奇跡の17分間でした。
この日の午前中、ネットを見ていると御射鹿池にそっくりなところが奈良にあることが分かりました。
御射鹿池は東山魁夷の「緑響く」のモチーフになったところです。
緑の木々をバックに池の向こう岸に白馬が佇んでいる幽玄な雰囲気のする絵を見たことのある人も多いのではないでしょうか?
前から行きたいと思っていましたが長野県の蓼科にあるので、もう行けないと諦めていました。
「龍王ヶ渕に行きたい!」と朝、弟に声をかけましたが、その時は返事はありませんでした。
この日とは9月16日、母の経鼻経管栄養をやめると主治医に伝えた日です。
病院を出ると弟は「気分転換に行こう!」とすぐに家に帰って、ココを迎え出発しました。15時頃でした。
地図で見るとそんなに遠くないと思っていました。ところが、奈良の桜井市のすぐ東と思っていましたが、行けども行けども辿り着きません。
途中、弟は「ここまで来たら、金沢に帰りたくなったわ!」と言っていました。
後から分かったのですが、龍王ヶ渕は奈良の北東部の宇陀市にあり、曽爾高原や室生寺が近くで三重県との県境にあります。
県道を外れると細い一車線で、龍王ヶ渕に近づくと車は一台も走っていません。
龍王ヶ渕は大和富士と言われる額井岳近くの標高530mの山中にある自然の湧き水や小川の水が溜まった池と湿地帯です。
車の中で調べると龍王ヶ渕は早朝がいいとあります。その時間帯は風が吹かず水鏡になって木々が水面に映り込みやすいそうです。
また、初夏がよく、夏を過ぎると水草が多くなり水鏡が見えにくくなるそうです。
日没までに着くかどうかも気になりました。
果たしてどんな龍王ヶ渕が見られるだろうと不安になって来ました。
17時40分頃に着きました。
あたりは暗くなりかけていましたが何とか撮影出来そうです。
ベストとは言えませんが水鏡になっていました。
慌ててシャッターを切りました。
風がなく、水鏡に木々の映った様は神秘的で静寂の世界でした。
まさにギリギリのタイミングでした。
ちなみに、龍王ヶ淵は針葉樹林が多くほとんど紅葉しません。
遊歩道があるので、時間があれば回ってみたかったです。湿地帯なのでぬかるんでいるところが多いそうですが・・・
今回は夕方だったので、もう少し早い時間に行けたらとも思いますが、その時間、その天候だったからこそ見れた絶景だったかも知れません。
母のことで大きな決断をした後の弟の計らいに感謝します。
しかもこんなに遠くまで・・・
一昨年、下の弟が亡くなった時、弟は「したい事が出来るのはあと10年やで。」と言っていました。
要介護1になって、だんだんしたい事が出来にくくなって来た私を気遣ってくれているのかも知れません。
往復5時間の旅でした。
現地では17分の滞在でしたが、奇跡的に水鏡に映った幽玄で神秘的な風景を見ることが出来ました。
一生忘れられない景色となりました。
尚、2017年に龍王ヶ淵は絶景プロデューサー詩音さんの「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」新日本編に掲載されているそうす。
ココを連れて行きましたが、弟は新車だったのでココをリュックから出さないようにと言いました。(弟は犬を飼ったことがありません。)
ココは狭いリュックに入ったまま、私に抱かれていました。暴れることなく静かにしていました。
ココは前の家でよく車に乗せてもらっていたようで、車が大好きです。道路でよその車のドアが開くと乗ろうとすることがあります。
帰る途中、こんなに綺麗な夕焼けを見ました。
この夕焼けが水面に映ったらさぞかし綺麗だっただろうなと思いました。
帰りに家にココを置いてから食事に行こうと思っていましたが、遅くなり、お腹が空いたのと疲れてしまったので途中でお好み焼き屋さんに寄りました。
ココを車で待たせたていたので弟が急いで食べて、すぐに車に戻ってくれましたが、ココが静かに賢く待っていたと驚いていました。