中島みゆき "サーモン・ダンス"
ボタン
真っ赤な小さいボタンがおちていた
真っ白の舗道のうえに
紅白はいろいろの状況をつくる
源氏物語と平家物語?
祝賀会のマンマク?
白鳥と火の鳥?
みためには白黒とちがうけれど
なかみはおなじだ
黒白か紅白か
どちらかといえば生存の鉄則
雌雄を決するという意味がある
そんな事詰らないから
いっそうのこと
青い大空のような
だだっぴろい布でくるんでしまえば
すっかり晴れて
真っ赤な小さいボタンなど
きえてなくなる塵埃だけれど
でも
そうなると
イキモノは
存在しないことになるから
おとしたボタンは生命の証しになる
たいせつに保存しておきましょう
夢
花にとまる昆虫のように
人々のどこかにやってくる
シーツの皺のある山影や
白熱灯の熱いガラス球
しらないうちにかたちをかえる
きえることとあらわれることとをくりかえす
蜜蜂や黒蟻の行動
見た事もない蝶の舞踏
空中に飛び出して行方不明になるフェスティバルの風船
舞踏会の靴がガラスになる
美味しい食べ物が突然凍る
二重露出の街路樹の金と赤の落ち葉がふる
水鳥が潜ったままきえてしまった
男と女のキラキラひかったりする会話
途中で煙にまかれるのは願望
昔から人は煤とともに生きてきた
永遠の汚れは拭き取らない方がいい
ケモノは夢をみるだろうか
夢をみるのかみせられているのか
遠雷のように景色が吼える