初鹿 史典の熟成を楽しむ!

【第3217回】住宅ローンの潮目

住宅ローンについて

潮目を迎えております。

〜日経新聞より〜


「むやみやたらに金利競争の世界には入っていかない」。5月、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は機関投資家らを前に、住宅ローン戦略の見直しを宣言した。主戦場である変動金利のローンはメガバンクとネット銀行の引き下げ競争が続き、限られた顧客の奪い合いが激しくなっていた。木原社長の宣言は消耗戦からの事実上の撤退宣言と受け取られた。


宣言が衝撃的だったのは、みずほ銀行が変動金利の引き下げ競争をけん引する「トップランナー」のひとつとみられていたためだ。2年前、同行は変動金利を最低0.375%という低水準に引き下げ、業界を驚かせた。当時は0.4%を切るケースはほとんどなく、インターネットで金利を比較する層を一気に取り込む戦略とされた。

だが、いたちごっこの金利競争に終わりはなく、競争を仕掛けたみずほ銀行自体も疲弊しつつあった。同行が5月に公表した新しい中期経営計画では、削減すべき低採算アセットに住宅ローンを位置づけた。住宅ローンから撤退するわけではないが、今後はほかの取引への広がりが見込めるかなどをもとに選別的に取り組むという。

もっとも、これで住宅ローンを巡る主要行の「仁義なき戦い」が収束するかは不透明だ。縮小路線のみずほ銀行を横目に、三菱UFJ銀行は6月から適用金利の表示方法を変更し、変動型で最低0.345%の水準を打ち出した。みずほ銀行よりも低い金利で顧客にアピールする狙いとみられる。

住宅ローン金利には短期金利を参照する変動型と、長期金利に連動する固定型の大きく2種類があるが、競争が激しい変動型の金利はいまだに下がり続けている。日銀が2022年12月に長短金利操作を見直して長期金利は影響を受けたが、変動型が連動する短期金利が動くまでにはまだ時間がかかるとみられている。

さらに、今後日銀が金融緩和路線を転換する局面が来ても「他行見合いでしばらく変動型は上がらないだろう」(大手行)との見方が多い。各行は利ざやを切り詰めながらシェア拡大を競っており、みずほのように距離を置く銀行が出始めているものの、競争の構図はそう簡単には変わらないというわけだ。

競争の背景には、金利に極めて敏感な消費者の意識もある。一般には金利上昇が見込まれるときは金利を固定して安心感を得たい人が増えるはずだが、日銀の金融政策の修正期待がくすぶる足元でも変動型がなお優勢だ。住宅金融支援機構のアンケート調査では22年10月~23年3月に住宅ローンを組んだ人の72%は変動型を選んだ。

住宅ローンの調査を手がける三井住友トラスト・資産のミライ研究所は「とくに借入額が3000万円以上だと目先の金利負担感をより意識して変動型が増える」と分析する。不動産経済研究所によると22年の首都圏の新築マンションの平均価格は6288万円とバブル期を2年連続で上回った。家を買いたいと思えば、少しでも低い金利のローンを求めざるを得ないのが現実だ。

消耗戦が続くなか、驚きの商品も登場している。福井銀行は4月、最長50年間借りられる住宅ローンを始めた。金利タイプは変動型も10年以下の期間固定型も選ぶことができ、最低0.3%で2年間金利を固定できる。担当者は「住宅価格が上昇するもとでも若い世代に借りてもらうためだ」と話す。

従来は長くても35年程度が主流だったが、18年に最長50年プランを始めた西日本シティ銀行など、月々の返済負担を抑えられる超長期ローンが地方から登場してきた。銀行は借り手が職を失うなどの多様なリスクを50年間も背負うことになるが、様々な顧客のニーズに柔軟に応えるため商品設計を試行錯誤する。

これだけ低金利の貸し出しが増えると、住宅ローンはもはや債務不履行が少なく利幅の大きい優良資産とも言えなくなってきた。銀行にとって資産運用や保険など別の取引につながる重要な接点ではあるが、そのためにどこまで身を削るのか。

ライバルが多く競争の激しい「レッドオーシャン」での戦いには限界がある。銀行はどこに自らの強みを見いだし、成長につなげていくのか。四半世紀ぶりに動き始めた金利が問いかけている。


低金利の時代はそろそろ終わり

を迎えそうですね^ ^;

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