W41CA。

あれは７月の末だった。
映美ちゃんにＡＵの携帯を借りて自宅内での電波状況を調べた葉子ちゃんが、ＡＵの電波が自宅内隅々まで行き渡っていることに驚愕するあまり、
「これはもう携帯のＩＴ革命や～」
と訳わからんことを口走りつつ、ＡＵに鞍替えしてしまったのは。

（tukaではずっと葉子ちゃん家、バリバリ「俺ん家圏外」だったんす）

映美ちゃんもＮ塚長姉もmiwacoも、とっくにＡＵに移ってしまっていた。
身内tuka残留者はこれでロイプリ祐子とわたしのみ。

「そろそろ潮時かな」
「しゃーないな、行くか」

そしてわたしたちもＡＵに移り、ついに身内tuka絶滅の日を迎えた。

葉子ちゃんが選んだのはW41CAのオレンジだった。
ちょっと触らせてもらったが、すっきりしたデザインで使い勝手もよさそうなので、わたしはこれの黒にした。
そしてわたしのを見て、ロイプリ祐子はこれの白にした。


カメラ２００万画素。
メインディスプレイ２．６インチ。
内蔵データ容量７０ＭＢ。
外部メモリはminiSDで、１ＧＢまでＯＫ。
赤外線通信付き。
ＴＶなしでＬＩＳＭＯ付き。

ずっとdocomoやauにいて自然に機種アップしていった人には、この感動はわかるまい。
tukaからいきなりW41シリーズに大ジャンプしたわたしら三人には、何もかもが珍しかった。
特に通信費なしで写真を送受信できる赤外線通信は感涙ものであった。

ところが。

Ｎ塚長姉が先頭切ってＡＵに移ったのは半年以上前だった。
先頭切りすぎて、Ｎ塚長姉の携帯には、赤外線通信がついていなかった。

これ見よがしに赤外線通信で写真を送りあうロイプリ祐子とわたしに、「まだ半年ちょっと。機種替えには早すぎる…。もうちょっと辛抱しよう…」と理性では我慢していたＮ塚長姉だが。

我慢すること半月、車を洗っていたＮ塚長姉は、ついそのへんにポンと置いてしまっていた携帯を、ついうっかりと完膚なきまでに踏み潰してしまい、泣く泣く機種替せざるを得なくなったのであった。

Ｎ塚長姉、無意識下の欲望に負けた女…。


珍しく人生に投げやりになっていた茂吉。