行為の発生率については国のデータ源がなく定量化が困難であった。著者は今回の結果を踏まえ、「自傷行為増加の原因となるメカニズムをよく理解し、苦しんでいる子供たちへの支援に取り組むことが、公的機関にとって喫緊の課題である」とまとめている。BMJ誌2017年10月18日号掲載の報告。
自傷行為の発生率とその後の死亡率を調査
 研究グループは、英国のプライマリケア674施設における440万例超の患者記録を含むデータベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)、病院データ(Hospital Episode Statistics:HES)、国家統計局(Office for National Statistics:ONS)の死亡記録と、社会経済的貧困の度合いについてはIndex of Multiple Deprivationを用いて検討を行った。
 記述的分析として、2001~14年の間に自傷行為を行った10~19歳の患者1万6,912例のデータを調査した。また、このうちHESとONSに該当した8,638例について、年齢・性別・施設をマッチングさせた対照計17万274例とともに、自傷行為後の死因別死亡率について解析した。
 主要評価項目は、第1に性別および年齢別の自傷行為年間発生頻度の経時的傾向、第2にメンタルヘルスサービスへの紹介や向精神薬の処方等の臨床管理、第3に全死因死亡・不慮の死(自殺や事故死など)・致死的急性アルコールまたは薬物中毒の相対リスクであった。
自傷行為は女子に多く、とくに13~16歳の女子で発生率が急増
 自傷行為の年間発生頻度(/1万人)は、男子が12.3に対し女子で37.4と高く、とくに13~16歳の女子では2011年の45.9から2014年の77.0へと68%増加した。
 社会経済的貧困度が高い地域でプライマリケア施設に登録された若年患者の自傷行為発生頻度は非常に高かったが、自傷行為エピソード発生後12ヵ月以内のメンタルヘルスサービスへの紹介率は、社会経済的貧困度が最も低い地域の患者と比較して23%低い傾向がみられた。
 自傷行為を行った小児および青年は、追跡期間中に不慮の死を遂げるリスクが約9倍高く、とくに自殺(社会経済的貧困を補正したハザード比[HR]:17.5、95%信頼区間[CI]:7.6~40.5)、致死的急性アルコールまたは薬物中毒(34.3、10.2~115.7)のリスクの顕著な上昇が認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)

<原著論文>
Morgan C, et al. BMJ.
2017;359:j4351.

ベンゾジアゼピンの処方制限について

2017-10-22 19:24:48 | 精神科医療
 昔、自殺目的で使われたバルビツール系睡眠薬より副作用は少なくなりましたが、その後に登場したベンゾジアゼピン系睡眠薬も薬物依存という面から安全とはいえません。

■ ベンゾジアゼピンの処方制限、俎上に
2017年10月18日:朝日新聞
中医協、「精神医療」で集中議論
 中医協総会(会長=田辺国昭・東京大学大学院教授)が10月18日、厚生労働省内で開かれ、2018年度診療報酬改定に向けた精神医療の方向性について集中的に意見交換を行いました。厚生労働省は向精神薬の処方実態を説明した上で、睡眠薬や抗不安薬などに含まれるベンゾジアゼピンの依存性を考慮し、向精神薬の薬剤数や処方期間の制限について意見を求めました。

英仏は処方期間を制限
 向精神薬に含まれるベンゾジアゼピンは、承認用量の範囲での処方であっても連用によって薬物依存が生じることがあると指摘されています。投与期間を制限している国もあり、厚労省の説明によると、英国では「処方期間は漸減期間を含めて最長4週まで」と注意喚起しています。フランスはベンゾジアゼピンの誤用を減らすためのアクションプランを発表しており、「不眠治療には4週まで」「不安治療には12週まで」と継続処方期間に制限を設けています。
 向精神薬には抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬などが含まれます。ベンゾジアゼピン受容体作動薬は抗不安薬や睡眠薬として数多くの薬剤が承認され、臨床現場で幅広く使用されており、このことがベンゾジアゼピンの重複問題を複雑化しています。日本国内での副作用報告の分析結果によると、依存・離脱症状関連事象の上位5品目は、エチゾラム(720件)、アルプラゾラム(179件)、トリアゾラム(163件)、ゾルピデム酒石酸塩(129件)、クロチアゼパム(121件)となっています(販売開始から16年6月までの報告件数)。いずれもベンゾジアゼピン受容体作動薬です。厚労省では3月21日、ベンゾジアゼピン系薬剤の製造販売業者に「使用上の注意」を改訂するよう指示しています。

3種類以上の処方、なお3割
 近年は改定の度に診療報酬上の見直しが行われています。12年度以降は同一薬効の向精神薬が3種類以上処方される場合には、処方せん料などが減算になっています。精神科では原則として精神科継続外来支援・指導料が算定できない仕組みとなっています。
 それでも向精神薬の処方されている患者さんの29%に、処方せん料などが減算対象となる処方が行われていました(16年6月現在)。向精神薬の多くが1処方当たりの投薬期間の上限が「30日以内」となっていることに加え、処方の継続に制限がないことが問題の根底にあります。厚労省は、向精神薬を1剤以上含む処方の80%以上が、投薬期間が22日以上だったとのデータも示しました(16年12月現在)。
 こうした状況から厚労省では次期改定で向精神薬の薬剤数や処方期間の取り扱いを見直したい考えです。英国やフランスのように投与期間に制限を設けることや、薬局での分割調剤を評価することも視野に入れ、今後さらに議論を深めていくことになります。

「65%が精神科以外」 健保連調査
 健康保険組合連合会(健保連)理事の幸野庄司委員は、向精神薬は精神科だけでなく一般の診療所で制限なく処方されている実態があるとし、「この状況を放置すると大きな社会問題になりかねない」とベンゾジアゼピンの連用に歯止めをかけるよう強く主張しました。
 幸野氏は間もなく公表するという健保連の調査結果に触れ、14年10月から16年9月までの2年間の医科外来・調剤レセプト1億6000万件のデータを調査した結果を示し、抗不安薬・睡眠薬のみが1種類以上処方されたレセプトが全体の3%に当たる530万件あったと紹介しました。また、処方した医療機関をみると精神科を標榜している医療機関は約35%で、残りの約65%は精神科以外の一般の診療所や病院だったと説明しました。
 抗不安薬や睡眠薬が3種類処方されている場合、処方薬の上位15位までがすべてベンゾジアゼピンの組み合わせで、1種類の処方の場合でも上位20位のうち17種類がベンゾジアゼピンだったとも説明しました。
 診療側委員はこうした指摘に対し、精神科以外の医師が向精神薬を漫然と処方しているわけではないなどの意見を示しました。

クロザピン使用促進で厚労省案
 総会では、治療抵抗性統合失調症への治療薬であるクロザピンについて、海外では処方率が25~30%となっているのに対し、国内では0.6%にとどまっている状況が示されました。クロザピンは治療抵抗性統合失調症に対し、30~70%で症状の大幅な改善や一部改善が期待される薬剤です。その一方で重大な副作用として無顆粒球症が知られており(国内での頻度は約1%)、国内ではクロザピン患者モニタリングサービス(CPMS)の体制整備が製造販売承認の条件として課せられました。
 厚労省は、普及を遅らせている原因として患者モニタリング体制とともに、クロザピンの1日当たり薬価が他の非定型抗精神病薬に比べて2~10倍高いにもかかわらず、精神療養病棟入院料の中に薬剤費が包括化されていることを挙げました。そこで次期改定で同入院料の包括範囲からクロザピンの薬剤費を外すこと含めて見直すことを提案しました。

措置入院や精神保健指定医も
 精神医療について集中的に意見交換を行ったこの日の総会では、神奈川県相模原市での障害者殺傷事件を踏まえ、措置入院患者が退院した後の継続的な連携体制や精神保健指定医にかかわる診療報酬の見直し、長期入院患者の地域移行(アウトリーチ)先の対象拡大、精神科救急入院料の評価見直し―などが議題となりました。


 もう一つ、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の記事を。
 アルプラゾラム(商品名ソラナックス、コンスタン)についての論文に対する専門家からの提言。

■ ベンゾ系薬の安全神話がいまだに残っているのか?
北里大学精神科学主任教授・北里大学東病院院長 宮岡等
2017年10月19日:メディカル・トリビューン

論文の背景:不適切な使用に関する検討は不十分
 ベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾ系薬)のアルプラゾラム(商品名ソラナックス、コンスタン)は、パニック障害をはじめとする不安障害の患者に広く用いられている。適切に用いれば、安全で効果は大きいが、危険性や効果が十分考慮されていない処方が少なくない。このたび、こうした背景を踏まえた総論がJ Addict Medに掲載された(2017年8月2日オンライン版)。アルプラゾラムの適応、妊婦への影響、乱用、退薬症状などを振り返り、適切な処方を考えたい。〔関連記事:宮岡等氏のDoctor's Eye〕

論文のポイント:半減期が短く作用が強い薬剤特性を知ろう
 全てのベンゾ系薬で乱用、快楽を得るための使用、身体依存が認められる。これらが他の薬剤に比べてアルプラゾラムで多いのは、血中の半減期が短く作用が強いため、中止時や漸減時に症状が再燃しやすいことが考えられる。
 アルプラゾラムは他のベンゾ系薬に比べて大量服薬時の中毒性が強いため、希死念慮、アルコールや薬物依存などがある場合は避けるべきである。短期間、徐放薬(日本では未承認)を用いるという方法は乱用を減らすかもしれない。
 アルプラゾラムを妊婦に用いた場合は、新生児に鎮静や退薬症状が起こりやすいことから、妊娠中や授乳中は投与を避ける。また、グレープフルーツのようにCYP3A4を阻害する物質との併用は避ける。
 減量時は1週間に0.125mgを超えないことが推奨されている。退薬症状を減じるために、作用時間が長いクロナゼパムやガバペンチンへの置換も考える。
 アルプラゾラムを処方する場合、医師は治療計画を立て、副作用や効果について書面で患者に説明し同意を得ること、患者が希望しても規定の用量を超えて増量しないことが求められる。今後、アルプラゾラム徐放薬が乱用に及ぼす影響や退薬症状に有効な薬剤などの検討が求められる。

私の考察:ベンゾ系薬は少量から開始し漸増を
 本レビューは、日本でも広く用いられているベンゾ系抗不安薬であるアルプラゾラムの問題点や用い方を取り上げている。アルプラゾラムは作用が強いことで知られるが、ここでの記載はベンゾ系薬の全てに当てはまると考えてよい。
 表に代表的なベンゾ系抗不安薬の特徴を示した。力価については議論があるが、おおむねこの程度の差があると考えてよい。

表. ベンゾジアゼピン系抗不安薬の薬物動態


(上村恵一、他編. 『がん患者の精神症状はこう診る 向精神薬はこう使う』 東京、じほう、2015年より一部改変引用)

問題点1:薬物依存につながる不適切使用
 近年、日本で抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬などの多剤大量処方が問題となっている。大別すると2つの問題があり、1点目は本レビューでも強調されている「不適切使用」である。患者が希望するままの処方や複数の医療機関からの同系統の薬剤処方は、薬物依存につながりやすい。
 かつては、薬物依存の治療を求めて来院する患者で最も多い原因薬物が覚醒剤で、次に多いのはシンナーなどの有機溶剤であった。しかし最近は、ベンゾ系薬を中心とする鎮静薬が第2位となったとの報告もある。医師は乱用薬物の供給元にならないよう、慎重な処方が求められる。

問題点2:副作用を考慮しない安易な処方
 多剤大量処方の問題の2点目は、処方量自体は不適切とは言い切れないが「副作用を考慮しない安易な処方」である。
 臨床でよく遭遇するのは、不安感、憂うつ感、不眠などに対して処方されたベンゾ系薬によって
①日中の眠気が増悪している
②足下のふらつきが強まっている
③中止や減量によって、不安感や憂うつ感が増悪している
④副作用として精神症状が現れている
―などである。
①は特に高齢者で多く見られ、実は薬剤のせいでぼーっとしている状態が、うつ状態や認知症と誤診されることが少なくない。
②では筋力低下もあるが、臨床では副作用としての運動失調が目立つ。特にベンゾ系薬による運動失調は、患者が失調症状を自覚していないことが多いため、転倒につながりやすい。
③では、精神疾患における原病の症状と治療薬の退薬症状が似ていることを念頭に置く必要がある。不安障害の治療にベンゾ系薬を用いて軽快し、減量を図ったときに見られる不安は薬剤の減量による不安障害の増悪、または薬剤の退薬症状のいずれの可能性もある。患者は「癖になった(薬物依存になった)」と考えやすく、処方開始時に薬剤の効果や副作用の慎重な説明が不可欠である。
④では「全ての精神疾患治療薬には精神症状の副作用がある」という当然の事実が軽視されやすい。特にベンゾ系睡眠薬を開始したら夜中の興奮が強まったなど、鎮静目的の薬剤には興奮させるという副作用がある。最近は抗認知症薬の副作用として見られる患者にもよく遭遇する。

 これらはあたかも副作用が弱いかのように宣伝されるスポレキサント(商品名ベルソムラ)やゾルピデム(同マイスリー)、肩凝りなどの身体症状治療薬と理解されやすいエチゾラム(同デパス)でも同様の注意が必要である。
 30年くらい前の精神科の教育では、BZD系薬を「これまでのバルビツール酸系薬などに比べて有効性も安全性も高い薬剤」と教えていたように思う。日本の現状を見ると、一般診療、精神科診療のいずれにおいても、この安全神話を払拭できていないのかもしれない
 筆者自身は適切な面接や中止しやすい抗うつ薬などを適切に用いることで、ベンゾ系薬を用いる場面が極端に減っている。過度に処方を控える必要はないかもしれないが、副作用が強く、中止するのも難しい薬剤であることを医師が理解し、少量から開始し漸増すべきである。筆者は、特に高齢者では最小錠剤の3分の1程度の量から開始することが多い。また減量時は漸減する。本レビューにあるように、処方時に文書で説明するくらいの慎重さがあってよい。

歳を取ると眠れなくなる

2017-10-21 07:10:05 | 不眠症
 私が加齢とともに感じ始めた体の不調は、不眠症と便秘です。

 不眠は夏を中心とした中途覚醒。
 ただ、いろんなTV番組を見ると、歳を取ると眠りが浅くなるのは自然なこと、最近は昼間の生活に支障がなければ病的に考えないようですね。

 便秘の方は、それまで毎朝快便でしたが、アラフィフになってその習慣が崩れてきました。
 野菜、オリーブオイル、オリゴ糖などを積極的に食べるようにして、現在は以前に近い状態に戻りつつあります。

 さて、気になる「中途覚醒」の記事を見つけました;

■ 年とともに増える「中途覚醒」の防ぎ方は?
 〜睡眠時間は年相応に、過眠に要注意!
(2017/10/20:日経Gooday)
 睡眠の途中で目が覚める早朝覚醒を起こす人は年をとるほど増える。
 不眠症状は大きく3つに分けられる。ベッドに入ってもなかなか寝つけない「入眠困難」、深夜に目が覚めてしまう「中途覚醒」、必要以上に早く目覚めてしまう「早朝覚醒」だ。
 このうち、最も多いタイプが中途覚醒。日本大学医学部精神医学系の内山真さんは「中途覚醒と早朝覚醒は年をとるほど増えることが分かっています」と指摘する。
 成人2559名を対象にした内山さんらの調査によると、週に3回以上中途覚醒がある人は、男性は40~50代が10.5%に対して60歳以上は23.1%、同じく女性は40~50代が14.5%に対して60歳以上は19.9%だった。全体では40~50代が12.7%だったのに対して60歳以上になると21.2%に増えている。
 中でも多いのは尿意で目が覚めること。若い頃はいったん眠ってしまえば朝まで目が覚めなかったものだが、中高年は夜中にトイレに起きることが珍しくなくなる。悩んでいるのはアナタだけではない。50代になると、実に60%以上の人が夜中にトイレに行くようになるという報告もある(日本排尿機能学会誌 14(2):266-77,2003)。
病気が潜んでいる可能性も
 では、どうして年を取ると中途覚醒が増えるのだろう?
 「一番の原因は、睡眠が浅くなって目が覚めやすくなること。腎臓や膀胱など、泌尿器の機能が低下して排尿回数が増えることもあるでしょう」と内山さんは話す。男性の場合、膀胱の下についている前立腺が肥大してトイレが近くなることもある。
 一晩に1回、目を覚ます程度の場合は、後述する生活習慣の改善によって中途覚醒を減らせる可能性も高い。しかし毎晩2回も3回も目を覚ますようなら問題だ。また、「中途覚醒が多いのに昼間は眠くて仕方がない場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)や周期性四肢運動障害(睡眠中に手足が動くことで目が覚めやすくなる)といった病気が潜んでいるかもしれません」と内山さん。
 SASは睡眠中にしばしば呼吸が止まる病気だ。原因は舌の根元が落ち込んで気道がふさがることで、大きないびきをかく。呼吸が止まるたびに睡眠が浅くなるので睡眠不足になり、中途覚醒も起こしやすくなる。いびきが気になる人は睡眠の質や呼吸の状態を調べる「簡易型PSG検査」を受けてみるといいだろう。料金は保険適用で3000円程度。全国の睡眠障害を扱うクリニックで受けられる。
 ストレスが強いと眠れなくなることは広く知られているが、症状は入眠困難だけではない。眠れたとしても睡眠が浅くなるため、中途覚醒も起こしやすくなるという。また、「悪夢を見て中途覚醒を起こすことが多い人はレム睡眠(筋肉は休んでいるが、脳は働いていて夢を見る睡眠)に障害がある可能性がある」と内山さん。これらの病気の可能性が疑われる場合、早めに受診することが大切だ。
 病気ではなく、単なる老化現象の一つだとしても、中途覚醒はあまり気分のいいものではない。できれば昔のように、朝までぐっすり眠れるのに越したことはないだろう。そこで、「中途覚醒の防ぎ方」を内山さんに聞いた。

1. ベッドにいる時間を短くする
 年を取ると基礎代謝が落ちるため、必要とする睡眠時間が短くなっていく。一般に10年で10分ほど短くなり、平均睡眠時間は25歳で7時間、45歳で6時間半、65歳で6時間程度になっている(Sleep. 2004 Nov 1;27(7):1255-73)。
 「睡眠は長ければ長いほどいいわけではありません。必要な睡眠時間が短くなっているのに、若い頃と同じ時間眠ろうとすれば、当然睡眠は浅くなります。特に男性は年を取ると朝型になって早く眠るようになる。そのため、睡眠時間が必要以上に長くなりがち。実際、ベッドにいる時間を30分短くすると、中途覚醒が治る人は多いですよ」(内山さん)
 一見、荒療治のようにも思えるが、深刻な睡眠不足が続いていれば中途覚醒は起きにくくなるだろう。睡眠時間を短くすれば、睡眠は深くなる。就寝時刻を30分遅くしてもいいし、起床時刻を30分早めてもいい。内山さんによると、「睡眠時間が同じでも、布団の中で眠れずに過ごした時間が長いと起きたときの不快感が強くなる」という。中途覚醒が気になる人は、ぜひ試してほしい。

2. 定期的に運動する習慣を持つ
 疫学調査から、運動の習慣がある人は中途覚醒を起こしにくいことが確認されている(過去記事「運動の習慣で「睡眠が若返る」!」を参照)。そのメカニズムははっきり解明されていないが、単に疲れて眠くなるわけではない。1日だけ運動した場合と比べても、長期的に運動を続けていると深い睡眠が増え、中途覚醒が減っていた(Sports Med. 1996 Apr;21(4):277-91)。

3. 寝る前は必要以上に水分を取らない
 睡眠中は意外に汗をかく。脱水を心配して、就寝前後にコップ1杯の水を飲むことを習慣にしている人もいるだろう。起きてから飲むのはいいのだが、就寝前の水分補給は要注意。もしかすると、それが夜中のトイレの原因になっているかもしれない。
 「寝る前に水を飲めば、確実に夜中にトイレに行きやすくなります。それを気にして水を飲まないようにするのは良くありませんが、のどが渇いていなければ無理に水を飲む必要はありません」と内山さん。
 ちなみにSASがあると、睡眠中にのどが渇くだけでなく、尿の量も増えるという。「呼吸が止まると心臓への血液流入量が増える結果、体内の水分が多すぎると判断され、排出しようとする働きが強くなるため」(内山さん)だ。

4. 寝酒をしない
 この連載でも何度か触れているように、寝酒は決して快眠につながらない。少量のアルコールはむしろ興奮作用があるし、大量に飲んだ場合は寝つきだけは良くなるが、睡眠が浅くなって中途覚醒を起こしやすくなる。「アルコールには利尿作用があるので、尿意も感じやすくなります」と内山さん。寝酒は睡眠全体に悪影響を与えるが、とりわけ中途覚醒を招きやすいことを覚えておこう。


 自分に当てはめてみると・・・
 私は50歳代半ばなので、本来の睡眠時間は6時間〜6時間半程度ですね。
 中途覚醒対策の生活習慣、守ってないこと多し。
 2の運動はしないし、3と4は寝酒で水分を摂っているから×だし・・・でもトイレのために中途覚醒することはないなあ。

 昨夜は11時半に床につき、午前1時半に目が覚め、その後1時間毎に目が覚めつつ朝を迎え、起床時間は5時前でした。
 これって健康的? いや不健康?

うつ病になりやすい性格とは?

2017-10-12 05:55:44 | うつ病
 うつ病に関する記事を2つ。
 一つ目はうつ病になりやすい性格という興味深い題ですが、内容は今ひとつピンときません。

■ うつ病になりやすい性格
ケアネット:2017/10/10
 3つの性格特性、神経症(neuroticism)の傾向、外向性(extraversion)、適度な誠実性(conscientiousnes)の相互の影響が、健常な人々の抑うつ症状を予測している。この効果が、引きこもり(withdrawal)、勤勉(industriousness)、熱意(enthusiasm)といった3つの低次特性によって引き起こされるかを、米国・Centre for Addiction and Mental HealthのTimothy A. Allen氏らが検討し、この相互の影響を臨床集団内で初めて複製した。Journal of personality誌オンライン版2017年9月16日号の報告。
 対象は、健常成人376例(サンプル1)、うつ病患者354例(サンプル2)。性格および抑うつ傾向の測定には、サンプル1においてはBig Five Aspect ScalesとPersonality Inventory for DSM-5を用い、サンプル2においてはNEO-PI-RとBeck Depression Inventory-IIを用いた。
 主な結果は以下のとおり。

・引きこもり、勤勉、熱意が相互に影響を及ぼし、両サンプルの抑うつ傾向を予測した。
・相互パターンは、「3つの中で最良の2つ」の原則を支持していた。すなわち、2つの特性における低リスクスコアで、残る1つの高リスクスコアを防ぐことが示唆された。
・また、「3つの中で最悪の2つ」の原則も存在し、2つの高リスクスコアは、3つすべてが高リスクスコアの場合と同等の抑うつ症状重症度との関連が認められた。

 著者らは「これらの結果は、精神病理学における性格特性の相互効果を調査することの重要性を示唆している」としている。


 2つめはうつ病の治療に関する記事。
 うつ症状に抗うつ薬が効かない場合、双極性障害など他の疾患の可能性を探ることは常識と思われますが、それを裏付ける内容ですね。

■ 治療抵抗性うつ病、抗うつ薬併用 vs.抗精神病薬増強
ケアネット:2017/10/12
 治療抵抗性うつ病患者は、抗うつ薬の併用療法(ADs)または第2世代抗精神病薬(SGA)の増強療法(SGA+AD)で治療されるが、臨床的特徴、SGA+ADへの治療反応と独立して関連する因子、アウトカムの経過についてはよくわかっていない。カナダ・マギル大学のGabriella Gobbi氏らは、治療抵抗性うつ病に対するADsおよびSGA+ADの治療効果について検討を行った。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年9月12日号の報告。
 2回以上の抗うつ薬治療に抵抗性を示した、治療抵抗性うつ病患者86例(ADs:36例、SGA+AD:50例)を対象に、最近の安定した試験(約3ヵ月間、投薬変更なし)に関して自然主義的研究を行った。MADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)、HAM-D17(ハミルトンうつ病評価尺度)、その他の尺度による評価は、最近3ヵ月間の安定した試験の前(T0)と後(T3)に実施した。
 主な結果は以下のとおり。

・SGA+ADでは、ADsと比較し、精神病理的特徴を有するうつ病、パーソナリティ障害および物質使用障害の合併、ADsに対し治療抵抗性を示した回数、全尺度におけるT0での抑うつ症状について、それぞれの割合の増加が認められた(p<0.001)。
・SGA+AD、ADsともに、T0と比較し、T3におけるMADRSおよびHAM-D17で抑うつ症状の有意な軽減が認められた(p<0.001)。SGA+ADは、平均スコアのより大きな低下を示した。
・ロジスティック回帰分析では、精神病理的特徴、パーソナリティ障害、物質使用障害が、SGA+AD療法と独立して関連していることが示された。

 著者らは「SGA+AD後にうつ症状の改善がより大きければ、精神病理的特徴、物質使用障害、パーソナリティ障害を伴う重度の治療抵抗性うつ病に対し、SGAによる増強療法は第1選択の治療法とすべきである」としている。