手毬
あざやかな金糸や銀糸
赤と黒や黄と緑の糸
まきあげてながめるための
カタチとシキサイの毬
弾力性がないから
はねたり踊ったりしない
棚の上でちいさな座布団にすわって
ひとびとの視線の集中打にたえる
部屋の明るさで
幽かに頬をあからめたりする
少女
いつからそこにすわっているのか
だれがそこへおいたのか
記録も名前もないが
作った人は
女人だ
それが長い間
一人住まいの男の居間の片隅に
寄り添っているでもなく
さりとて
無視するでもなく
お互いが
日々顔をあわす
一瞥もない日や
睨めっこの日もあるが
ジャズではないが
琴線にくうきがふれて
かすかに糸が震える音がすることもある
糸は文字どおり一糸みだれず
球を生んだ
宇宙のしわざのように
意味があったりなかったりして
少女よ
あなたはいつまでそこにいる