クレモンティーヌ / スーダラ節
まじめな鳥のように
魔日!
枝がへしおれた
つかまっていた
足首と爪が虚空に泳ぐ
羽が開かないままで
関節の ぎぎぎぎ という
きしむ音だけが
永遠のように
きこえている
翌日になって
木々の世界や草原が
すっかり瓦礫の山だ
奇跡的に残った梢で
ただ あたりを きょろきょろ
そのうち 魔の雨もふりだしてきた
放射能 シーベルト
きいた事もない
意味 さっぱりわからない
方言のように
科学地方の言葉らしいが
辞書をもっていないから
わからないが
大変 むつかしい 言葉 らしい
テレビでは
時々 教授や評論家があつまって
眼の奥のほうで にやっと 笑いをこらえて
しゃべっている人もいるように思える
奇跡的に残った梢で
飛ぶ練習をはじめてみた
そう ばたばた と
あきちゃん
あきちゃんは
ほそいからだの子だった
おしゃべりする時は
すこし顔をうつむけて
かんがえながらしゃべった
結婚しておみせをやめるとき
はずかしそうにおわかれをいった
横浜からハガキがきた
ふたりではじまった生活のほうこくだった
それからよくねん
またハガキがきた
赤ちゃんできたと
それっきり
ハガキはこない
いまは
お婆ちゃんしてるのだろう
しゃべるとき
すこし顔をうつむけて
まだちいさいまごだろうから
ちょうどいい
ねえ あきちゃん