居間塵(imagine)

居間塵、と書いて、イマジン。その日その時、流れゆく時の川から、思いつくままに掬いあげる。絵図とポエムの棚

果物の絵

2011-09-21 18:08:53 | 絵とポエム

果物の絵

 

 

セザンヌが描いた

林檎とおなじ林檎は 

もう ない

似たものがスーパーの売り場で

捨てられたようによこたわっている

ミキサーにかけて

ジュースにしたら

もう形のない林檎の幽霊を

ごくりと飲んでいるわけだ

 

小さなカンバスにむかって

セザンヌの真似ごとをしても

死んだ林檎しか描けない

 

静かな動作で

なだれおちながら とどまる

静止と行動が山のようにかさなっている

原動力のコントロールの妙

感嘆してながめる

 

あきらめて

スーパーの果物売り場へ

 

すると 

風のように

林檎の香りが鼻をつく

 

ああ

絵なんか描くのをやめようと

立ち尽くす

釈林檎様

 

セザンヌの

薄っぺらなプリントの絵から

それでも

林檎を積んだ

蒸気機関車の音がする 

 

 

 

 


ブランク

2011-09-21 12:55:35 | ポエム

ブランク

 

きみはおいていった

砂粒ほどの

ブランクを

ぼくのこころのかたすみに

 

それはハニーの匂いのする

破片のような飾りだ

 

それを まるで棲家の壁に

つるすように

おいていった

 

だから

ぼくは

いつも いつも

つってあるものをみると

かたっぱしから

とりはずす癖がついた

 

ぼくの部屋の壁は

いつも

ブランク

だから

フロアーは

あしの踏み場もないくらい

 

そこに埃まみれのぼくがいる

根が生えているから

ぼくの体重は軽いけれど

壁のように

そうかんたんには

ブランクにはならないよ

 

えっ いまなんといった?

 

 

      

 

 

 


暗喩の雪

2011-09-21 01:20:05 | ポエム

暗喩の雪

 

僕の頭の中に降る雪よ

いつの間にか

すっかり積もってしまって

一向に溶けるけはいはないが

一体 雪のくせに 

そんなに暗い 顔しているのは

不都合が

ワンサと溜まってしまって

溶けたくても解けない謎を抱えているのか

 

僕の頭の中に積もる雪よ

熱い雪よ

積んでも 積んでも

気のきいた除雪車は

いまだに たちあらはれない

割れないガラスのような格好をして

おまえは 誰を待つ

 

おまえの姿は 

透きとおる薄氷のように

軽いショックで飛び散ってしまいそうだが

何かを 僕にしらせたいのか

 

しかし じっと おまえを見つめていると

毎日 毎日 さして変わりない

その日 その日の

日の出や 日の入りや

月の出や 月の入りや

そのたびに起こる

霞 霧 蜃気楼 陽炎

それをどう受け取るのか

まよっているだけのようだが