80ばあちゃんの戯言(2)

聞いてほしくて(つづき)

戦争体験談(3)2015

2015-07-14 09:56:08 | 最近の出来事
屏風ヶ浦は、春は潮干狩り、夏は海水浴、冬には海苔が取れました。

裏の山から、寒い風が吹き始めるころになると、朝早くから、とんとん

海苔をたたく音があちこちから聞こえてきました。

海苔やさんの裏庭には海苔干し場ができ、何処もかしこも海苔の匂いが

漂って、町中が活気付いているような気がして、こども心にも、

なんとなく、浮き立つようでな気がしたものでした。



私の父はサラリーマンでしたが、半農半漁という家も多くて、綺麗なお

花やお野菜を売りにくる農家のお嫁さんやら、体より大きいようにさえ

思える大きな背負いびくを背負って、魚を売りにくるおばさんがいて、

門を入るなり、

"奥さん。今日はいい魚ががはいったよ!”

などと、体の割には大きな声で、一声出しながら、どっこいしょと、


井戸端に籠を下ろし、木箱に入れた鰈や鰯などを次に次に並べて見せるの

ですが、お魚は、木箱の中で、まだぴんぴんしていて、

母が、”今日は 鰈にしようかしら”などと言うと、お

ばさんが、“あいよ。”と言いながら、大分あちこち


磨り減っているまな板の上に魚を数だけ取り出して、さばき始める。

母に、鰈を買ったからお鍋を掛けてと言ってきてといわれて台所に

伝えにいくと、お手伝いのおばさんがすぐに、煮汁を用意し、ガスに

火をつける。   
 

魚屋さんのおばさんの ”一丁あがり!”と言う声で、私が、魚を

受け取って、台所へ飛んでいくと、さっと魚が水道水で洗われて、

沸騰した煮汁の中へ、大きなお鍋の中では鰈がすごい勢いで飛び

跳ねるので、おばさんが、慌てて蓋をするといったぐあい。

おいしそうな匂が家中に広がったものでした。


(つづく)