この難しい問題に苦慮した判事としてのレーリンク博士は、平和に対する罪を一種の政治的犯罪と見ることによって、事後法としてではあるが、それを肯定しようとされた。純然たる不道徳性、人間として決してしてはならない全く嫌悪すべき本質的な非論理性、そういう内容を持つという意味での犯罪ではなくて、社会的な危険性を伴った国内法でいえば政治犯罪人に相当するものとして、いわゆるA級戦犯を処罰するということは、司法的な意味での刑罰とは異なって、基本的に政治的措置であり、そのようなものとして容認することは可能であろうというのが、レーリンク判事が執った態度であった。そもそも東京裁判自体が、連合国による政治的措置であったのだ。レーリンク判事によれば、戦勝連合国は戦後の国際社会の平和維持について責任を持ち、秩序維持について責任を負う立場に在るのであり、維持すべき秩序にとって、ヒトラーのナチス・ドイツとか、日本の戦時指導者はとにかく危険な存在といわざるを得ず、この危険な存在・人物に対して適切な処置をとる権利は、世界の動向について現実に責任を有する諸国にはあるだろうとの考えであった。そこでレーリンク判事は、法の尊重と、いま差し迫った政治的な必要、つまり連合国側の政治的要求とを、何とかして妥協させるために、平和に対する罪を、将来同じようなことが行われた場合には必ず関係責任者を処罰するという条件をつけて認めたというわけであった。あくまでも特殊な社会的危険性ないし政治的危険性をもつ存在という意味において被告等を処罰するのであり、真正の非論理的犯罪の遂行という意味では平和に対する罪なるものを自身としては納得することができない、それ故に平和に対する罪のみで有罪とされた被告は、決して死刑にしてはならないというのが博士の信念であった。東京裁判以後は核大国を含むすべての国々が戦争をやめるという方向に進んでもらわなければ、この裁判やその前のニュルンベルグ裁判の意味がなくなるとの前提のもとで、レーリンク判事は平和に対する罪を辛うじて容認し、重光、広田、東郷、木戸、畑の五人の’A級戦犯”については無罪を主張されたのである。
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