オランダから見た大同染工 ー3-
1961年(昭和36年)オランダ「ブリシンゲン社」の技術者が極秘に旧大同染工を見学した報告書から
ローラープリント
6台の捺染機があり、すべて48吋 プリント巾である。一つの部屋にあった 2台を見たが、 1台はかなりの数の色があった。それは 12色刷りの機械であった。その捺染機では 4色のイミテーションワックスデザインが高速でまわっていた。機械に はスピード計がなかった。 速さを聞くと 営業部長は、『30ヤード/分』の速度という。 私が 『そんなはずがない』というと、彼はそばにいた捺染士に聞いた。 『90ヤード/分』と応えた。 これもまた本当ではないだろう。 多分、『70~80 ヤード/分』 ぐらいの速度といったところだ。
捺染される生地はロールに巻かれたものを機械に注入された。つまり生地導入の際の指示は機械の所で、通常捺染士か立っている所でなされていたわけである。
“15分ランプ”は機械についていなかった。」
【 注;― 大同で加工する生地は 1反120ヤードの生地で、3000ヤールの加工なら25反、あらかじめ数えてあるから、生地導入は捺染士の指示でできる。外国は乱ヤードの生地が多いから捺染機の所に“長さ測定機(指定長でランプがともる)“が必要である。 おそらく生地係がチェックしていると、推定される。】
「機械の前部に1人が生地の導入方向を修正する作業に従事しており、もう1人が色糊を入れる作業を担っていた。捺染士は機械の周りを旋回しており、後部には3人がついていた。( ふり落ち 1人と アンダー返し2人 計1台に6人)
これが一つのパターンで、隣の2番目の機械ではちょうど、型ロールが交換されていた。こちら(大同)は、単純な イミテーションワックスのパターンを非常に高速でつくるところだが、実際のローラープリントのところでは、とても綺麗なアメリカ向けポプリンもつくられていた。これはおそらく彫刻は《ペンタグラフ》のデザインであろうが、非常に鮮明な輪郭のはっきりしたプリントができており、とても高い品質と言わざるを得ない。
それをプリントするときはあれほど(1番目)高速ではないと思われるが、見ていないので何とも言えない。従って高速で生産される『バルク商品』と並んで、ヨーロッパ市場向けのとても良い品質のものが同じ工場でつくられていた。
プリント職場は 48時間/週 しか稼働していなかった。」
【 注:― ヨーロッパでは24時間稼働が常識 ? 大同でも殆どの職場(精練漂白、スクリーンプリント、仕上など)は24時間稼働。】
「何故そうなのかと聞くと、日本では資本と労働価格の関係から(私はそう思っていなかったのだが)こう言われた。『48時間/週 以上稼働させると多くの損害を生み出す』。重ねて何故それ以上回すと必ず損害が出るのか尋ねると、『常勤で回した方が品質がよい』」との応えで、それをもって会話は終わってしまった。」
「我々と比べると平均生産量/時間は非常に大きいに違いない。48時間/週は大体 200時間/月/機械 である。6台の機械では 1.200時間と、下方に見積もった場合ではあるが、それでも 20反(2,000ヤード)/時 となる。これは我々の生産速度の倍である。
これには当然ながらいくつかの要因がある。
1.単純な彫りだけで高速で生産されている。いいかえると重色が必要な写真版がない。
2.単純な手順であり、複数の工程を必要としない。我々がジャバ・プリントでとるような複数工程ではない。(注:防染のしごき2度捺染のような)
3.銅板印刷は全くない。銅板印刷をするとき我々はわずかであるが、時間を失っている。
【 注:― ブリシンゲン社はどんな銅板印刷をしていたか?逆に興味がある】
4.新しい柄を生産するとき、《試しプリント》をしていない。我々は例えば、ジャバ・プリントでは行なっている。
【 注:― 大同は配色替えのたびに、色確認のため小布の見本をとっていた】
5.私が見たところ、プリント全体として色数が少ない。従って、型・配色替えの時間が少ない。
しかし、これらの要因をかんがみても、20反(2,000ヤード)/時は、かなり効率が良いといわざるを得ない。」
【 注:― 実際は8時間稼働ではなく、常時 2時間くらい残業をしていた。】
【ローラー捺染の職場について、さすが専門的で詳細に観察している。
生産能力を的確に計算し、その効率の良さ、その要因まで掌握している。】
1961年(昭和36年)オランダ「ブリシンゲン社」の技術者が極秘に旧大同染工を見学した報告書から
ローラープリント
6台の捺染機があり、すべて48吋 プリント巾である。一つの部屋にあった 2台を見たが、 1台はかなりの数の色があった。それは 12色刷りの機械であった。その捺染機では 4色のイミテーションワックスデザインが高速でまわっていた。機械に はスピード計がなかった。 速さを聞くと 営業部長は、『30ヤード/分』の速度という。 私が 『そんなはずがない』というと、彼はそばにいた捺染士に聞いた。 『90ヤード/分』と応えた。 これもまた本当ではないだろう。 多分、『70~80 ヤード/分』 ぐらいの速度といったところだ。
捺染される生地はロールに巻かれたものを機械に注入された。つまり生地導入の際の指示は機械の所で、通常捺染士か立っている所でなされていたわけである。
“15分ランプ”は機械についていなかった。」
【 注;― 大同で加工する生地は 1反120ヤードの生地で、3000ヤールの加工なら25反、あらかじめ数えてあるから、生地導入は捺染士の指示でできる。外国は乱ヤードの生地が多いから捺染機の所に“長さ測定機(指定長でランプがともる)“が必要である。 おそらく生地係がチェックしていると、推定される。】
「機械の前部に1人が生地の導入方向を修正する作業に従事しており、もう1人が色糊を入れる作業を担っていた。捺染士は機械の周りを旋回しており、後部には3人がついていた。( ふり落ち 1人と アンダー返し2人 計1台に6人)
これが一つのパターンで、隣の2番目の機械ではちょうど、型ロールが交換されていた。こちら(大同)は、単純な イミテーションワックスのパターンを非常に高速でつくるところだが、実際のローラープリントのところでは、とても綺麗なアメリカ向けポプリンもつくられていた。これはおそらく彫刻は《ペンタグラフ》のデザインであろうが、非常に鮮明な輪郭のはっきりしたプリントができており、とても高い品質と言わざるを得ない。
それをプリントするときはあれほど(1番目)高速ではないと思われるが、見ていないので何とも言えない。従って高速で生産される『バルク商品』と並んで、ヨーロッパ市場向けのとても良い品質のものが同じ工場でつくられていた。
プリント職場は 48時間/週 しか稼働していなかった。」
【 注:― ヨーロッパでは24時間稼働が常識 ? 大同でも殆どの職場(精練漂白、スクリーンプリント、仕上など)は24時間稼働。】
「何故そうなのかと聞くと、日本では資本と労働価格の関係から(私はそう思っていなかったのだが)こう言われた。『48時間/週 以上稼働させると多くの損害を生み出す』。重ねて何故それ以上回すと必ず損害が出るのか尋ねると、『常勤で回した方が品質がよい』」との応えで、それをもって会話は終わってしまった。」
「我々と比べると平均生産量/時間は非常に大きいに違いない。48時間/週は大体 200時間/月/機械 である。6台の機械では 1.200時間と、下方に見積もった場合ではあるが、それでも 20反(2,000ヤード)/時 となる。これは我々の生産速度の倍である。
これには当然ながらいくつかの要因がある。
1.単純な彫りだけで高速で生産されている。いいかえると重色が必要な写真版がない。
2.単純な手順であり、複数の工程を必要としない。我々がジャバ・プリントでとるような複数工程ではない。(注:防染のしごき2度捺染のような)
3.銅板印刷は全くない。銅板印刷をするとき我々はわずかであるが、時間を失っている。
【 注:― ブリシンゲン社はどんな銅板印刷をしていたか?逆に興味がある】
4.新しい柄を生産するとき、《試しプリント》をしていない。我々は例えば、ジャバ・プリントでは行なっている。
【 注:― 大同は配色替えのたびに、色確認のため小布の見本をとっていた】
5.私が見たところ、プリント全体として色数が少ない。従って、型・配色替えの時間が少ない。
しかし、これらの要因をかんがみても、20反(2,000ヤード)/時は、かなり効率が良いといわざるを得ない。」
【 注:― 実際は8時間稼働ではなく、常時 2時間くらい残業をしていた。】
【ローラー捺染の職場について、さすが専門的で詳細に観察している。
生産能力を的確に計算し、その効率の良さ、その要因まで掌握している。】