日本のイノベーション(革新)で大きな役割を担うのは企業だ。世界に通用する技術やサービスを生み出し、次世代の事業へと再投資していく循環が成長のエンジンとして欠かせないからだ。だが現状は研究開発(R&D)に振り向ける多額の投資を十分に収益に結び付けられていない。データを分析すると、いまの日本企業に足りないものが浮かび上がってくる
上位では5.0倍でトップのブリヂストンを筆頭に、2倍以上の企業が2割あった。だが全体の平均は1.5倍にとどまり、利益が投資を下回っている1倍未満の企業も3割を超えた
倍率は5年間の研究開発投資が次の5年間の営業利益にどう結びついているかを集計した。リストラや収益構造の変化など複数の要因があり一概に言えない面はある。だがデロイトトーマツコンサルティングの調査でも、雇用者報酬などを含めた生産付加価値を研究開発費で割った「効率性」は、米国の39倍に対し日本は32倍。やはり「稼ぐ力」は見劣りする
倍率が高い企業の取り組みをみると、大きく2つの特徴がある。第1は、自らの強みとなる分野を見極め、そこに集中的に投資する戦略。第2に、社内に足りない技術があれば貪欲に外から取り入れていく姿勢
ブリヂストンは世界シェアトップのタイヤに集中する。過去には養殖用器具などを手がけた時期もあったが、今は「コア事業に生かせなければすぐに研究を終了する」(松田明常務執行役員)。気圧や温度を計測し続ける鉱山のトラクター向けなど付加価値の高い商品が収益に貢献する
日本経済新聞