大同マルタ会

大同マルタ会の方々が自由にこのブログに集い、会員の思いや写真などを思い存分に披露できる開かれた広場にしたい。

オランダから見た大同染工 -2-

2017年11月02日 | 技術
       オランダから見た大同染工 ーⅡ-
  彫 刻
「スクリーン彫刻は自社内で行われていなかった。型の作成は京都の街の反対側で行われおり、それらはもともと関心がなかったが、ワックス・カンガのロールを彫刻する賃請負彫場は近くで行われており、そこには行くことができた。《 堀彫刻所 》
 そこには10台の“ペンタグラフマシン”が並んでいたが、その内の 6台には布がかぶさっており、4台しか稼働していなかった。しかし、それより多くの人々が手彫りに従事していた。
輪郭線の彫りは、特定の紙(硫酸紙に硫黄と絵の具を混ぜた液で描く)をロールに巻き付け、ロールの中から温めル方法で、パターンがロールに印押される。(銅と硫黄が反応して黒く写しだされる) そのモチーフを非常に高い技術《熟練度》と驚くべきスピードで手で彫っていく。
 大同の発注で行うこの彫刻場は“ペンタグラフ”と“手彫り”を特化していた。

特に注意すべきは 大同がドイツから新しい電動の彫刻機を導入するといったことで、これが3月に届くらしい。この機械の値段は 6.000万円、つまり 66万ギルダーで 喜ばしい事ではない。
 
 日本ではこれまで我々の写真版の効果を 8,10,12枚 のスクリーンをスクリーンフィルムプリントで使うことによって真似ており、それでも我々の水準にたどりついていなかった。しかし、この機械が導入されれば水準は非常に近くなるということだ。輪郭線は 30分で作れるということで、これは喜ばしいニュースではない。」
「我々(ブリシンゲン)側で問題になっている『デッサン室・トレス室』のことは、日本では問題になっていなかった。トレーサーは日本に数百人もおり、熟練度も十分であった。これをもって日本では写真版の問題は解決している。

 しばらくは、我々の優位は脅かされないと思っていたのにヨーロッパの、特に我々のような特定の西ヨーロッパの工場の優位は、日本に追いつかれるということだ。 我々は日本に対して特に彫刻に関しては技術的優位があった。呉羽の記事によれば、上記以外の点でもヨーロッパとアメリカには優位性がある。それは、デザイナーのもとで全世界において売ることのできるデザインを選び、全世界で売れる配色を創造できることである。この優位は当然ながら新しい彫機の導入をもってしても覆すことは出来ない。 加えて日本は「服地」と「カーテン生地」の組成(組立)という分野において、ヨーロッパと競争するつもりならば、その(商業)組織を適応させなければならない。しかし、日本の劣勢要因の一つであった写真版を持たないという点は取り除かれたのである。」
【 注:- 大同のドイツからの導入した〈写真彫刻技術〉をこんなにも高く評価し、脅威を感じていたとは、おそらく日本中誰も知らなかった。この後、大同の彫刻技術が業界一の評価を受け発展したことと合わせ、彼の目が如何に正しかったか 特に興味深い。】



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