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井上雄彦 エントランス・スペース・プロジェクト*現代美術館

2010-03-22 21:43:42 | みる
なんとか間に合いました。東京都現代美術館エントランスにいる武蔵に会いたかった。

常設展示室へと続くエントランスホールの中央には、この世に生まれおちなんの力も持たない幼子の、この世界に対する「不安」から始まる一枚、悲しいまでに「力」を「強さ」を追い求めながら成長する人間の更なる一枚、また一枚と作品が続き、10枚ほどに凝縮されたひとりの男の辿る道を歩いてゆくと、やがて一番奥の壁面 高さ7.2m、幅6mに描かれた大きな大きな武蔵へと至ります。その大きさゆえあらかじめこの大きな武蔵が視界に入って来ていたとしても、つきあたりに至って対面する武蔵にはやはり瞬間息をのんでしまいます。不思議と仏像に対面したときのような感覚がわたしの中によみがえっていました。仰ぎ見る大きさの大仏を連想させる見る位置だけではなく、おそらく「強い力を持った」はずなのに、はずなのに、精神的な荒野をどうすることもできない、いっそ切られて殺されてしまえば終わりにできるのに、歩き続けなければならない虚無感の果てしなさに、具体的な手立ても答えもない。「無い」所に一筋の光明をもたらす存在としての仏像。それがこの武蔵に何故か重なったのでしょう。

他、【MOTアニュアル2010:装飾】はもしも・・・わたしが~であったならと妄想広がる楽しい展示でした。
そう、もしも・・もしも・・わたしが楽器弾きであったなら、塩保朋子さんの
驚くべき繊細で緻密な切り絵がダイナミックな世界をつくる作品で舞台を構成してコンサートをしてみたい、とか、その会場のロビーの床は、山本基さんの塩のインスタレーションで壁には小川敦生のエングレービングが施された石鹸を飾りたい・・・とかね。
もしも・・・が広がる展覧会は、思考が普段とは切り替わるから美術館に足を運んだかいがあったなぁと思えます。

また、【サイバーアーツジャパン―アルスエレクトロニカの30年】
この展示の意義を理解するのにはわたしは知識無さ過ぎですが、そんな人のためにも、体験型の展示が多く体感しながら理解ができるこの企画は楽しいですね。映画『アバター』で衝撃を受けた3Dもここではよりクリアに体験できたし、筑波大のフローティングアイはとても興味深く、屋内だけではなく、ぜひ屋外でも体験してみたいです。ヤマハTENORI-ONも触れて、どう扱ったらいいのかやみくもでしたが、この楽器面白いですよね。