屏風ヶ浦は、春は潮干狩り、夏は海水浴、冬には海苔が取れました。
裏の山から、寒い風が吹き始めるころになると、朝早くから、とんとん
海苔をたたく音があちこちから聞こえてきました。
海苔やさんの裏庭には海苔干し場ができ、何処もかしこも海苔の匂いが
漂って、町中が活気付いているような気がして、こども心にも、
なんとなく、浮き立つようでな気がしたものでした。
私の父はサラリーマンでしたが、半農半漁という家も多くて、綺麗なお
花やお野菜を売りにくる農家のお嫁さんやら、体より大きいようにさえ
思える大きな背負いびくを背負って、魚を売りにくるおばさんがいて、
門を入るなり、
"奥さん。今日はいい魚ががはいったよ!”
などと、体の割には大きな声で、一声出しながら、どっこいしょと、
井戸端に籠を下ろし、木箱に入れた鰈や鰯などを次に次に並べて見せるの
ですが、お魚は、木箱の中で、まだぴんぴんしていて、
母が、”今日は 鰈にしようかしら”などと言うと、お
ばさんが、“あいよ。”と言いながら、大分あちこち
磨り減っているまな板の上に魚を数だけ取り出して、さばき始める。
母に、鰈を買ったからお鍋を掛けてと言ってきてといわれて台所に
伝えにいくと、お手伝いのおばさんがすぐに、煮汁を用意し、ガスに
火をつける。
魚屋さんのおばさんの ”一丁あがり!”と言う声で、私が、魚を
受け取って、台所へ飛んでいくと、さっと魚が水道水で洗われて、
沸騰した煮汁の中へ、大きなお鍋の中では鰈がすごい勢いで飛び
跳ねるので、おばさんが、慌てて蓋をするといったぐあい。
おいしそうな匂が家中に広がったものでした。
(つづく)
裏の山から、寒い風が吹き始めるころになると、朝早くから、とんとん
海苔をたたく音があちこちから聞こえてきました。
海苔やさんの裏庭には海苔干し場ができ、何処もかしこも海苔の匂いが
漂って、町中が活気付いているような気がして、こども心にも、
なんとなく、浮き立つようでな気がしたものでした。
私の父はサラリーマンでしたが、半農半漁という家も多くて、綺麗なお
花やお野菜を売りにくる農家のお嫁さんやら、体より大きいようにさえ
思える大きな背負いびくを背負って、魚を売りにくるおばさんがいて、
門を入るなり、
"奥さん。今日はいい魚ががはいったよ!”
などと、体の割には大きな声で、一声出しながら、どっこいしょと、
井戸端に籠を下ろし、木箱に入れた鰈や鰯などを次に次に並べて見せるの
ですが、お魚は、木箱の中で、まだぴんぴんしていて、
母が、”今日は 鰈にしようかしら”などと言うと、お
ばさんが、“あいよ。”と言いながら、大分あちこち
磨り減っているまな板の上に魚を数だけ取り出して、さばき始める。
母に、鰈を買ったからお鍋を掛けてと言ってきてといわれて台所に
伝えにいくと、お手伝いのおばさんがすぐに、煮汁を用意し、ガスに
火をつける。
魚屋さんのおばさんの ”一丁あがり!”と言う声で、私が、魚を
受け取って、台所へ飛んでいくと、さっと魚が水道水で洗われて、
沸騰した煮汁の中へ、大きなお鍋の中では鰈がすごい勢いで飛び
跳ねるので、おばさんが、慌てて蓋をするといったぐあい。
おいしそうな匂が家中に広がったものでした。
(つづく)