京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
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2019年原爆忌俳句大会でのお話

2019-09-17 08:03:31 | 俳句
2019年原爆忌 俳句大会でのお話   
                 金澤ひろあき
 数年前、『この世界の片隅に』という映画を見ました。戦争中の呉と広島を、庶民の生活から描いた映画です。戦争中の人達がどんな生活をし、何を考えて時を過ごしていたのかが、静かな声で語られています。私達と同じように笑ったり、喜んだりという生活が、気づいた時に戦争に巻き込まれている。突然、大切なものが断ち切られてしまう。そういう怖さを感じました。
 私達が読んでいる俳句は、映像ではなく、言葉で大切な何かを伝えてきます。今回の皆さんの作品の中で、私が一番目をとめたのは、次の句です。

  原爆忌時の止まった街二つ 佐久間照三

 人間にとって「時」は大切なものです。「時」は人間がしっかりと生き、次に繋がる大切な流れを作り、刻み、示すものです。
たとえば、出会いの「時」。大切な人と共有した「時」。問題を乗り越えた「時」。私達は、これらの「時」の積み重ねの中に生き、未来へと繋がって行きます。
その大切な「時」を、命とともに不条理な暴力で断たれた二つの街。具体的にいうと、広島と長崎ですが、二つの街と同じことが起こる危険が、現代も続いています。
この句は静かな声で語りかけてきます。けれど、この句を読むと、核兵器がいかに不条理な暴力であるかが、心の中に浮かび上がってきます。
 心の奥にまで届く静かな声。そういった言葉の力が、平和を推し進めていく力になることを祈念します。